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1話『近未来?』

 少しばかり未来チックな廊下を歩くこと数分。俺は指定された扉に立っていた。

 大きな扉だ。いや、これだけが大きいわけではない。何もかもがデカイ。

 光源が埋め込まれている天井も、メタリックな壁も、光沢のある床も、そこにある観葉植物も、全てが。


 俺は視線を扉へと固定する。この扉の向こうから音は漏れてこない。何故か。それは、音が漏れないほど、この扉が防音性に優れているからか、音が発せられないほど全く人が動かずかつ喋っていないからか、はたまた俺が部屋を間違えたからか。

 まあそんな疑問も目の前の扉を開ければ全て消えてなくなること。俺は一つ、息を吐く。


「ふぅ…………よし、行くか」


 小さく、零すようにそう呟いた俺はスライド式の扉の取っ手に手をかけ、引いた。

 扉は、大きく頑丈そうな見た目に反して、とても軽い。思わず目を見開いてしまう程度には。

 そして、扉が開き、廊下と教室・・の空間が空いたその瞬間、俺の耳に音が転がり込んできた。


「──と、いうわけだ。手伝え愚民共」

「おんだらべ、なんばいっちょんや?」

「あぁ、新入生を歓迎するんだね! それはそれはボクにとって初めての出来事、つまり初めての経験! またボクの人生と言う塔に新たな経験と言う財産が詰みあがっていくんだ! それは素晴らしいよ! 素晴らしくて素晴らしくてボクはボクはあぁあぁ!」


 教室にいたのは三人。教卓に両手をついた銀髪の青年。席に座る坊主頭の黒髪。同じく席に座る頭を振り乱している緑色の長髪。

 なんだここはファンタジー世界か?

 俺はその見た目のインパクトに思わず彼らのセリフには反応せずにそう思ってしまった。そう、思って『しまった』。

 銀髪の青年が、呆然と扉を開けた状態で三人を見ていた俺に気付いたのか、コチラを見る。その眼差しはとても冷たく、鋭い。とても新入生に向けるものとは思えない。むしろ俺を殺すんじゃないか?

 だがそんなこと口が裂けても言えない。俺はただジッと青年を真正面から見返す。


「貴様が新入生か」

「は、はい! これからよろし────」

「来るのが早い。まだ準備が出来ていないだろうが」


 俺の言葉を遮った銀髪の青年は素早く懐からブツを取り出した。

 なんだ、と思っている間に耳をつんざく爆音が鳴り響く。


「──────」


 いきなりの爆音に硬直する俺。ついでそれをなしたものが何か知って目を見開きつつ、青年を見やる。嘘だよね、という期待を込めて。

 しかしそんな願いは青年の言葉に儚く散った。


「外で待っとけ。了解無しに入ってきたら当てる」

「は、はいぃ!」


 手に持った拳銃をチラつかせながらそう言う青年に、俺は尻に火がついたように教室を飛び出した。


「よし、今のはなかった。さあ新入生の歓迎準備をするぞ愚図共」

「いまんげ、なかたよんしとんか!」

「やはりここは退屈にならない! 僕にとって新しい経験で溢れてるよ! それはつまり僕の財産が────」


 扉が閉まる数秒の間、やけにたくさん声が聞こえたことに不思議がりながら、俺は深々とため息をついた。


「…………大丈夫かなぁ……」


 当然それに答える人は誰もいなかった。




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