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41話 二人の事情



俺は今、ウォルバンさんの部屋にいた。

彼がリアーナさんから暫くの謹慎を言い渡され既に3日、どうしてるか心配になり訪ねて来たのだ。

ウォルバンさんはリアーナさんと一緒に大きめの一軒家に住んでいるが、その部屋は想像以上に狭い。

いや、俺が二人の意見を聞いて間取りから家を作ったんだけど、そのときもウォルバンさんの部屋小っちゃ! って思ったけど実際に見たのは今日が初めてだ。

簡易ベッドと箪笥だけで部屋はいっぱいで、この家ができたときから1つも家具は増えてないみたいだし。

なんて殺風景な部屋...

ウォルバンさんはそのベッドに座りガックリと俯いている。

謹慎がそこまでショックなのか... うん、ウォルバンさん真面目そうだしな。


「ほらウォルバンさんオセロやろうよ、それともトランプでもやる?」


明るく話し掛けてみるも返ってくるのは沈黙だけ。...おおぅ、挫けそう。

何とか会話を広げようと思考を巡らす。


「あんまりご飯も食べてないんだって? 食堂へ行くのは許可してるのに行かないってリアーナさんが心配してたよ?」

「姫様が...」


うん、リアーナさんの名前には反応するんだ。

俺は持って来たサンドイッチを取り出しウォルバンさんに差し出したが彼は受け取ろうとしない。


「この3日間ご飯食べてないんじゃないかって、心配したリアーナさんからの差し入れです」

「...そうか。すまない」


そう言ってウォルバンさんはサンドイッチを受け取った。それと紅茶を入れた水筒も。

ウォルバンさんは喉が渇いていたようでガブガブと勢いよく紅茶を飲むと黙々とサンドイッチを食べた。

そうしてある程度食べて落ち着いてきたのかポツポツと語りだした。


「俺は、本当なら姫様の側にはいられない存在だ。姫様を守りきれなかったのだから」


彼の言葉を聞き二人に出会ったときのことを思い出した。

ウォルバンさんは両足がなくなり体中が血塗れだったし、リアーナさんは全身が焼け爛れて二人共それは酷い状態だった。


「姫様はネヴァル国の王、ダザニア・ソルダーク・オブ・ネヴァルの12番目の姫だった」


おい、ネヴァル国の王は何人子供がいるんだよ!?

いやいや、王様なら奥さんが何人もいて不思議じゃないし子供が沢山いるのも当然か。ツッコミより話しに集中しよう、こんな大事な話しをしてくれてるんだから。


「王子達は王位争いで殺し合い9人いた王子のうち生きているのは第4、第7、第8王子だけ。王妃達もその座を争い34人いた妻も11人にまで減っていた。

その争いに巻き込まれ多くの家臣や侍女、それに姫君も亡くなっている。...姫様の母君もそのうちの一人だ」

「えぇ!? 自分の子供や妻が争ってるのに王は止めたりしなかったのか!?」

「自分の身も守れぬ者はいらないと王はお考えだった」


おいぃ!! ツッコミどころ満載だな王!!

自分の子供や妻が死んでも平気だなんて人としてどうなのよ! いやいや、でもそれがネヴァル国では普通の考えなのか?

「この中で生き残った者に王位を譲る」とか言ってる物語とかあるしそういう国...なのか? それなら俺がどうこう言う権利もないけどさ。

まぁどっちにしてもヤバイ国だわ、二人が生き残れて良かった。...酷い怪我はしたけどさ。


「生き残った第3王子は毒のせいで寝たきりになりいつ死んでもおかしくなく、第7、8王子はまだ9歳と7歳と幼いので姫の誰かが婿を取りその男が王位を継ぐのではないかと囁かれはじめた。

そのせいで姫君の間でも争いが起こるようになり次々に亡くなっていった。気付けば王子は後に産まれた者も全員亡くなり第7王子がたった一人生き残り王太子になり、姫様は第2王位継承者になっていた」


ま、マジか... 少なくとも王子達8人と王女11人が死んだってわけか。

...その国大丈夫か? 国としてもうだめだろ絶対。


「お陰で毒を盛られることも暗殺者の数も激増し毒味係りも護衛騎士も次々亡くなった。

そしてあの日教会で成人の儀を済ませたその帰り道で今までより多くの、それも上位の暗殺者が襲ってきて私を含め護衛騎士は全滅、姫様は私を庇ってあのような姿に...」


そう言ってウォルバンさんは悔しそうに唇を噛んだ。

なるほど、そんな事情があったわけだ。

帰れないって言ってたのも帰ってもまた命を狙われるって分かってるからか、うーん、本心ではやっぱり帰りたいのかな? どうなんだろ。


「本当は帰りたいって思ってるよね。だって自分達の故郷ってさ、そう簡単に捨てられるもんじゃないと思うんだよ。親だって友達だって大切な人はいるだろうし、帰れるなら帰りたいよな」


...って地球捨てて異世界に来た俺が言えることじゃないけど。

漫画やアニメにゲーム、食事や習慣とか生まれ育った家や友人にそんな親しかったわけじゃない近所の人や親戚、じっちゃんばっちゃんのいた家に両親含めたみんなの墓。

町並みもそうだしここでは俺達しかいない日本人の姿も全部が懐かしい。全部大事な思い出だわ。

...でもさ、俺にとって一番大切なものって蜜柑なんだよ。家族を失った俺に大切なのは家族が一緒にいられること。

蜜柑がこの世界に行きたいって言ったから二人で一緒にここに来た。それに後悔なんてない。

みんなには申し訳ないけど、俺にとって一番大事なことはたった一人の家族と一緒に生きていくことだから。


「今は無理だけど、もう何年かしたら戻ってみるのも有りだと思うよ」

「そうか...そうだな」


ウォルバンさんはそう呟くと寂しそうに笑った。



サンドイッチは柚希からの差し入れです。

ウォルバンさんが過去の話しをしてくれましたが、今読み返した自分が突っ込み入れる所と柚希の突っ込み所が違うのでちょっと驚きです。


リアーナとウォルバンは怪我してからどれだけ経ったんでしょうね、時間が経つと回復効果薄れるって確か言ってたきが...その間瀕死の状態でずっと耐えてたの? 謎です。

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