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5話 これって誘拐じゃないの!?


「なっ、なんだよここ!!」

「ここがお前らが世話になる場所や」

「なんだよそれ!?」


慌てている少年に普通に答える神。

少年のツッコミは当然のものだろう。俺は頭を抱えた。

本人が許可してないんだからこれは誘拐と同じじゃないか。

なので思いのたけを込めて突っ込む。


「これじゃ誘拐じゃねーか!!」

「何言ってんのや。こいつらは間違いなく浮浪者や。浮浪者に人権なんてないし問題あらへん」

「そういう問題じゃねえ!!」


神の言葉に脱力する。

こいつに常識とか求めても意味ないな、神だし。

てか、この世界では浮浪者に人権がないのか。とんでもない話しだな。


「ほれ、早くこいつらの家を作ってやれ。わいは蜜柑の様子を見てくるさかい」


そう言って神はさっさとログハウスへと去って行った。

一人でどうしろっちゅうねん!!


「お兄さんがお家を作ってくれるの?」

「あぁ、でもその前に病院作っていいかな?」

「病院?」


あいつ(神)の連れてきた人には怪我してる人が何人かいるんだよな。

全員が栄養失調だし衰弱してる人もいる。

普通さ、そんな人放置してくか?

俺は心の中で神への悪態をつきつつ時計を弄る。

申し訳ないけど混乱している10人くらいの人々は放置で。

すまん、これ絶対緊急だから。今すぐにでも死にそうな人が2人いるし....うぅ、プレッシャー。


白い外壁に緑十字マークをつけて、中に医療器具を....って、さすが異世界、こんなのあるの!?

漫画とかでよくある中に入るだけで治療してくれる[回復カプセル]とかまじ便利!

カードみたいな持った人の状態や病気などが表示される[データカード]、ただこれ持っただけで体の異常だけじゃなく身長体重などの個人データも出るからセクハラになって使えないかも。

一粒飲むだけで簡単な病気や怪我なら治せる[回復飴]。

一瞬で洗浄してくれる[浄化扇]とかも必要だろう。みんな汚いし。

いつの間にかワクワクしながら完成を押した。

すると前回のようにゴゴゴゴと大きな音と共に揺れ、周りが騒がしくなった。

そうしてあっという間に病院が出来上がった。


「な、なんだよこれ....」

「俺は夢でも見てるのか」


呆然と呟く人々に苦笑いしつつ、俺は倒れている人の元へ行く。

両足のないこの人は生きているのが不思議なくらいに思える。

神は問題ないとか言ってたが絶対危険だろう。今すぐに回復カプセルに入れないと!

この人はガタイがいい成人した一人の男性だ。足がない分軽いだろうが俺一人じゃ運べないな....

誰かに手を貸してもらおうと声を出しかけたとき


「お兄ちゃん!! 二人だけで行くなんてどうゆ....」


ログハウスから蜜柑が飛び出して来たが、俺の隣の男性に気付いたらしく急いで駆けて来る。


「なんだあれ!」

「化物か!!?」


そんな蜜柑から怯えたように人々は遠ざかる。

多分車椅子が怖いのだろう。

蜜柑はそれに構わず男性に近寄り様子を見て、それから病院を確認し俺の方へ親指を立てて言った。


「さすがお兄ちゃん! これで運んであげて!」


そう言って車椅子から下りようとするので慌てて手伝おうとしたが、神が現れて妹をそっと車椅子から下ろした。

妹より少し背が高い程度の少年なのに危なげなく妹を抱えている姿は違和感があり何とも不思議な光景だ。

俺はありがたく蜜柑の車椅子に男性を乗せた。途中で近くにいた男性達が手伝ってくれたのだがなんだか怯えていた。


急いで病院に入り回復カプセルに男性を入れる。

自動ドアが開いたときに驚いて声を上げる人がいた。

そりゃ自動ドアなんてみたことないか、いやでも回復カプセルみたいなすごいのがあるんだし自動ドアもあるんじゃないか?

回復カプセルの作動ボタンを押すと自動で最適な処置をしてくれる。

この人はこれで大丈夫だろう。

急いで戻ってもう1人の全身が爛れていた人も連れてきて回復カプセルに入れた。

この人は火傷かな? 火事にでもあったのか全身の殆どが爛れて服は皮膚にくっついてしまっていた。


後は残った全員を浄化扇で綺麗にして怪我の治療を蜜柑と二人でした。

怪我を全くしてない人っていなくてみんなどこかしら怪我してるんだよな。

あのガキも痣が全身にあって、殴られたんだなって分かる。

ルルちゃんにも痣があったけどあのガキの方が酷いから、普段からルルちゃんを守ってたんだろうなーと思うとちょっと見直した。


「あ、後で膨大な治療代を請求されるだか....?」

「そんなの困る!! 金なんか持ってねーよ!!」


1人の言葉に次々と不安の声が上がる。

その様子に苦笑いしながら俺は答える。


「そんなの要求しないから安心してよ。みんなを助けるのが俺達の仕事みたいなものだから」

「そんな美味い話しがあるわけないだろ!! 誰が信じるか!!」


俺の言葉にガキが反論する。そりゃ疑うよな普通....

どう説明すれば信じてもらえるのか俺が悩んでいると、後ろから神が言った。


「わいが何か分かるやろ?」


その瞬間、神から圧倒的な威圧感が解き放たれた。

誰もが言葉を失い呆然と神を見る。

中にはガタガタと震えている者もいるが、俺もその1人だ。

神からは息をすることすら難しいほどの恐怖を感じて、誰も一言も発しない。


「分かったなら大人しゅーこいつの言うことでも聞いとれ」


その言葉の後に神の威圧感は消え去ったが、皆額に汗を滲ませ蒼白な顔をしていた。


「神様!! みんなを怖がらせるなんて酷い!!」


そんな中で、場違いな蜜柑の怒りの声が響き渡った。

静まり返った場所ではその声がよく響く。


「みっ、蜜柑! ちっ違うんや、わいは皆のことを思うてやな....」

「言いたいことは分かるけど、酷い!! もうちょっと優しく言えば良かったんだよ!!」


あの威圧感を受けた後で、平然と返すことが出来る蜜柑に感心した。

俺には絶対無理だ。


その後暫く蜜柑のお説教が続き、神は項垂れていた。



この作品は私が人助けものが好きなのと、後はあまり身体障害者の話しがないので自分で書いてみようと思い作ったものです。

人によっては不愉快な思いをしてしまうかもしれないような話しですが、これからも気を付けて書いていくつもりです。


※これからは週一投稿の予定です。毎週木曜前後に投稿すると思います。

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