第0話
その世界は、『テア・グラッド』と呼ばれている世界。 東西南北に1つづつ王家が存在し、領土を保っている世界。
その世界には主神となる1人の女神が存在した。 その女神は戦争が大好きで大好きで大好きで大好きで愛していると言って差し支えないほどに大好きだった。 戦争によって響き渡る怒号、砕け散っていく多数の命、心臓などを貫く剣や槍、雨のよりに降り注ぎ多くの兵の命を奪い去ってゆく矢の雨などと言った人が戦い、人が必死に生きて殺しあう光景を何よりも愛した。
だがやがて、東西南北共に戦争を生き延びて各地方に1つずつ王家が誕生した。 その東西南北の各王家が各土地を平定し、戦の声もやがて収まり、人々は平和に暮らせる日がついに訪れた。
しかし、その光景を主神である戦の女神は望まなかった。 彼女にとっての正義とは殺し、奪い、血を流す戦争が最大の正義で、平和こそが悪であったのだ。 理由は単純で「平和などつまらない」である。 人間側からしたら、ふざけるなこのやろう! と罵声を浴びせるだろう。
──だが悲しいかな、その世界の主神が彼女であったと言う事が既にその世界の悲劇であった。 国家が平定され穏やかな日々を送る各東西南北の王家の城に、突然同じ時刻に各1本ずつの黒い砂が封じられた砂時計が、玉座の前に突き立てられた。 そして女神の宣託が下されたのである。
「私はこの世界の主神、今より各4王家に命ずる、これは神の命令であり背く事は許さぬ。 お前達4国家はこれより毎年1回戦争をしてもらう、私より授けられた武器と防具のみを使い、お前達の民を戦い合わせる。 勝利を収めた国家には一定期間負けた国家への瞬間移動、ならびに殺戮、強奪、強姦などを行なってもよいものとする。 もちろん抵抗も許可するが、勝った王国の国民には私の祝福が1年続き、まず太刀打ちできぬであろう。 細かい部分は別途伝えよう、せいぜい私に血を捧げよ」
あまりに大雑把であまりに外道であまりに救いがない宣託が下された。 具体的には、
1、勝った国家は負けた国家の一部地域に瞬間移動が出来、そこでの殺戮などが許可される。
2、勝った国家には一年間女神の加護が下り、国民の強化や人口が増加しやすくなり、国力が増える。
3、負けた国家は襲ってきた別国家の人間に対して抵抗していいが、加護が無い為勝ち目はまずない。
4、武器や防具は女神より無理やり送りつけられ、戦場が開放されるとランダムで無理やり送られる。
5、戦争に送られるのは14歳から35歳までの人間、男女の区別はない。
6、もちろん死んだら当然そこまで。 蘇生の加護などは一切ない。
7、四肢を2本以上失ったものは戦場に送られる事はない。
8、あまりに負け続けた国家には、強化の加護が送られ、人口増加と成長速度強化が行なわれる。
9、逃げ出すことは許されない、戦争が始まったら戦いぬくことでしか生き残るすべはない。
10、10回戦場に降り立ち生き抜いた人間は英雄として女神の下で第2の生を送る事が許される。
補足 もし国家を抜け出し、戦わずに逃げだした臆病者には国家の支援を禁ずる。 支援した国家には女神より死の呪いが下される。
各国家は対策を練ったが、相手は神、対策など取れるはずが無かった。 泣く泣く各国家は無理やり女神の遊びにつき合わされ、終わりなど全く知れぬ殺し合いを演じなければならなかった。 そしてその殺し合い、その勝敗が付き略奪、殺戮などが容赦なく行なわれ、お互いの敵対心が大きく膨れ上がる。 その様子を見ていた女神は手を叩いて喜び、ワインを口にした。
──そんな血まみれの歴史が500年以上続いた。 そこまで長く続けば、当然国民が磨り減り、滅亡する国家が出てくるのが普通なのだが、国民が減ってくるととたんに女神の強化の加護が下され、無理やり人口や食料などの問題が解決してしまう。 逃げることも、滅びる事も許されず、戦って死ぬ事しか許されない。 10回の戦場を生き抜いた者はちらほらといたが、生き抜いたことが確定した瞬間光の中に消えていくのでどうなったのかも人々には分からなかった。
そんな腐った女神の元で1年に1回戦争を強いられる歪な世界。 そんな世界に生を受けた1人の少年、髪の毛が見事に真っ白だったため、「スノウ」と名をつけられた。 この話はその少年が13歳の誕生日を向かえたところから始まる。
何をトチ狂ったのかこんな話が浮かんでしまいました。
本当に不定期連載の超絶鈍足なので期待しないでくださいね。