27話 自己紹介と獣人の事情
「えーそれでは自己紹介を始めたいと思いまーす。
まずは俺、倉橋柚希15歳ですよろしくー!」
「その妹の倉橋蜜柑、11歳ですよろしく!」
「わいは神やから神様と呼べ。
後、蜜柑はわいのやから手ぇ出したら殺す。以上や」
恒例となった自己紹介タイムです。
前回と同じように俺達兄妹から自己紹介をし神が続く。
その後はどうしようかと思っているとマチルダさんが「次はあたしだね」と言った。
「あたしはマチルダ39歳。戦禍から逃れてネヴァル国の首都ネイヴィアのスラムにいたんだけどね、彼等に救ってもらってここで暮らしてるんだよ」
穏やかに微笑みながら俺達を見て、それから彼等に優しく語り掛ける。
怯えているから恐がらせないようにしてくれているようで嬉しい気遣いだ。
「ビックリするような物が溢れてるし、ちょっとあれな人もいるけどそんな悪い奴はいないから安心しな。
この二人は平気そうだけどそれでも獣人に嫌悪を持ってる人ってのはやっぱり多いもんさね、それでもまぁいずれ慣れるから気長にね」
その言葉にみんな俯いてしまう。
少し待ってみてもやっぱり誰も話し出さないから俺が口を開こうとしたら一人が話し出した。
「オイラは荷物運びしてたんスけど、最近は足を痛めちまって捨てられたんッス。
だからここにいたって何の役にも立てないと思うッスよ」
「役に立つか立ないかなんて関係ないよ、俺達はここで幸せに暮らしてほしいだけだから」
漸く話しをしてくれたことにホッとしつつ、トナカイの半獣人男性に答えるとみんな驚いた顔で俺を見る。
全員に一斉に見られると正直怖い...
「ぼ、僕達を...その、働かせ、ない?」
「あー...よければ畑仕事とか何かしら手伝って貰えると助かるけど、嫌だったら断っていいから」
オズオズと俯きながら上目使いで問い掛けてくるネズミ君の可愛さに心を落ち着かせながら返答すると場がざわつく。
「断っていいって」「怒らないの?」「ここで暮らしていいの?」
そんな声が続く中、
「家に帰っちゃ、だめですか?」
これまた可愛いリスの全獣人の女の子が言うと場がしん...となった。
家に帰りたいって思うのは当たり前なことだもんな、みんな人間に捕まって強制的に奴隷にされただけなんだろうし。
取り合えず俺は神に帰れるのか聞いてみることにした。
「家に帰してあげることって出来ないの?」
「出来るけどめんどいからいややし、帰った所で居場所なんてないやろ」
「え? どういうこと?」
思った通り面倒だと答えた神の続けた言葉に疑問が浮かぶ。
人間に捕まった家族が帰ってくることは嬉しいことじゃないのか? 居場所がないってどういうことだ?
「人間が獣人を嫌うように獣人も人間を嫌っとる。
そやから人間と一緒にいたってだけで嫌悪されたりもするし、捕まってから大分経つのに今更帰っても迷惑なだけやろ」
「!? 捕まってたんだぞ! それなのになんで嫌悪されるんだよ! おかしいだろ!!」
思わず怒鳴りつけてしまった俺をみんな怯えた目で見る。
しまった... なにしてんだ俺は...
「人間に奴隷として捕まるのは最悪のことや。
プライドの高い狼人や虎人なら帰って来た所で「人間に捕まるなんて一族の恥じだ。出て行け!」と責められるで。
それ以外の種族も世間体を気にして戻ってきた者を受け入れないのはよく聞くし、それでも帰るんか?」
神が冷ややかに俺を見つつ言う。
帰りたがっているのはリスの女の子だ。彼女達の一族は捕まっていた者をどう思うんだろう?
神の話しを聞いたその表情は俯いていてよく見えないが、あまりよくなさそうだ。
俺達は黙って彼女の言葉を待ってみるが反応がない。
「一度帰ってみて...だめならここで暮らせばいいよ」
「...帰っても、いいんでしょうか?」
俺の言葉を受け女の子は神を見る。俺や蜜柑、周りのみんなも神を見た。
神は一つ溜め息を吐き、
「まぁええやろ、連れてったるわ」
神の返答を聞いて他にも帰りたがる子も出てきたが取り合えず自己紹介を済ませないと。
「えーとまずは自己紹介しちゃおう! それから帰るんでもいいよね?」
「はい! 私リス族のリリスです!」
「私は鷹族のホリーよ」
「あっ、オイラはトナカイ族のトトっス!」
「僕らはネズミ族のチュチュです」
「僕はその弟のチュッチュです」
「わしは烏族のカーですじゃ」
おう、いきなり元気な自己紹介が始まったぞ。
ホリーさんはオレンジの腰くらいある髪をポニーテールにしたお姉さんだ。背中にある茶色の翼が格好いい。
トトさんは男性にしては長い焦げ茶の髪を後ろで一つに纏めている。頭にはトナカイの大きな角が生えている。
リリスちゃんは茶色のしましま模様の可愛いリスだしチュチュとチュッチュは灰色の可愛いネズミだ。
カーさんは真っ黒な体をプルプルさせているご老人のカラスだ。いきなりぽっくりいきそうでちょっと怖い。
失礼かも知れないけど、やっぱ動物そのままの姿の4人は見てるだけで和むな。




