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誰もが何かの罪を負う

 ナーブ、ナーブ!どういうことっ!!ザイナーヴに何か言ったの絶対ナーブでしょ!


 私が怒りのままにカーディーンの宮を飛び出してザイナーヴの宮まで押しかけると、ザイナーヴの肩に乗ったナーブがしれっとした顔で答えた。


 そうだが?


 風の留め箱であったことは言わないんじゃなかったの?嘘つき!


 私が長椅子の背中部分に乱暴に着地してそのままの勢いで地団太を踏むと、ナーブはまっすぐ私を見て答えた。


 それは人の決まり事だろう?レーヴに迷惑がかかるから極力守る気はあるが、うまくいけばシャナンをレーヴの番いに出来るかもしれなかったから言った。人の決まり事なんかよりレーヴの方が俺には大事だ。


 でもナーブが決まりごと破ったせいでカーディーンが悲しい思いをするんだよ!ザイナーヴだってなんでシャナンをとっちゃうの!!


 レーヴを責めるのはやめろ!悪いと言うならば俺が全部悪いんだ!


 私とナーブがぎゃあぎゃあと羽をまき散らさんばかりに威嚇し合っていると、だいたいの話を察したらしいザイナーヴが私に目線を合わせるように長椅子の前で膝をついて屈み、私に言った。


「どうやらカティア殿の事情を聞く限り、少し情報が混ざり合っているようだね。一度きちんと話し合いたい。私はカティア殿に隠しだてはしないから少しだけ怒りを納めてくれないか?」


 至近距離で悲しげな表情でザイナーヴに頼まれた。

 それでも私は頬を膨らませたまま羽を広げてザイナーヴ達に威嚇を続けていると、少し離れた場所から私をなだめる様な声が聞こえた。


「カティア、落ち着きなさい。怒りのままではたくさんのことを見失うぞ」


 穏やかな声音で私を制止したのはカーディーンだった。


「兄上……」


 ザイナーヴははっと立ち上がってカーディーンを見た。

 カーディーンはザイナーヴを見て頭を下げた。


「我が守護鳥が突然押し掛けたこと、そしてカティアを追いかける為とは言え、私自信が来訪の知らせも告げずここに入ってきたことをあわせて、こちらの非を謝罪する」

「いえ、どうか謝らないでいただきたい。カティア殿は混乱されている御様子。今後の為にも、ここできちんと話を合わせておいた方がよろしいでしょう。どうぞ我が宮へ」


 カーディーンがいきなり謝って、ザイナーヴがそれを制して、私はそれすらなんだか腹立たしくて何故謝るのかと頬を膨らませたまま、カーディーンの手に抱かれてザイナーヴ達と長椅子で向かい合った。



「さて、どこから話したものか……。カティア殿の疑問を一つ一つひも解いてゆきましょうか」


 人払いを済ませ最低限の人数だけ残してから、ザイナーヴが水を向けた。

 私はカーディーンの手の平の上で頬を膨らませたまま静かにくぴーと鳴いて同意した。


「まず私が兄上の想い人であるシャナンに想いを寄せたこと、これは私の罪です。シャナンは私が想いを寄せてよい相手ではなかった。だから私はこの想いを秘めたままいるつもりでした」


 レーヴは悪くない!だってあの女、シャナンは……。


「うん、ナーブ。順を追って説明するから落ち着こうね。

 罪であるとわかっていたからこそ私は誰にも言うつもりがなかったが、……ナーブには確信を持って見破られていたようです。私の未熟さゆえにナーブすら巻き込んで振り回してしまった。ナーブの暴走を止めることが出来なかったことも守護鳥の加護を受ける者として、私の不徳の致すところです」


 そう言えば、カーディーンはシャナンとの逢瀬にあまり私を連れて行ってはくれなかったし、私がカーディーンはまだ正式な求婚はしていないと教えてもらったのもかなり後になってからだ。

