16話 潔癖症
俺が一人で廊下を歩いていると箒を持って床を掃いているミリーがいた。
「掃除してんの?」
「はい」
「あっ、なんか落としたりした? 手伝おうか?」
「いいえ大丈夫です。勝手にしていることですから」
廊下を汚してしまって掃除してるのかと思ったのだが違うようだ。
自発的に掃除をしているなんてなんていい子なんだと感心する。
俺と歳が1つしか違わないとは思えないほど立派だな。
ちゃんとメイド服着てるし、青い髪も肩で切り揃えられて跳ねてる所なんてない完璧なメイドだ。
そうやって俺が感心して見ていると、苦笑いしつつ彼女は言った。
「私、少しでも汚れがあると気になってしまって、余計なことと思いつつ掃除をしてしまいました」
「いや、助かるよ。でも浄化扇を使えばいいんじゃないの?」
「そうなのですが、私は自分の手でやらないと落ちつかないんです」
苦笑いしつつそう言った彼女に「そうなんだ」と返しながら頷いた。
浄化扇って一般的じゃないのかな? ミリーは元下級貴族っていってたけど上級貴族のとこで自分で掃除やってたのかな?
それにしても、ミリーってちょっと潔癖症入ってそうだなー。
「なにか必要な物があれば出すけど」
「大丈夫です、今あるだけで足りてますから」
「そっか、無理しないでね」
それから彼女と笑顔で別れたのだが次の日もその次の日も、彼女はアパートのあちこちを掃除していた。
階段や廊下、トイレに食堂など本当に隅々まで綺麗にしてくれる。
アパートだけじゃなく外で草むしりしてることもあるしすごい働き者だ。
「ね、ミリーってさ、毎日掃除してるよね。それに洗濯も」
「はい、勝手ながら気になるもので」
浄化扇があるから掃除も洗濯も毎日する必要なんてないのだが、彼女は毎日きちんとしてくれる。
俺達の洗濯もしてくれるんだぜ?
...は、恥ずかしい...
申し訳ない気がするが、こちらが気付くと洗濯されてるんだ。
お礼を言っても本人は「お気になさらず、私が落ちつかないからしていることですので」と言ってる。
蜜柑から聞いたのだが、みんなで一緒の部屋に暮らしていたときも部屋の掃除を神経質なほどしていたそうだし、お風呂に入ったときは体を洗いまくっていて心配だと言っていた。
...100%潔癖症じゃねーか!
少し呆れつつ心配にも思う、
けど、彼女の身の上話しを思い出すとそれも仕方ないのかも知れないと思った。
「いつもありがと。
ミリーのお陰でこのアパートは今だに埃一つなく綺麗なんだよ」
「そんなことありませんよ」
感謝と労りを込めた俺の言葉にミリーは少し目を見開いて、それから困ったように微笑んだ。
こうやってミリーも人間らしい表情をしてくれれば可愛いのに、いつも営業スマイルというか、隙のない微笑みなんだよな。
まるでロボットみたいというか、まぁ、侍女だったんだし仕方ないのかも知れないが。
こうやって掃除や洗濯をしてくれてるわけだから給料としてお金を払わないとだめだよな。
もちろんミリーだけじゃなく他の住民も。
そう思い、彼女の掃除している時間や洗濯の量など色々調べ、他のみんなの仕事なんかも調べた。
そうして集まった情報を元に給料について蜜柑と神と話し合った。
集まった3人共素人というか、あまりそう言うことが分からない人間なせいで無駄に難航した。
働いたことなんてないし。給料貰ったこともないし。
賃金の基準ってどうやって決めるの?
料理作るのと畑耕すのとどっちの方がお給料多いの?
ってか労働基準法ってどうなってる!? ミリー確実にオーバーしてるよね!?
...本当にさっぱりです。




