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39話 イルのお仕事



「ん、花の匂いがする。レレとランが植えてあるんだね」

「うん。匂いだけでなんの花か分かるんだからイルってすげーな」

「そ、そうかな?」


今俺はイルを連れてアパート前の花壇を歩いている。

町の至るところに花が植えてあるのだが、それは主に女性達の意見だ。

獣人の何人かは花の匂いで侵入者の臭いが分からなくなると危惧していたので、植えているのは匂いの少ない花が中心だが十分綺麗だ。

花の名前とかよく分からないけど、レレは小さな花が沢山咲いているしランは大きな花がドンと咲いていて自己主張がすごい。

その漂っている匂いだけで何の花が植えてあるのか分かるイルの鼻も、花の名前を知ってることもすごいと思う。

それに料理も何が入ってるか匂いで分かるし。「あ、これにはチョコも入れてるんだ」とか「味噌入れてるの? へー合うんだね」ってとか。隠し味にちょびっと入ってるだけでも気付くし。すげーよ。

照れているようだが全獣人の為に表情の変化は分かりづらいが、垂れた耳と大きく振られた尻尾で十分気持ちは察することができる。


イルには日本で同じみの白いステッキを渡しているのだが使い方が独特だ。

普通はステッキを左右に振って障害物があるかを確認する為のものだが、イルはそれで地面を叩きその音の反響でどこに何があるか分かるらしくどこかにぶつかることなく普通に歩いている。

たまに葉っぱに当たるくらいだからほとんど俺と変わらない。

そんなイルの歩きに感心しながら一緒に歩いていたのだが、


「やぁ二人共おはよう」

「っ!?」

「おはようネア」


音もなく現れたネアに驚いている俺の前で、二人は普通に挨拶を交わしている。

いつもいつもいきなり現れるネアやホリーさんは心臓に悪い。

ネアは身のこなしが軽いことと猫の獣人だからかよく上から降ってくるし、ホリーさんも空から降ってくるからちょっと気をつけようがない。

...いつか俺の心臓止まるんじゃないか。


「ネアは訓練かい?」

「うん、ウォルバンさんとリアーナさんが色々教えてくれるんだけど、あの人達めっちゃ強いんだもん。ビックリだよね」


目をキラキラ、尻尾をゆらゆらさせて楽しそうに語るネア。やっぱりウォルバンさんって獣人が驚くほど強いんだね。


「いいなー、羨ましい」

「イルは奴隷時代に警護担当をしていたほど強かったんだもん。戦いたかったよね」


イルが寂しそうに呟いた言葉に胸が絞めつけられる。

目と両腕を失ったイルには戦闘訓練なんて無理だろう。人間に、普通の生活すらおくれないようにされてしまったんだから。

そう思うと悔しくて、グッと歯を食い縛り俯いた。


「これからネアは何するの?」

「外に出て魔物退治と木の実採りかな? 美味しいのが採れたらお裾分けするね!」

「うん! 楽しみにしてる!」

「気を付けてねー」


そうしてブンブン手を振りながらネアと別れ、俺達は病院に向かった。




病院に入るとカーさんが出迎えてくれた。


「カッカッカ、よう来なすった。ささ、お茶でもどうぞ」

「あっ、これはどうも」

「ありがとじいちゃん」


カーさんが出してくれたお茶を俺とイルは有り難く受け取った。

うん、めっちゃ渋いお茶。チラリとイルを見ると耳と尻尾が垂れ下がっている。

うん、...苦いもんね。


「それじゃ、暫くイルをお願いしますね」

「お願いします!」


暇だと言うカーさんに病院を任せているのだが、そこでイルにカーさんのお手伝いをしてもらおうと思っている。

病院ならそれほど広い範囲でもないし物の配置も覚えやすいと思う。怪我の治療は回復飴でできるし、大きな怪我は回復カプセルでできるから医療技術とかいらないからね。

薬品とかも少しは一応置いてるけど使わないから臭いとかの心配もないし、鼻への負担なくできるだろう。


「うむ、任して下され。と言っても怪我をする人はおらんし、ここに来るのは暇になった者が遊びに来るくらいですがの。カッカッカ!」


そうなんだよな。カーさんが言うように病院としてちゃんと使ってもらえないんだよ、みんな怪我や病気をしても我慢しちゃうから。

スッダさんが足引き摺って歩いてて、どうしたのか聞いても「ちょっと挫いただけだから」って言って病院に来ないし、回復飴もいらないって言うから放っておいて...

3日経ってもまだ治ってなかったからデータカード(持った者の状態が表示される)持ってもらったら骨折って書いてあってビックリしたよ。

すぐ回復飴食べさせたよ!


カーさんはうちのじっちゃんと同じく早朝や夕方にお散歩してるけど、それ以外は大体ここにいる。

結構なお年を召されているみたいだから、心配して暇になった時間に獣人のみんながよく尋ねて来てるみたいだ。

...なんか最近ではチュチュやチュッチュの遊び場になってきてるけど。


「みんななかなか病院を使ってくれないんだよね、俺としては我慢しないでちゃんと治療してほしいんだけどね」

「あんまり酷い状態なら臭いで感知できるから俺からも治療するように言ってみるよ」

「!? 臭いで分かるの!?」


イルによると鼻のいい獣人は個人個人の体臭の違いが分かるから、その違いで健康状態も多少分かるらしい。

時間や食べたもので人の体臭って変わるらしいよ。ビックリだね。



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