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1話  唐突な来訪者

これは・・・夢だ。

人は、自分の頭で処理しきれないことがあると、其れをなかったことにしたがる。それは人の本能であり、「平和に暮らしたい」という無意識の感情から来るものだ。

だから、そう。この状況だって、夢だ。幻だ、幻覚だ、現だ。

・・・現って現実じゃねぇ??


「という訳で・・・何してんだお前!!」

何の変哲もない道路。だったのは少し前の話だ。

何せここは・・・ここには・・・

「どうして、優を殺した!!」

「・・・ん??何だね、君は。」

俺の怒りをまったく受け付けることなく、勇者みたいな恰好をした男は俺を見る。

「・・・質問に答えろよ」

「この女を殺した理由??そんなものは無いよ」

その答えを聞いた瞬間、俺の中で何かがうごめいた。それを抑えながら

「ふざけてんのか、テメェ・・・」

勇者野郎を睨みつける

「・・・おお、そうだ。貴様にも質問してやろう。ここら辺に神谷流かみや・りゅうって男がいると聞いたんだが・・・知っているかね??」

質問に質問で返すな、屑が。

「・・・俺だよ」

「・・・ほう?お前がそうなのか」

「ああ。お前も大方、こいつを殺しに来たんだろう??」

そう言って、右手の甲を勇者(仮)に見せる。そこにあるのは

「魔王の、刻印」

そこにあるのは、とげとげしい六芒星。魔王、ヘル・ミラージュの刻印だ。

「・・・122人目」

「ん??」

「今まで俺が、俺達が出会った天界の使者の数だよ。ひよっこから大天使まで、いろんな奴がいた。そして、そのすべてを俺達は殺してきた。」

「大天使まで・・・」

「・・・引きかえすなら今だぜ。勇者さんよ」

「・・・くくくっ」

心底見下したように笑う勇者(仮)。狂ったのか??

「2800体」

「・・あ??」

「私が殺してきた魔物の数さ。貴様の言う数とは比較にならんだろう??」

」・・・聞き捨てならんな「

「お、お目覚めか、ヘル」

俺の中から少女の声がした。話に出てきた魔王、ヘルが目覚めたらしい

」おい流よ、こいつはなんだ??「

「勇者様だ」

最初に言っておくが、ヘルは見た目は俺達とさほど変わらない。だいたい16歳くらいの外見のため、声もそれ相応に高い

」勇者??こいつが??「

「ああ」

」お主の目は節穴か??勇者ではない。少なくともひよっこよりも弱いぞ「

「え??」

じゃあ魔物を殺したって言うのは??

」たわけ、嘘っぱちだ「

「よそ見とはいい度胸だな!!」

あ、勇者(嘘)のこと存在ごと忘れてた。いつの間にかすぐ目の前に来ていた勇者(嘘)が剣を振り下ろす。





ま、当たらないけど。


「・・・!?」

驚きのあまり声を失う勇者(嘘)。

「よそ見??冗談。最初から眼中にねぇんだよ」

いつの間にか、というかヘルが構築した、紫の刀身をもつ大剣。その名は

「クラウソラス」

「間違いない・・・魔王の、八つの剣の一つ」

「さて、一発は一発、だよな??」

剣を弾き、腰だめに構える。重さと遠心力で絶大な破壊力を持つ一撃、必殺

「一閃・不知火」

―――きんっ!!―――

クラウソラスは偽勇者の体を易々と切り裂き、その遠心力をもって爆散させた。って威力高すぎんだろ・・・

「・・・これで勇者気取りなんだからなぁ・・・」

ひよっこ勇者ですらもう少しましってもんだ。

「・・・そうだ、優!!」

すっかり忘れていた。いまだに剣が胸に突き刺さっている優のもとに駆け寄り、その剣を引っこ抜く。

「こりゃ・・・ひでぇな」

その部分は完全に穴があいていて、心臓と思しき部分が完全に破壊されていた。

「ヘル、治せるか??」

」あたりまえだ。私を誰だと思っている「

「ロリババァ」

」・・・否定できん「

いや、否定しろよ。魔族と人間では寿命が圧倒的に違う。魔族的にはヘルはまだ俺達と同じくらいって事になる。ま、100歳超えてるんだけどな。

「頼むぞ」

」分かっておる。流の恩人だからの「

・・・そう、こいつには返せないほどの恩を受けてきた。優が死ねと言えば迷うことなく死ぬくらいには。

」・・・レイド「

ヘルが短く口にすると、俺の右手から淡い光が漏れる。それを傷口に当てると、みるみるうちに回復していく。

」・・・完治したぞ「

「ありがとな」

って言っても、服までは戻さないところに若干の悪意を感じるが・・・

」サービス、というやつじゃの「

「んなサービスいらねぇよ」

ヘルと会話しつつ着ていたジャンパーを脱ぎ、優に着せる。そのまま優をおぶり、自宅へと向かう

「なぁヘル」

」なんじゃ「

「こうなった以上、隠しておくわけにはいかないよな。お前のことを」

今までは俺だけを狙ってきていたから周りに被害が出なかった。しかし今回、初めて被害を出してしまった(といっても、傷は完治しているが)

」そうじゃろうな。天界もあせっているようじゃし、これからも被害がないとは限らんからのぅ「

「だよなぁ・・・」

出来れば巻き込みたくないし、知られたくない。でも、隠すのも限界がある

「わかって、くれるかなぁ・・・」

ヘル。ミラージュという魔王の存在、天界とそこに住む勇者たち、そして・・・

「この、刻印の事」

そう言って右手を見る。禍々しく、とげとげしい六芒星。いつもは包帯で隠しているのだが、今は隠す必要がないのでそのままにしている。

」いざとなったら私も姿を見せよう。その方がいくらか説得力があるじゃろう「

「そんときになったら、頼むな」

」まかせておけ、私と流は一心同体じゃ。お主のためなら何でもするわ「

・・・お前が原因なんだけどなぁ・・・とは言わず、心の中にとどめておく。どうして俺の中にヘルがいるのか、俺達もわからないのだから。

とにかく、今は家に戻って優が起きるのを待とう。そして起きたら全部話そう。そう決意しつつ、自宅への道を急いだ。

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