38話 ルルちゃんの手作りお菓子
アパートに入り食堂に行くと、ルルちゃんとネアとホリーとカーさんが食事をしていた。
まだ3時なんだけど3時のおやつかな? ホットケーキ食べてるみたい。
「おやつですか? 美味しそう」
「いやぁ、ルルちゃんに試食を頼まれましての」
「あぁ、前に蜜柑と作ってた...」
前に蜜柑が「この世界にはお菓子が少ないしおやつタイムもない!」と嘆いてみんなに3時のおやつを振る舞っていた。
みんな喜んでいたけど、特にまだ子供のルルちゃんは大喜びで蜜柑やマチルダさん、ルミナスさんと一緒に色んなお菓子を作ったりしていた。
ライゼも喜んでたけどひねくれてるから素直に美味しいって言わなかったな。すごいスピードで食べてたけど。
「今日はね、ルル一人で作ってみたの! みんなにししょくをおねがいしたんだよ!」
「一人で作ったの? へ~すごいなルルちゃんは」
頭をなでなでして褒めるとルルちゃんは「えへへ」と嬉しそうに笑っている。
ホットケーキはお菓子の中でも俺でも作れるくらい簡単な方だと思うけど火を使うからな、怪我とかないかな?
二人が見ててくれたんだろうから心配ないとは思うけど。
チラリとマチルダさんとルミナスさんに視線を向ければ二人はニコニコとルルちゃんのことを見ている。
...やっぱ良い人達だよな、ルミナスさんが獣人を避けてるなんてビックリだよ。
「柚希さんも食べますか? って言っても俺の食べかけになっちゃうから...嫌ならいいんですけど...」
「ん? 貰っていいの? サンキュー」
困ったように微笑むネアの気遣いにありがたく頂くことにする。
フォークを借りて食べれば結構焦げがすごいことになってるけど、それもまたルルちゃんが一人で頑張って作ったからだと思うと微笑ましい。
「本当に柚希は変わってるわね。ある程度仲良くしてる人間でも、普通獣人の食べかけなんて食べないわよ」
「そうですかね? でも俺だって他人の食べ掛けだったら食べれないよ。ここのみんなは家族みたいなもんだから平気なだけで」
ホリーさんに呆れ半分感心半分って感じで言われるが、俺だって人の食べた物に全く抵抗ないわけじゃないぞ?
いや、田舎のじっちゃんばっちゃんのお陰で結構平気な方だと思うけど。
なんつーか、身内と認めた相手ならそんなに抵抗ないし、ネアが気遣いで勧めてくれたって分かってるのが大きいかな。
ふと気付くと感動したって感じのキラキラした目でみんな俺を見ている。
ルルちゃんなんて両手を上げて「わー! みんな家族なのー!!」って喜んでるし。
やだな、なんか照れくさいんですけど...
そんな風に思っているといつの間にかすぐ側にホリーさんがいて、俺の肩に手を乗せ耳にそっと口を寄せてきた。
ちょっ、近い! 香水の匂いとか...ちょっとドキドキします!!
「柚希って結構良い男ね」
「っ! うぎゃー!!」
掠れるような囁き声にゾクゾクっときて、離れる瞬間には耳にフッと息を吹き掛けていったので思わず飛び退いた。
怒って睨み付けるのだが「クスクス」と笑ってやがるし...
ちょっと酷くないですか! ルミナスさん以上のからかい!! ホリーさんってたちが悪すぎる。
「何してるの! お兄ちゃんにベタベタしないで!!」
「あら、モテモテね柚希」
「...そうですね」
俺の手を握って自分の方に引っ張りホリーさんに威嚇するルルちゃんに苦笑いしつつ頭を撫でる。
ホリーさんの辛辣なからかいに多大なダメージを負いつつルルちゃんに癒されていると...
「あらあら、そんなからかいは坊やにはまだ早いんじゃないかしら?」
「そう? 真っ赤になって可愛いと思うけど?」
ルミナスさんの苦言を平然と流すホリーさん。俺が睨み付けても涼しい顔してるくらいだし。
その様子にちょっと不機嫌そうなルミナスさん。
険悪な雰囲気にハラハラします。
「カッカッカ、若いっていいのう」
呑気に笑ってるカーさんに脱力します。
そうしてふらふらになりながら部屋に帰ると...っていうかここイルの部屋で今一緒に暮らしてます。
出迎えてくれたまんま犬な見た目のイルの姿に癒された。
思わず抱き締めると「ぎゃあっ! ちょ、柚希さん!?」と慌てるイルに更に癒される。
「今日はちょっと疲れちゃって...少しこのままでいさせて」と言えば小さな声で「...はい」と返事をされたので暫くモフモフに癒された。
この日俺は幾つかのフラグを立てていることに全く気付かなかった。
イルってすごいよね。トイレも風呂も一人で入れるし目が見えないのに普通に椅子に座るし家具使うし置いた物の配置覚えててまた使ってるし...実は目、見えてんじゃないの?? ってよく思う。
などと思いながらのんびりお風呂に入り寛いでいた。
漸く恋愛フラグが少し立ったかな?と思うけど、まだまだ進展は遅そうです。