 そう考えると、見合いの席には必ずナーブを同行させて、ナーブが気に入るかどうかも考慮に入れていたザイナーヴとは逆の行動をとっていたんだと気付いた。


「そして私の為にと自分なりに考えたナーブが私にひとつの情報をもたらした。兄上はまだシャナンに正式な求婚をしていない、という話です」


 ザイナーヴが手の平に乗るナーブを見て言った。


「私はナーブがその情報を風の留め箱で聞いた話だとは知らずに、その事実を確認するためひそかに従者に調べさせたのです。そしてその結果……」


 ザイナーヴはひと呼吸おいてからまっすぐカーディーンを見て言った。


「兄上はシャナンの父、オーリーブ家の長に話を通していたわけでもなければ、首飾りを贈っていたわけでも、ましてや首飾りの完成を待っていたわけでもなかったのです」


 ザイナーヴは少しだけ非難する様な眼差しでカーディーンを見ていた。


 どういう意味?


 私が尋ねると、カーディーンが教えてくれた。


「人の求婚は男性優位で話が進むと教えただろう。そして首飾りを贈ると求婚したことになるとも。なので求婚する場合、まず男性が伴侶にと望む家の長に手紙なり直接なり娶りたいと話を通さなければならない。そして首飾りを贈り、相手の家がそれを受け取ることで求婚が成立したと言えるのだ。

 しかしその事実を踏まえた上で……私は、シャナンの父に手紙を出したわけでも話をしたわけでもなく、オーリーブ家に首飾りを贈っていたわけでもなければ、今シャナンに贈るための首飾りを準備しているわけでもなかったと言うことだ」


 淀みなくすらすらと、カーディーンは目を伏せながら私に言った。


 え……で、でも!カーディーンはシャナンが好きだし、カーディーンとシャナンは伴侶になるんだって噂になっていたよ。


「そう、誰もがその噂を信じていたしそう思っていました。だから誰もシャナンに求婚しようとしなかった。相手が王族で将軍位にあるカーディーン兄上だったからです。しかし求婚の事実もないのであれば、シャナンは兄上の想い人ですらないのです。だから私が求婚しました。正式に手紙を出してオーリーブ家の長から了承の意を受け、今は首飾りを準備しているさなかです。そこまでしなければ、男性は女性を想い人として愛することも言葉を交わすことも、本来してはならないのだから。つまり、兄上はシャナンを口説く権利すら持たずに、シャナンを噂で縛り付けていたことになるのです。特にオーリーブ家は兄上に拒むことすら出来ぬほど身分に格差のある相手。これに関しては、まぎれもなく兄上の罪だと私は思います」


 ザイナーヴはきっぱりと言い切った。

 カーディーンが悪いと。

 私はくるりとカーディーンに向き直って見上げて尋ねた。


 なんでシャナンの家に一言も話を通していなかったの?カーディーンが悪いみたいに言われてるよ!


「カティア、私が悪いのだ。ザイナーヴの言っていることは何も間違っていない。私が求婚の作法のどれか一つでもしていれば、後から好きになったザイナーヴに非があるのだろう。しかし私はそのどれも行っていなかった。つまり私にはシャナンを自分の想い人だと言う権利すらないのだ。であればザイナーヴがシャナンに求婚して、オーリーブ家がそれを受け入れても何も間違ってはいない。悪いのはすべて私と言うことになる。事情を聞けば、誰に尋ねても悪いのは私だと言うことだろう」


 カーディーンは私をなだめるように言った。


「兄上、シャナンを想っていたのならばなぜ一言オーリーブ家に話を通して、正式な手段で彼女を伴侶になさらなかったのですか。御自身の名誉に傷をつけてまで、なぜ……」


 ザイナーヴが悲しそうな瞳でカーディーンを見つめた。

 同じようになぜと私も思ったが、カーディーンが言っていた言葉を思い出した。


 カーディーンとシャナンの家には、拒めないくらいの力の差があるって言ったのはザイナーヴじゃない。カーディーンはシャナン自身の返事が欲しかったからシャナンの家ではなくシャナンに求婚していたんだよ!カーディーンが求婚したらシャナンの家は拒めないじゃない!なのになんでシャナンに聞かないでシャナンの家に求婚したザイナーヴの方が正しいなんておかしい!おかしいよ!!


