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2話   萌える女勇者

「・・・え??」

自宅に戻って数分後、目覚めた優に一通りの説明をしたところで、俺達は固まっていた。

隣では出てきてもらったヘルも唖然としている。

「・・・なんて??」

「だから、知ってたよ」

優のきょとんとした顔を見つつ、俺達は言葉が見つからず、ただただポカンとしていた。

「ズズズ・・・はむ」

優は湯のみのお茶を飲み、お茶請けの羊羹を美味しそうに食べている。

上谷優。俺と同い年なのだが、その外見は小さく、小学生としてやっていけそうな体躯をしている。顔も童顔で、ランドセル背負わせたら完全に小学五年生。しかも非常に整った顔立ちで、性格も人懐っこく、万人受けする可愛らしさをもっている。いわゆるロリコン大歓喜。

ってそうじゃない。

「優、知ってたってどういうことだ??」

「どうもこうも、そのまんまだよ。ヘルさんのことも、流が人知れず勇者と戦ってたことも」

「知っているのなら話は早いな。私がヘル・ミラージュだ」

「上谷優です。」

ヘルと優が握手を交わす。こうみると家に二人の美少女(片方魔族)がいるって・・・ラノベみたいだな

「それでさ、優。お前は・・・「流の家に住むよ??」・・・は??」

こいつ今なんつった??

「だから、流の家に住めば解決でしょう??」

「どうしてそうなる??」

「流は私を危険から遠ざけたいんだよね?ならむしろ、近くにいればすぐ助けられるでしょ??」

理屈は・・・通ってるのか??

「どちらにせよ断れないけど・・・」

「なら決定ね♪」

「右端とその隣は使用中だからな」

ちなみに使ってるのは俺とヘル。

「はーい」

とてとてと右から三番目の部屋を選び、「ユウ」と書かれたプレートを掛ける(ちなみに俺は「流」、ヘルは「へる」と書いてあるプレートだ)。

「さて、時間も時間だし、ご飯の支度をするかな」

「私も手伝うー」

「お、サンキュ。優」

「私はお風呂掃除でもするかの」

「ヘルさん掃除できるんだー」

「優よ、どこか私を勘違いしていないか??」

・・・優が来ただけで忙しくなったなー。

ま、それも悪くないかな。



それから数日。私は流の体を借りて、商店街に来ていた。

「うむ、やはり体はいいのぅ」

」俺の体だけどな「

基本的に入れ替わりの権限は流が持っている。

」それにしても服買うなんて・・・お前着ないだろう「

「優に着せて楽しむのだ」

」アイツは着せ替え人形じゃないぞ「

私も実体をもつことはできるのだが力を使い過ぎる上に標的にされやすいため、よほどのことがないと実体をもつことは無い。

「良いではないか、面白いだろう??」

」その割には買ったものが子供っぽいのは何でだ??アイツはあんななりでも高校生だぞ「

「あのなりだから面白いというものだ」

」あまりいじめるなよ「

「分かっておるさ」

一通り回ってしまったので、次はどこに行こうか迷っていると

「・・・お腹すいたな」

」ま、お昼だしな「

言われて時計を見ると、確かにお昼ご飯の時間だ。

「さて、今日は何を食べるかな・・・」

」二日続けてピザとかやめろよ「

「わかっておるわ。ふむ、迷った時は原点に返る。という訳でオムライスだ」

」・・・だと思った「

「あたりまえではないか。オムライスは・・・・」

瞬間、この世のものではない気配を感じる。これは・・・

「流!!」

」わかってら!!「

一瞬の意志疎通の後、私は意識を切り離し・・・俺が意識をつなぐ。

「場所は?」

」オムライス屋さん・・・「

「あそこか!!」

それならそう遠くない!!



