17話 初めてのお給料です
みんなが働き出して早1週間。
夕食後にそのままみんなには食堂に留まってもらった。
今からドッキドキの給料払いです。
こ、こんなことしたことないから緊張する。働いたことないのに人に給料を渡す日がくるなんて...
蜜柑や神と話し合ってお給料については色々決めてある。
給料は週払いに、渡すのは一人ずつ俺から手渡しで。
金額を決めるのは難航した。
だって俺も蜜柑もこの世界の人間じゃないし、相場とか分からないから。
頼りの神はやはりそう言ったことに疎かった。人間の通貨になんて興味ないから。
そもそもここはどこの国にも属してないから通貨が存在しないし。
給料を渡す為には通貨を作らなければいけないことに気付き、急いで作った。
「名前を呼ばれた人は取りに来て下さい。
では、まずはマチルダさん」
「あら、あたしからかい?」
少し驚いてからマチルダさんは席を立ち俺の所まで来た。
日本で見たことがある、封筒に入れたお金を一人一人に渡すやり方を参考にしたつもりだがドキドキだ。
「これが一週間分の給料になります。好きに使って下さいね」
「ありがとうね。給料を貰うなんて何年ぶりだろう、嬉しいよ」
マチルダさんはそう言って涙ぐんで受け取った。
その姿になんとも言えない気持ちになる。
マチルダさんが席に着いたら次にルミナスさんを呼ぶ。
「これは... 身分証かい?」
封筒を覗いたマチルダさんの疑問の声が聞こえたが、それに答えるのは蜜柑だ。
「はい、それはこの国の住民であることを証明するカードになっています。
その中にお給料であるこの国の通貨フルーツも入っていますよ」
「「国家カード...」」
感動したような声を上げたのはマチルダさんだけじゃない。ここにいるほぼ全員だ。
この世界のほとんどの国では自国で生まれた者にそのことを証明するカード、[国家証明カード]を渡す。
日本にある身分証に近いが、それよりよくゲームや小説なんかにあるギルドカードとほぼ同じものだ。この世界にはギルドカードも存在する。
そのカードの中には様々な個人情報が入っており、その中にはお金も含まれる。
フルーツって単位は俺達兄妹に果物の名前が付いてるからつけた。
この[国家証明カード]にお金が入ってるから電子マネーとして使えるし直接通貨でのやり取りをしないですむ。
お陰で貨幣や紙幣を作らなくてすんだ。いや、いずれは作らないとだめだろうけど。
「嬉しいねぇ、こうしてまた国家カードを手にできるなんて」
涙を目尻に溜めて微笑むマチルダさん。
浮浪者になった人達はカードを失った人が多いから、こうしてまた手に入って喜んでるんだろう。
急いでカードを作ったかいがあったな。
「あら? 国の名前がないみたいだけど?」
席に着いてカードを見ていたルミナスさんの疑問はもっともだ。
カードの国名を示すスペースには何も書かれていないのだから。
「国の名前はまだなのでみんなで考えましょうね!」
「「「えっ?」」」
蜜柑の言葉に誰もが驚きの声を上げた。
いや、でもさ、国の名前なんて思いつかないししょうがないじゃん。
動揺する人々の中嬉しそうにルルちゃんが言った。
「ならお花の国は!? お花をいっぱい植えてお花の国にするの!!」
「いいね、なんのお花を植えようか?」
蜜柑の言葉にルルちゃんは嬉しそうに国の名前を考えてくれている。
蜜柑はそんなルルちゃんが可愛いのかニコニコだ。
それを歯軋りしそうな目で見ている神はきもいけど。
「アルトバーレ様がいるのだから神の国アルトバーレがいいのではないか?」
「いや、あいつの名前をつけるのはちょっと...」
リアーナさんの言葉に思わず返してしまったが、この神の名前を付けるのは絶対嫌だ。
こんな奴がいるなんて思われたくない。
「やっぱ聖女の統べる国、蜜柑聖国がいいやろ」
「もう! それは嫌だって昨日も言ったでしょ!」
「なら女王が統べる国、蜜柑女王国はどや!」
「だからやだって言ってるでしょ神様!!」
神はしつこく蜜柑の名前を付けたがるが、その度に蜜柑が反対している。
そりゃ自分の名前の付いた国なんて恥ずかしいだろ。
「希望の国、なんてどうだろう?」
ポツリとロイさんが言うと、「あ、それいいかも」「希望の国か...うん、すごくあってると思います」と、次々に同意する声が上がった。
「ん~、じゃあ国名はエルスイズでよろしいですか?」
俺が聞くと賛成の声で溢れた。
正直希望の国なんて小っ恥ずかしいし責任も重いけど、名前負けしないように頑張らないとな。
国名はエルスイズで決まったわけだが一人反対していた神は無視した。
国の名前とか私もなかなか思い浮かばなかったですね。通貨のフルーツはすぐに浮かんだんですけどね。




