8話 奏
「流!!」
目が覚めると、視界に優とミアが泣きそうな顔で俺のことを見ていた。どうやらここは俺の家らしい。
「俺は、どんくらい寝ていた?」
「二日だよ。」
クロノさんがお茶をもってきてくれる。
「・・・ヘルたちは」
「自分が一番知ってんだろ?」
親父もそこにいた。大勢の魔族と闘っていたのに、その体には傷一つない。
「流。僕たち・・・天界に帰ることになった」
ミアの言葉。理由はなんとなくわかる。
「・・・そっか」
本当は止めるべきなのだろう。でも、今の俺には何もできない。
「流。もうわかってるとは思うが一応話しておいてやる。現在の状況ってやつをな」
父さんはそう言って話しだす。今の状況を。
「まずは魔界から。魔王が戻ってきたことで、魔界の天界進行が加速しつつある。しかも。魔王・・・ヘルミラージュが指揮を取ってな」
「ヘルが・・・?」
おかしい。ヘルは双方の和解を求めていたはずだが。
「どうやら記憶が封印されているらしい」
「封印?」
「そうだ。おそらく記憶を封じることでヘルミラージュの本能を引き出し、うまく誘導しているんだろう。」
「そんな・・・」
「気持ちはわかるがまずは話を聞け。次に天界だが・・・」
「それは、私が話そう」
父さんの話を手で制し、クロノさんが話を引き継ぐ。
「・・・さっきの話、私たちが帰るという話に繋がるんだが・・・神が、魔界への攻撃を決定した。つまり・・・」
「天界と魔界の・・・全面戦争」
『そうだ』
突然聞こえてきた声に、全員が辺りを見回す。だが、誰もいない
『そんなに驚くな。今出てきてやるから』
その声がするとほぼ同時に目の前に竜巻が発生し、黒い和服を着た女が姿を現した。
「おい、女じゃねぇぞ」
「地の文に突っ込むなよ奏。奏??」
姿を現したのは高校の同級生の桜花奏 (おうかかなで)だった
「お前・・・何だ?」
父さんが低い声で奏に問いかける。って、なんて殺気だよ・・・
「何、と聞かれると困るんだがなぁ。あえて言うなら、敵じゃない、とでも言っとくか?」
わけがわからない。何を言ってるんだ?
「・・・まぁいい、敵じゃないならな」
「大切な友達を助けに来てやったんだよ」
とりあえず、父さんと奏は和解したみたいだし、まぁいいか
「さて流、お前はどうする?」
「どうするって?」
「今お前は二つの選択肢をもっている。ひとつはこの戦争にかかわって、普通の生活を捨てるか。それともこのまま決別し、優と二人で人間の生活に戻るか。」
奏の言葉に、俺は即答できなかった。確かにヘルも大切だ。でも優をこの戦いに巻き込むわけにはいかない。
「俺は・・・」
「・・・っと悪いな、流。お客さんだ。」
奏はそう言うと消えてしまった。
「そうか。お前にはわからないのか。今のお前には」
「父さん・・・?」
「お前はこれ以上かかわっちゃだめだ。今のお前には魔人の気配も、天使の気配も分からないだろう」
言われて初めて気がついた。ミアとクロノさんの気配が感じ取れない。姿は見えるのに。
「奏君は外に居る追手達と闘っているよ。数はゆうに1000を超える」
「1000・・・!?」
あまりのスケールに驚愕を隠せない。どんな力持ってんだよアイツ・・・