数分後、息を切らしながらも目的の場所である『カメリア・キッチン』の前に立っていた。

「一見すると何も無いな」

」気をつけろ、中にいるぞ「

「分かってる」

」クラウソラスを出しておくか??「

「いや、大丈夫だ。椿さんに迷惑はかけたくない」

最大限に警戒しつつ、其れを表に出さないようにして、ゆっくりドアを開ける。


「美味い!!美味いぞ御主人!!」

俺の警戒を嘲笑うかのような大声で、声の主は話していた。その声の主の恰好はというと・・・


煌びやかな金髪をポニーテイルにまとめ、髪飾りは羽を模している。真っ赤なマントをたなびかせ、胸あての様なプレートを付けている。おまけに傍らには剣とバックラー。どうみても勇者です本当に(ry

「あら、流君、いらっしゃい」

ここの店長である椿さんが俺を見て微笑む。

「こんちわ。とりあえずいつものとオレンジ二つ」

「はぁい、まっててねー」

とことこキッチンの奥へ消える椿さん。あの人ほんとに年齢不詳だよなぁ。

さて、こっちの用事もすませとくか

「おい」

ってさっそくか

「何だよ」

「お前、御主人に流って呼ばれていたな」

「椿さんな」

「質問に答えろ」

うわ、上から目線。イラッ

「ああ、俺が神谷流だ。」

「・・・(じー)」

俺が名乗ると無言で見つめてくる勇者。あ、こいつ女だ。女もいたのか。勇者

「情報と違う」

「・・・??。ちなみに、情報ってのはどんなだ??」

「・・・中肉中背、黒髪、うなじで縛った長い髪」

うんうん、ここまでは一致している

「・・・中年」

「クラウソラス」

」え、今!?「

ヘルに驚かれてしまった。しかし、俺は中年じゃねぇよ。まだ高校生だ

「・・・親切心から教えてやる。俺は高校生だ。」

「だろうな、外見からして中年には見えん」

外見・・・か、自己評価的には普通なんだが、以前優に「流はカッコいいんだからおしゃれしないとダメッ!!」と言われた。かっこよくないと思うけどなぁ

「んで、用件はこれか??」

相手が言う前にさっさと自分からばらしておく。刻印を見ると女勇者は

「・・・何それ」

・・・は??

