2話 日本を離れ異世界へ
俺達兄妹は築35年の老朽化が進んだボロいアパートの1階で暮らしていた。
元々妹の蜜柑は歩けたのだが8歳、小学3年のとき事故に逢って車椅子になった。
そのとき俺は12歳、小6だった。
それからは色々大変だった。
前はマンションの3階に住んでいたから車椅子では行き来できないし、問題のあった学校にはいられない。
だからお金があったわけではないけど、それでも蜜柑の暮らしやすい今の1階の、学校にも近い場所に引っ越した。
新しい環境に馴染むのにも時間が掛かったし、俺達はなかなかこちらで友達が出来なかった。
それから3年後、両親が事故で亡くなった。
親戚が来て色々してくれたけど、俺は動く気力が湧かず部屋に引きこもっていた。
ギィッと床の軋む音がして振り返るとドアの側に蜜柑がいて、真剣な顔で言ったんだ。
「お兄ちゃん、一緒に異世界に行こう!」と。
話しを聞き半信半疑ながら頷き、言われるがままその手を握った。
両親が死んだ今、この世界にそれほど未練がなかったから。
俺が妹に「二人で行こう」とそう言った瞬間、俺達は真っ白な空間にいた。
「なんや、まじでお前も来たんか」
「神様! お兄ちゃんも一緒に行くって!」
生意気そうな子供の声が聞こえ振り返ると、そこには光の玉が浮かんでいた。
その光の玉が発光するたび声が聞こえる。
「あーあ、蜜柑だけ連れて行きたかったんやけどしゃーないか。約束やからな。お前も連れてったる」
「ありがとう神様!」
嬉しそうに神様?に感謝している蜜柑。
その蜜柑の話しではこの光の玉は異世界の神様で、自分の管理する世界に連れて行ってくれるらしい。
「えーって! 蜜柑の為にならそれくらい簡単や。
さて....確かお前は柚希やったか、お前には素敵アイテムをやるから向こうで蜜柑をしっかり守るんやで」
「言われるまでもない」
上から目線な発言が癇に障るが妹を守るのは当然だろう、言われるまでもないことだ。
「ほんなら行こか」
光の玉がそう言った途端、眩しい光で目を開けていられずギュッと目を瞑った。
光が納まり目を開けるとそこはだだっ広い荒野だった。
遠くに山も見えるが他にはなにもない。
「こんな何もないとこで暮らせってのか!?」
「阿呆、お前だけならそれでええやろが蜜柑もおるんやで?
そないなことするわけないやん」
驚いて言った俺の言葉に呆れたように返す神。
いちいち腹立つんだよなこの神...
「ほれ、これをやる」
そういって投げ渡されたのは腕時計。デジタル時計みたいで日にちと時間が表示されている。
「なんだよこれ」
「腕に付けて画面を押してみ」
言われた通り軽くタップしてみると空中に文字が出てきた。
[マップ]、[アイテム]、[ステータス]など、ゲームでよく見るような項目だ。
「マップを押して建設を押してみ。んで道か建物を選ぶ。
んで建てたい場所を指で指定するんや」
言われた通り[マップ]をタップすると立体的な山や荒野などが現れた。
ここの景色を少し上空から映している、高空画像のような立体映像だ。
白い点が2つあるのが俺と蜜柑だろう。
「わぁ! すごいリアルな景色だね。この辺りなのかな」
「あぁ、そうだと思う」
蜜柑は俺の操作を隣から覗きこんでいる。
それから右側にある[建設]をタップし、出てきた[道][建物][地形変更]から、取り合えず[道]をタップすると名前と画像が出てきた。
砂利や煉瓦、アスファルトなど。下にスクロールしてもズラズラと色々な種類が出てくる。
どれで道を作るか選ぶのだろう。まるで建設ゲームみたいだ。
その中のアスファルトを選ぶと説明文が表示され決定を押した。
それから近くの地面をタップしたら目の前の地面がアスファルトになった。
「わっ、これ今お兄ちゃんがやったんだよね。すごーい!」
楽しそうに手を叩く蜜柑の様子に自然と笑みが出てくる。
「ほれ、家も作りや。住むとこがなきゃ困るやろ」
そうして俺達の異世界生活が始まった。
ここまでは連続投稿です。
5話くらいまでは毎日投稿する予定です。
それから24話までは週一くらいの間隔で予約投稿しようかなと思ってます。