 私がカーディーンをかばうように羽を広げてくぴーと鳴くと、ザイナーヴは首をかしげながら言った。


「なぜ女性の意見を聞くのですか?家の長が許可すればそれが女性の意見です。そして女性は長が認めた相手に嫁いでその相手を愛して尽くし、子孫を残す。かわりに男性は伴侶が不自由なく暮らせるよう持てるすべてで自身の家を盛りたて、繁栄と富と幸福と家同士の結びつきを伴侶に約束する。それが貴族の婚姻です」


 当然とばかりにザイナーヴが言った。

 そうあるべきが当たり前とでも言うように、誰も口を挟まない。

 なんか以前もそんな話をしていた。ラナーも風呼びの儀の時に似たようなことを言っていたはずだ。結婚する相手に恋をする、と。

 そうあるべきが当然なのかなぁ……。


 でも……カーディーンは父親と母親からそうあるべき愛を感じなかったから、不安になってシャナンに選んでほしかったんでしょ?愛して欲しいと相手にお願いすることが悪いことなの?


 私がぽつりと言うと、ザイナーヴや他の人達がはっとしたような表情でカーディーンを見た後、少し俯いたり唇を噛みしめたりする様な顔をした。

 カーディーンの両親のこと、カーディーンがタクランの王子と呼ばれていたこと。その生い立ちはザイナーヴも知っているのだろうかける言葉が見つからず、ザイナーヴは何かを言おうとして言えない様な悲しそうな、苦しそうな表情で眉を寄せた。

 カーディーンはそれに対して何も言わず、私の背中を優しく撫でながらそっと言った。


「とにかく全ては我が罪であり、シャナンやザイナーヴ、ナーブ殿には何の落ち度もない。シャナンは私との噂の後でそなたと正式な婚姻を結ぶことになった。私が言うことではないかもしれぬが、彼女をいわれなき噂から守るのはそなたの役目だ。……そなたとシャナンの婚姻を心より祝福しよう」

「いえ、知らぬこととはいえ風の留め箱での話を聞いてしまった私にも罪があります。私からも謝罪をさせていただきたい」


 レーヴは何も悪くない!悪いのはレーヴに教えた俺なんだから!


 ザイナーヴが静かに言って、ナーブがザイナーヴをかばうように必死で言った。

 そしてナーブはおろおろとザイナーヴを見た後、何かを決意したようにぐっと尾羽を震わせてから、ザイナーヴの手からひょこっと降りてカーディーンのすぐそばまでやってきてそこでぴたりと止まった。


 カーディーン、カティア。どうかレーヴを責めないでほしい。俺はレーヴが悲しそうな顔をしているのは見たくない。風の留め箱での話をそうとは言わず伝えたのは俺の考えだ。だから、俺が謝る。そしてカティアに、レーヴの命に関わること以外ならばひとつだけ、なんでもすると約束する。これは人の約束事ではなく、俺がレーヴからもらったこの名において誓うことだ。


 ナーブが「ごめんなさい」と呟いて額を足につけるように傾いた。

 たぶん謝罪の意味を持つすりすりが出来ないから、人間の頭を下げるという行動を真似しているのだろう。

 ナーブの行動はどこまでもザイナーヴのためなのだ。ザイナーヴの為に駄目だと知っていた風の留め箱での話を教えたし、そもそもカーディーンの伴侶になるはずだったシャナンを欲しいと私に言ってきたのだ。そして謝るのもザイナーヴが悲しむからだ。