「お前、このことできたんじゃないのか??」

「私は魔王を倒すために来たんだ。そんな刺青に興味は無い」

あ、そう言うことか

「お前、新入りだろ」

びくっ。分かりやすい反応で助かる

「これも親切心から教えてやるぞ、この刻印は魔王、ヘル・ミラージュの刻印だ」

「・・・嘘。ほんとにいた、どうしよう、殺される・・・」

刻印の意味がわかったとたんおびえ出す女勇者。・・・別に悪いことはしてないのだが、女の子をビビらせるとなんか悪いことしてる気分になるよね。

「・・・落ち着け、殺したりしない。」

「・・・本当??絶対??」

涙目。何だこの萌えキャラ

「ああ、とりあえず名前を教えてくれ、話はそれからだ」

「・・・ミア・ロックス」

ミアか。

「ミア、俺達は攻撃されなきゃ反撃しない。つまり、お前が攻撃してこない限り安全だ」

「・・・うん」

こくんとうなずく。何この萌え(ry

「お待たせ~。オレンジジュース二つねー。はい、ミアちゃん」

「え??ボ・・・私は頼んでないけど??」

「流君が二つ頼んだでしょ。もう、手が早いんだから」

「椿さん、そんなつもりじゃないって」

この人はそういう話に目がない。この間なんか隣の県で起きた恋愛のもつれまで知っていたくらいだ。何処から仕入れるんだか。

「あ、そうだ、そろそろヘルが来るみたいなんで、オレンジもうひとつ」

「はーい、待っててねー」

再びキッチンへと消える椿さん。

「そうだったのか、お前、私の体を・・・」

「いや、お前のその貧相な体には興味ない」

ありていにいえば、貧乳。

可愛く言うならぺったんこ。

ヘル(実体化時)や優の方がまだましである。

「女勇者の中では一番良いスタイルなのに・・・」

女勇者ってみんなそんなん(もしくはそれ以下)なのか。大変だな、女勇者。

「そう言えば、女勇者っているんだな」

「目の前にいるだろ」

「今まで男しか見たことないもんでな」

しかもみんなジェントルマン風。腐ってやがる

「女勇者は数が少ないんだ。天界の人口が300万。そのうち半分が男勇者。女勇者はわずか100人。」

「・・・他は??」

「一般人に決まっているだろう。なにか??展開には勇者しかいないと思っていたのか??」

「勇者しか見てないしな」

「・・・基本的には人間界と一緒だ。娯楽や食べ物といった文化はこちらの方が優れている。だから天界には人間界にあこがれるものも少なくない」

ふーん、意外だな

「それで、お前は魔王を倒すという口実でここに遊びに来たと」

「ち・・・違うもん!!」

うわ、何この(ry

「・・・さて、これを聞いておこうかな」

「な・・・なんだ??」

こいつを聞かなきゃどうにも動けん。

「どうする??俺達と闘るか??やるなら全力で殺しにかかるが」

若干、というか脅しの意味も含めて、問う

「・・・うーん」

あ、悩むんだ。シリアスムードぶち壊しおった

「正直なところ」

「ん??」

「勇者ではなく、私個人の考えだぞ??。・・・別に、魔王だからって、殺す必要無いと思うんだ」

「ふむふむ」

「魔王だって生きてる。当然魔界の人たちもだ。私達と変わらない。なのになんで、天界と魔界は争っているのか、前から不思議に思ってたんだ」

「その答えは簡単じゃな」

俺の隣の空間が揺らめき、次の瞬間にはヘルが現れた。

「私が魔王、ヘル・ミラージュだ。さて、さっきの答えじゃが、相容れないからじゃよ」

「相容れない??」

「そうじゃ、たとえば火と水のように。白と黒のように、光と闇のようにの。存在するだけでお互いの存在を喰らい、掻き消し、滅ぼす。当然、共存など無理じゃ」

「・・・」

「私とて、共存を望んだことがないわけではない。しかし、ほどなくしてそれは無理だと知ったんじゃ」

「・・・どうして」

「簡単なことじゃ。お互いの世界の空気は、お互いにとって猛毒だったんじゃよ。天界の人間は魔界では生きていけない。逆もまた然り。人々の意思云々の前に、世界が相容れないのじゃ」

「・・・そんな。」

「しかし、しかしじゃ。それを覆すものが、存在したんじゃよ。」

「覆す、もの??」

「この世界、つまり人間界じゃ。お主もそうじゃが、実体を伴っているときは私も魔人じゃ。なのに私たちは向かい合い、話すことができる。それがどういうことだかわかるか?」

「つまり、この世界は・・・」

「そう、我々の架け橋になるかも知れんのじゃ」

ヘルの言葉に思うところがあったらしく、考え込むミア。確かに、ヘルの言っていることは分からないでもない。ただ、それだと・・・

「でも、そうなるとこの・・・人間界の人間はどうなるの??」

「うむ、そこが問題じゃ。人間界も、すんなりと受け入れてはくれんじゃろう。実際問題、魔界のものも天界のものも、人間を喰いものにすることはあるからのぅ」

そう、ヘルやミアは比較的理解が聞く方だが、実際そういうやつにあったことがある。誰かれ構わず殺そうとする危ない奴だった。

「じゃあ・・・」

「じゃからといって、人間を根こそぎ殺すわけにもいかん。どうしたもんか・・・」

・・・あれ??あまりにもすんなりしてたから気付かなかったけど、ミアは敵なのか??敵じゃないのか??

「なぁミア・・・」

「ミアよ。お主は勇者の中でも比較的物わかりがいい。どうじゃ、私と組まぬか」

・・・え??

「・・・良いのか??私は・・・」

「相容れぬもの、とはいえこれは三つの世界の問題じゃ。それぞれの世界のものがいたほうが、効率がいいとは思わんか」

「うーん・・・」

「・・・まて、ミアを仲間に引き入れるのはいいが、何処に住むんだよ」

「お主の家に決まっておろう」

「まじかよ」

「逆に、このような目を引く美少女を、この物騒な世の中で野宿させるというのか??」

うっ、そう言われると・・・

「流・・・ダメ、かな??」

・・・くっ、このタイミングでミアの萌えキャラ発動・・・仕方ない

「・・・いいよ、ただし、家事も担当してもらうからな」

「「イエーイ!!」」

「あっお前ら、謀ったな!!」

どうやら、天界とか魔界とかをのぞけば、こいつらはかなり相性がいいらしい

「はい、オレンジジュース追加だよー」

ジャストなタイミングで椿さんが戻ってくる。この人、狙って入ってきたのかな?

なにはともあれ、騒がしくなりそうだな・・・

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