第1話
正直なんでこんな話が浮かんだのか。
でも頭に下りてきたんですよね……なので一応書いてみた
と言うのが本音です。
スノウは今日13歳の誕生日を迎えた、両親がささやかながら宴を開く。 実はこのこと自体がかなり恵まれている。 最初に言った通りにこの世界の国民は1年に1回強制的に戦争に借り出される仕組みが働いており、片親が居ないなんてのは極々当たり前のこと。それを両親揃って誕生日を祝ってもらえる事自体がこの世界では稀な事なのだ。
この世界では普段は畑仕事や鍛冶、細工、などの生産業を中心にして経済が回っている。 だが、1年に必ず1回ある戦争に駆り出され、帰ってこない者など山ほど居る。 仕事など山ほどあるし、手などいくらあっても足りないので、10歳を回れば何かしらの仕事をしているのが普通である。
そんな世界であっても13歳の誕生日だけは両親が、居なければ近所の人が必ず祝う事になっていた、その理由は女神から武具が押し付けられるからである。 つまり後1年後には戦争に駆り出されることが確定するわけで、その後の葛藤の一年間の始まりだけでも楽しい記憶を作ってあげようと言う、ささやかな祈りが込められている。 その祈りすら女神は笑いながら食い物にしているわけだが。
その誕生日のお祝いが静かに行なわれていると、部屋の一角が輝きだす。 折れない、曲がらない、壊れない……そして離れられないと言う呪いの武具が女神より届いたのである。 スノウに与えられた武具は、ショートソード、バックラー、ライトアーマーであった。
この最初の武具はその人間の『戦闘に対する』潜在能力にて送られてくるものが変わる。 スノウのように剣と盾が使いこなせる人には剣と盾を、魔法を覚えられる人には杖が、力自慢には両手の剣や斧が、器用な人には槍や弓などが送られてくる。
また、武具は進化することが出来る。 与えられた武具で訓練や経験をつむことで進化することがある、そのため、13歳になったら誰もが必死で戦闘訓練を始める。 ただ1つの目的、生き残るために、だ。
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スノウも当然翌日から呪いの武具をまとい両親の指示の元戦闘訓練を始める、目的は3つ。
一つ目は体を作る事、14歳で初陣を行うことは確立としては低いが、どんな言い訳を言っても選ばれない可能性は0でない以上、備えなければ危険すぎる。 ましてや戦場で若い人間は真っ先に標的にされて殺される確率が高い。そのためにも少しでも体を作ることは必須だった。
2つ目は先ほども言ったが武具を進化させるため、だ。 ショートソードも決して悪い武具ではないが、進化をすればショートソードでも鋼鉄製になったりするし、運がよければ更なる派生進化をすることもある、1年と言う限られた時間で少しでも強化しておくことが死神の手から少しでも離れる事につながるのだ。
最後の3つ目は……『業』の習得である。 これは習得できる人間と出来ない人間が居るのだが、習得できると大幅に生存率を上げられるものであった。 女神が戦争を面白くするために人間に与えたなどと皮肉られる存在である『業』であったが、遠距離から切ることが出来たり、より強力な魔法だったり、そして非常に稀な例だが、治癒が出来る『業』もある。 特に治癒の『業』は持っているだけで周りの生存率が跳ね上がるために寄せ集めの者たちが行なう戦争でも自然に防衛対象にされることが多い。
13歳から14歳までは一切仕事を与えないのも暗黙の了解である。 その期間はこの先、生き残れるかどうかを左右する重要な時期であり、絶対に邪魔をしてはいけない物だとこの世界で生きる人々は痛いほど分かっているのだ。 それが分かってしまうほど血の歴史が続けられている、と言う事でもあるのだが。
戦争の時代を生き延びることが出来る人数は、1000人中15人残れば多い方とされる。 この15人は五体満足で、の話であり、四肢を2箇所以上欠損した人は含まれない。 さらに戦争に一回も呼ばれなかったと言う非常に幸運な人間は、1000万人に1人か2人ぐらいの確率であり、そんな幸運者はめったに現れない。
では何が何でも戦争に行かねばならないか、と言うことに、実は抜け道がある。 『冒険者』になることである。 ……が、この選択をとる人はまず居ない、理由は生存率がものすごく低いのだ。 国家支援を受けられないと言う時点で食料の配給を受ける権利を失うばかりか、国の城壁の中で寝ることも許されない。 もちろんモンスターを狩り、その素材を売って必要なものを買うと言った商売は黙認されているが、モンスターを普通に狩れるのであれば、戦争に行っていたほうがよほど生き延びられる可能性が高い。
さらに一種の逃げ出した存在である『冒険者』には権利などないに等しく、ギルドなんてものも存在しない。 厳密には一時期存在していたのだが、一定の冒険者が集ったところに女神の強制召喚で戦場のど真ん中に召喚された挙句、4国の召喚された人々の的にされた。 その時の戦争では4国の人達全員に女神の加護が与えられており、その戦争の勝利条件に【冒険者の全員抹殺】が掲げられており、そこに償還されたギルド参加者の冒険者達はなぶり殺しにされた。 〔血の海に眠った冒険者〕達と言われた惨劇である。 このことがきっかけでその後冒険者ギルドは存在していない。 ……それでも戦争よりはマシだと冒険者になることを選択する人間もまた僅かだが確かに居るのも事実である。
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さて、スノウは両親からの指導に必死に喰らいつき、剣の『業』を1つ、盾の『業』を1つ。 また、ショートソードがブロードソードに、バックラーがメタルバックラーへと進化させる事に成功していた。 1年が経過し、初めての戦争への抽選が行なわれたが……スノウの一家は全員が選ばれずにすんだ。 これであと1年は生きられると喜ぶスノウの一家。 ……だが、その喜びは数日後に泥にまみれる事になる。
スノウたちが所属していた東の国が南の国との戦争に負けた。 そしてスノウのすんでいた街が略奪、殺戮許可地域に指定されてしまったのだ。 押し寄せる勝者である南の国の大勢の兵士達。 必死に抵抗するものは数多くいたが、女神の加護を受けた兵士には叶わず、首を飛ばされ、心臓を貫かれ次々と殺されていく。 あっという間に街は悲鳴と怒号と血にまみれることになった。
スノウの両親は全員で生き延びる事をすぐに諦め、子供のスノウだけを生かすことを決心した。 嫌がるスノウを母親が持っていた1日仮死状態にする『業』で眠らせる。 ……そして父親が母親を苦しまぬように即死させ、スノウの上に被せ、その後父親も自殺したのだ。 2人の両親が派手な装飾品などに興味を持たなかったことも幸いし、家を思い切り荒らされたが、死体の方には一瞥をくれた兵士が居た位で調べられるようなことはなかった。 ……そしてスノウはその町で唯一の生き残りになった。 まさに彼の両親のせめてもの意地と祈りが届いた結果になった。
しかし、東の国への報告書では……。
『贄となった街に3日後確認に向かったが、生存者無し、貴重品は全て強奪のあと。10日後に焼却し疫病の発生を防ぐ為の行動のため、王の許可を願う』
と記されていた。 歴史の記載の上ではスノウは既にこの世に居ない人間として扱われていた。
スノウ
武器 ブロードソード
盾 メタルバックラー
鎧 ライトアーマー
業『連斬』 『受け流し』
こっちはあっちと違って救いなんてほぼありません。
何でこんな話をなろうの神様は自分の頭に下ろしてきたんだろう?