 ナーブが、月の兄弟がそう言う生き物だとわかってはいても、私やカーディーンが悲しむからという事実が見事に脇に置かれているその考え方に怒りを覚えた。

 私がどれほどシャナンのことを話してしまいたいか、どうすべきか迷い続けていたのにナーブはあっさりと話してしまったのだ。

 ナーブが余計な事さえ言わなければ、シャナンはちゃんと答えを出したかもしれないし、カーディーンの伴侶になっていたかもしれないのだ。

 ナーブのその奔放な一途さを、憎らしいとさえ思った。

 そしてふと、気がついた。

 風の留め箱での話だから誰も言わなかったが、そもそもナーブにカーディーンの求婚の話をしたのは私だ。

 確かに私が言ったのだ。何の考えもなく、ただカーディーンから聞いた事実を正直に言った。

 私が人間の求婚の作法を詳しく知らなかったとはいえ、ザイナーヴにシャナンを番わせたいナーブにきっかけの一言を与えたのは私なんだ。

 そのことに気付いた瞬間、この話を一番こじらせたのは、実は私だったのだと気付いた瞬間に私がカーディーンの為に怒るのは間違っているような気がした。

 私はカーディーンの為にナーブとザイナーヴを怒ったけれど、そもそもナーブにカーディーンのことを教えたのは私だった。

 カーディーンはシャナンをザイナーヴに奪われて悲しかったけれど、実は作法に則って求婚していなかったのだから悲しむ権利すらなかった。

 誰もが誰かの為、何かの為に動いていた中で、私だけが誰の為にもならない行動をしていたのだ。

 ……私、何やっていたんだろう……。

 頬は自然としぼんでいて、尾羽はぺたりと下がっていた。


 ……今はナーブにしてほしいことなんてないよ。


 わかった。では約束はいつかカティアが求めたときに果たす。


 私はそれだけなんとか言葉にして、後はしゅんと黙ってしまった。

 カーディーンは私の急な変化を気にしているようだったが、私が大人しいのを見て口を開いた。


「この話はこれで終わりだ。繰り返すが全ては私の行動に非があり、ザイナーヴ、そしてナーブ殿およびシャナンには何の落ち度もない。私はそなた達の婚姻を祝福し、求婚が整った暁にはそなた達にムーンローズの花束を贈ろう」

「……兄上。私が求婚の際に贈る首飾りは二月かけて作ります。どうかそれまでによき伴侶と巡り会われますように」


 ザイナーヴがほんの少しだけ悲しそうな目でカーディーンを見た後に、静かに告げた。


 それってカーディーンに失礼なこと言ってるの?


 いくらカーディーンに悲しむ権利がなく、私に誰かを責めることが出来なくてもカーディーンに悪口言うなら許さない。

 私がザイナーヴを睨むと、それをカーディーンが制した。


「違うぞ。ザイナーヴは私をかばうためにそう言ったのだ。私が礼節を欠いた愚か者にならぬよう申し出てくれたのだ」


 どういうこと?


「私に自分より先に婚姻を済ませろと言ったのだ。シャナンよりも高位の女性を伴侶に迎えて、とな。そうすることで、私はふたつの条件を吟味し、選んだことになる。本来貴族の婚姻はそういうものだから、な。ザイナーヴが多くの女性と会っていたのと同じ扱いになるのだ」


 シャナンよりも良い条件の伴侶を迎えれば、誰もがシャナンを選ばなかったことに納得するだろうと。

 でもそれは……カーディーンの願いに反することだ。

 あぁ、そうか。これがカーディーンへの罰なのかも知れない。

 作法を無視してでも愛し合う相手をと望んだカーディーンへの。


「そなたは私に甘すぎるな。しかしそなたが負い目に感じることなど何もないことを忘れることのない様に。作法を無視して心を先に求めた私が愚かであったのだ。そなたはシャナンとの幸福だけを考えなさい」


