番外編 住民1
オラはスッダ、しがない農夫だ。
戦争のせいでオラの大事な家と畑がダメにされちまって、てんてこまいで途方にくれているときに彼等に会っただ。
二人連れでオラみたいな者を次々集めててビクビクしてたんだけんど、一瞬で見知らぬ場所に移動したのはたまげただ。
神様は最初唯の子供に見えて、神様だって知ったときは腰を抜かしちまっただ。
その神様と一緒にいた柚希さんはひょろっとした弱そうな少年に見えただが、結構良い人で色々お世話になってるだ。
そんでまぁ見知らぬ場所にいてなにがなんだか分からなかったけんど、一軒だけあった家の中から妙な下半身の女子が出てきて度肝を抜いただ。
それが蜜柑さ...蜜柑様っちゅうて柚希さんの妹さんで、それも神様の大切な方だと知ってえれー驚いた。
そんなことさ知らなかった最初の頃、うっかり化け者だって言っちまう者がいて...オラもその一人だけんど。
したらば物凄い形相で神様に睨まれて...ちびっとだけ漏らしちまっただ。
だから今でも蜜柑様に近付くのが正直怖いだ。
もう神様はオラのことなんて覚えてないみたいだけんど、あのときのことが思い出されて近付くだけで恐ろしい。
そんでまぁ、それから柚希さんは魔法みたいに次々建物を作り出して、みんなえれぇ驚いただ。
...漏らしてなんか...いないべ。
それからのエルスイズの生活は最高だべ。
柚希さんはいくらでもオラが欲しいと言った種や苗を出してくれて、道具も揃えてくれて...オラが夢見てた理想の畑が出来上がってる。
ほんとに良いとこだべ。
唯一悪いとこといったらあれだ、娼館がないのが玉に瑕だべな。
オラだって男だし性欲が溜まることがあるべ。そんなときここだと困るんだ。
だからコソっとルミナスさんにお願いしてみたんだけんど断られた。
...今思い出しても恐ろしい笑顔だったべ。
そんな順風満帆なオラの生活だけんど、なんとこの町に獣人がやってきてぶったまげただ。
神様と柚希さんが連れてきたんだけんど、...正直勘弁してほしいだ。
獣人といったら野蛮で危険な奴らだべ、一緒に暮らすなんて無理に決まってる。
みんななぶり殺しにされるだけだ。オラは毎日家を厳重に戸締まりして怯えながら過ごしただ。
...それな風にビクビクしてたんだけんど、あのネズミの獣人は馴れ馴れしく話し掛けてくるんだ。
「あっ、こんにちはー」「こんにちはー」って、いつも二人一緒でオラ達を見掛けると平然と声を掛けてくるし、「畑仕事?」「わー僕畑大好きー」って勝手に畑仕事の手伝いしだすし恐ろしい奴らだ。
オラが油断するのをきっと待ってるだ、そうに決まってる。
それにあのトナカイの獣人は、オラ達が緊張して話し掛けられない綺麗な女性達に馴れ馴れしく声を掛けたりして...
好色な獣人め! 女性達をどうする気だ! あんなことさ、こんなことさするきだろ、羨ましい!!
...ほんとにこのネズミっ子達には困ったもんだべ! 畑の収穫した野菜を勝手に食べて!!
思わず怒ちまって...殺しにきたらどうしようと怯えてたんだけんど、次の日には二人揃って謝りにきて驚いた。
それからも勝手に手伝いに来るのはかわらねーけど収穫した野菜を食べることはなくなった。
けんど、ほんとに物欲しそうに見てるから分けてやったらピョンピョン跳び跳ねて喜んでただ。
...可愛いとか一瞬思って危うく騙されるとこだったべ!
次の日、自分達で作った木彫りの人形を持ってきてオラにくれたべ。
「こっちが僕でねー」「こっちが僕!」って嬉しそうに言ってくるけんど、どっちも同じにしか見えねーべ!!
あの困ったネズミっ子もそうだけんど他の獣人もそうだ。オラの畑を勝手に手伝いに来たりして困ってるだ。
あのいけすかねえトナカイも馴れ馴れしく声掛けてくるし、リスやうさぎのお嬢さんも手伝ってくれる。
カラスのじい様は「すまんのう、もう年で畑仕事は手伝えんわい」って謝ってくるし...
あのおっかねぇ鷹のお嬢さんも人間嫌いそうなのに時々様子見にきてくれる。いや、最初は監視されてんのかと思ったんだけんど...
あの鷹のお嬢さんは町中に異常がないか空飛んで見回ってるらしいべ。ウォルバンさんが言ってただ。
そういやあのネズミっ子達、あの怖そうなウォルバンさんにも平然と声掛けてるな。
すごいべ。
方言が色々混ざってると思いますがよく分からないのでご勘弁を。
田舎者っぽくしたかったんです。




