46話 我儘エルフのお家
「え~~とクエントさん、ここの家を自由に使って下さいね」
俺は町の隅に建てた家にクエントさんを案内していた。
アパートや家も人間や獣人がいるから嫌だってだだこねたから彼の為に隅っこに家を建てたのだ。
いや、家って言うよりも教会だろう。屋根が三角形してるし中は白と金とで派手だし窓は全部ステンドグラスだしね。
クエントさんは家があっという間にできることに驚いていたようだけど、ほんの少し眉が持ち上がる程度だった。
左右でダイニングキッチン、寝室や風呂&洗面所に分かれている。
礼拝堂的なものがないのにはちょっと驚いた。
クエントさんはムスッとしたまま何も言わず次々に部屋を確認していく。
そして「○○がない!」とか「ここは○色の方がいい」とか注文してくるのでその度に修正していく。
...ほんとに面倒くさい人だなと、少しイライラしてしまう。
でもクエントさんだって神に無理やり連れて来られたわけだから不機嫌になるのも仕方ないと思う。
ただ、なんで俺に丸投げなのか納得いかないが。無理やり連れて来た神が面倒みるべきだよな、絶対!
「柚希さんに作ってもらってるのに図々しい奴!」
「なんてワガママなの! だからエルフって嫌いなの!」
「あそこまで遠慮しないで言えるのってある意味すげーな」
家の外から窓を覗き込んで話す悪口が聞こえてくる。
珍しいエルフが新入りとして来たから気になったみたいで、遠くからコソコソと付いて来ている者がいるんだよな。
チュチュやチュッチュは分かるけどリリスやラヴィにルルちゃんとライゼまで...
でも丸聞こえだから自重して! そんな窓勝手に開けて喋ってたら聞こえるって!
...あれで隠れてるつもりなんだから困ったもんだ。
ギロリとクエントさんが睨み付けるとみんな黙った。これで何回目だろう、はぁ...
そっとみんなに近付き注意しとこう。
「みんな人ん家覗いちゃだめだよ、もう帰ろうね」
「だめです! あんな人と二人っきりにしたら柚希さんが何されるか...」
「何もされないって」
「あの人絵本で読んだ悪い貴族にそっくり!」
「それは絵本の話しで、クエントさんは関係ないよ」
「エルフなんて珍しいんだからも少し見てくぜ!」
「ライゼ、それは失礼だろ」
ラヴィはクエントさんをどんな人だと思ってるのかな? ルルちゃんは絵本で読んだの鵜呑みにしてるしライゼはただの野次馬だし。
何だかんだ言ってみんな帰らないんだよね。何度も説得してはいるんだけど。...心配してくれるのは嬉しいんだけどね。
あぁほら、クエントさんが更にイライラしてきたみたいで凄い睨んでるし、取り合えずカーテン閉めておこう。
みんなブーブー文句言ってるけど君達が悪いよ。
「すみませんクエントさん」
「本当に人間も獣人も下等だブヒー! 他人の家を覗くなど低俗な証拠だブヒー! なぜ私がこんな所にいなければならないんだっブヒー!! 私達はいつまで神の身勝手に振り回される!」
歯を食いしばり怒りを露にするクエントさんの「ブヒー」がすごい勢いになってる...
でも確かにみんなの行動はアウトだな。家の中覗くのは絶対ダメです。
...でもちょっと驚いた。
この世界だと神を崇めてる人ばかりだったからクエントさんみたいに露骨に怒りを向ける人って初めて見た。
きっと他にいないんじゃないかな? どうだろ...
俺もクエントさんから嫌われてる人間の一人だし、元気づける言葉も見付からないな。
きっと何を言ってもクエントさんを怒らせるだけだろうし...
取り合えず怒りを抑える為に甘いものでも渡しとこうと、時計を操作してドーナッツを出して差し出した。
そんな俺の手をクエントさんは暫く眺め睨み付けてきた。
「私がデブだから甘いものが好きだとでも思ったのか?」
「いや、そういうつもりじゃ... いらないんならいいんです」
糖分が足りないとイライラするってなんかで聞いたから渡そうとしただけなんだけど。
仕方なく俺がドーナッツを食べようとしたら横からバッと奪われた。
「ふん、せっかく用意したんだ。食べてやろう」
そう言ってクエントさんは「フゴフゴ、ブヒブヒー」言いながらドーナッツを食べ始めた。
いちいち上から目線なのが腹立つがとても美味しそうに食べてるし、この人も神の被害者だから少しくらい我慢してあげよう。
そう思ったけど「もっとよこせ」と言われてイラっとした。
1度くらい殴ってもいいかな?
ストックが後2話くらいしかない...