 カーディーンも悲しそうに言った。

 そう言って、別れの挨拶をしてから私達は静かにザイナーヴの宮を出た。


 私は大人しくカーディーンの手の中で運ばれながら、静かに自分を振り返った。

 私にナーブ達を責める権利なんてなかったんだ。

 それでもザイナーヴがきちんと話をしたり細やかな事情を教えてくれたりしたのは、ザイナーヴがカーディーンのことを気にしていて、私に優しかったからだったのだ。


 カーディーン……ごめんなさい。


「そなたが謝ることなど何もない。私の為に怒ってくれた気持ちを、どうして私が責めることなど出来ようか。私こそ、そなたに恥をかかせる不甲斐ない加護の相手ですまなかったな」


 私はくぴーと鳴いた。


 すると回廊の向こうから足音が聞こえた。

 曲がり角から現れたのは、シャナンだった。

 私は緊張にびくりとし、カーディーンもぴたりと一度立ち止まった。

 シャナンもこちらに気づいて立ち止まり、目を丸く開いていた。

 やがて小さく息を吸ったカーディーンがゆっくりと歩き出し、立ち止まったままのシャナンの元までやってきた。

 シャナンはカーディーンが目の前で立ち止まると、ふわりと丁寧に挨拶をした。


「久しいな、シャナン。ザイナーヴの元へか?」

「お久しゅうございます、カーディーン様。ザイナーヴ様にお話があって参りました」


 この先にあるのはザイナーヴの宮と部屋ばかりだ。


「ザイナーヴとの婚姻を心から祝福しよう」

「祝いの御言葉、ありがとうございます」


 互いに精彩を欠いた声音で当たり前のことを話していた。

 ほんの少しの間をおいて、カーディーンが静かに切り出した。


「……箱はどうしている」

「こちらにございます。ザイナーヴ様に私の罪をお話すべく、持参いたしました」


 そう言ってシャナンは従者からひとつの小さな木箱と手紙を受け取った。

 大切に両手で捧げ持たれた木箱には、艶やかに磨かれた木目に凝った彫り細工で美しい意匠が施されている。手紙は来訪を尋ねるものに似ているが、それよりも少し豪華で厳重に封がされていた。

 その箱の蓋の中央にも手紙にも、私の砂漠に出る際につける首飾りについた鱗石と同じ模様があった。

 あれはカーディーンを示す紋章じゃないの?

 私がそうぼんやり考えていると、カーディーンがその箱と手紙をシャナンから受け取って告げた。


「そなたに……シャナン・リダ・オーリーブにカーディーン・トゥラ・アファルダートの名において命じる。この箱の存在と事実を誰かに話すことを禁ずる。またこの箱の存在を知る者にも生涯の秘匿を命じる。徹底せよ」


 静かだが有無を言わさぬ命令に、シャナンがはっと顔を上げて言った。


「しかしこれは私の……っ!!」

「それは私が望んでそなたに課したことだ。そなたからの返事を聞けなかったことだけが心残りではあるが、これはそなたの罪ではない。よいな」


 返事を聞けなかったこと、と言う言葉にシャナンが小さく肩を揺らしたが、一度目を伏せてからまっすぐにカーディーンを見つめて静かに頭を下げた。


「御下命、しかと賜りました」


 深々と頭を下げたシャナンを一度見てから、カーディーンは声もかけずに歩き出した。



 カーディーンの宮に戻ってきた後、カーディーンは長椅子にどかりと座って長い息を吐いた。

 カーディーンはなんだかとても疲れているようだった。

 私はカーディーンがシャナンから受け取った箱と手紙をじっと見た。

 なんだかとても気になるのだ。


 カーディーンこれ何?


 私が箱に脚をかけて尋ねると、カーディーンは小さく笑いながら言った。


「大したものではないので忘れなさい。さて私は軍の区画に行ってくる。そなたは息抜きに少し遊んでくるといいだろう」


 宮で遊んでもどこかに散策に行ってもいいと言い残して、カーディーンは箱と手紙を持って軍の区画に向かってしまった。


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