第一章 人物録
■ マスター(35歳)
三十五歳。
社会的にも、法的にも、完全な大人。
逃げ場はない。
それでも、まだ選択の途中にいる。
性別:男
榛色の髪。
光に触れると秋の気配を帯びる。
エメラルドの瞳。綺麗すぎて感情が読めない。
背は高め。姿勢は穏やか。
微笑みは常備。角度調整可能。
35歳が17歳と18歳に囲まれて
唐揚げを見守っている図。
倫理的には大人。
精神的には、未確定。
選ばなかった未来が、まだ残っている。
■ ファニー(18歳)
十八歳。
昨日まで未成年。今日から自己責任。
性別:女
金髪ツインテール。重力に逆らう元気。
ピンクの瞳。怒ると濃く、笑うと淡い。
小柄だが、エネルギー密度が高い。
35歳に向かって
「ちゃんと言えよ!」と叱れる年齢。
無敵と未完成が同居している。
未来は、まだ自分の味方だと思っている。
■ シエル(17歳)
十七歳。
法律上は子供。
性別:男
銀髪をひとつに結ぶ。整いすぎて冷たい。
青い瞳。観察と分析。
長身で無駄のない動き。
17歳が
35歳の情緒を冷静に診断する。
■ シロ(年齢:数百年)
年齢不詳。
時代をまたぐ白。
金の瞳で三人を見下ろす。
「ようやく対等じゃな」
三十五と十八と十七を
まとめて子供扱いできる唯一の存在。
■ クロード(42歳)
四十二歳。
完成されている、と他人は言う。
時間を味方にした男。
性別:男
漆黒の髪はオールバック。
だが一筋だけ、前髪が静かに落ちる。
わずかにこけた頬。削ぎ落とされた輪郭。
琥珀の瞳。光を飲み込む色。
長身、細身。黒のスーツ。
立っているだけで、場の温度が半度下がる。
怒鳴らない。睨まない。
ただ、見ている。
保証は軽く口にしない。
線は越えさせない。
揺れない。揺れさせる側。
ときどき視線が止まる。
選ばなかった側へ。
ネギは似合わない。断じて。
~境界堂・就寝事情~
ファニー「ねえ、みんな寝方どうなの?」
シエル「急ですね」
マスター「就寝は大事だよ」
シロ「年寄り扱いするでないぞ」
ファニー「してない!」
マスター「僕は仰向けだねぇ」
シエル「無防備ですね」
マスター「安心して寝ていると言ってほしい」
ファニー「両手ちゃんと布団の上?」
マスター「気づいたら上にあるね」
シエル「棺スタイル」
マスター「言い方」
シロ「わしは丸くなる」
ファニー「猫じゃん」
シロ「白だからな」
シエル「私は横向きです。右固定」
マスター「決まってるの?」
シエル「壁側が落ち着きます」
ファニー「防御型だ!」
シエル「合理的です」
ファニー「私は大の字!」
マスター「布団からはみ出すタイプだね」
ファニー「自由!」
(静かな間)
クロード「……仰向けだ」
全員「へぇ」
クロード「両腕は横」
シエル「微差」
ファニー「絶対シワつかない寝方してる」
マスター「ネクタイ外してる?」
クロード「当然だ」
シロ「ネギは抱かぬのか」
クロード「抱かない」
ファニー「断言!」
マスター「よかった」
シエル「何がですか」
マスター「色々と」
ファニー「というわけで!」
シエル「平和なあとがきでした」
シロ「夜は等しく訪れる」
クロード「……消灯」
マスター「はいはい」
ファニー「おやすみ!」
シエル「おやすみなさい」
シロ「良い夢を」
クロード「……」
マスター「おやすみ、観測員さん」
(静かに暗転)




