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幻想タロット〜魂の旅路〜  作者: いもたると


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6/11

法王

 彼女が帰っていったあと、私はシャワーを浴びた。

 バスタオルで体を乾かすと、再びいつもの私の部屋があった。

 彼女と会ったあとは、不思議と何の余韻も残っていなかった。


 まるで見ている最中は夢中でのめり込んで時間が経つのを忘れてしまう映画を見ているが、終わったらその筋が全く残っていない映画を見たあとのように、全く、完全にいつもの時間に戻った。


 ただ、いつも何故か無性に腹が空いていた。


 従って彼女が帰ったあとは、それが精進落としででもあるかのように、何かを腹に詰め込むことになるし、それは何でもよかった。


 私は戸棚を開けてクラッカーの箱を取り出して数枚かじった。

 冷蔵庫から牛乳を取り出してパックに直接口をつけて飲んだ。


 お湯を沸かして大盛りのカップ焼そばを作った。その間にリンゴを一つ丸かじりした。


 カップ焼そばを食べ切ってしまうと、チョコレートを一枚食べ、牛乳の残りを全て飲み干した。大体いつも食べるのはジャンクフードだった。


 さっきした行為がジャンクフード並みの価値しか持たないことに体が気付いているからかもしれない。


 腹が満たされ、ようやく落ち着きが戻ってきた。


 私は書斎用として使っている四畳半の小さな部屋に入った。部屋の真ん中には魔術用の祭壇が東向きに備え付けられている。


 赤い服を着たピエロのことが気になるのだが、今やっている魔術だけはどうしても完成させなくてはいけない。


 祭壇は私の腰の高さくらいで、左右の大きさが約六十センチメートルから七十センチメートルくらいの小さなテーブルに白い布をかけたものだ。


 中央前方に直径十センチメートルくらいの水晶が置かれ、左右に大型のキャンドルが置かれている。色は右が青で左が赤だ。


 その手前には香炉が二つ並んで置かれており、中央手前にはコルドロンと呼ばれる魔術用の小さな三つ足の釜がある。


 私は上半身裸になると、魔術用のオイルを取り出した。ベルガモットの精油にローズマリーとラズベリーをブレンドした、特別なオイルだ。


 それを三回、満月の光に照らした。前回の満月でその三回が過ぎ、今日が次の新月だった。


 従って魔術をかけるには今日を置いて他にはなかった。


 私はオイルを額と喉と胸に塗り込んだ。両手にも丹念に塗り込み、呼吸を整える。


 一定の拍動に合わせて息を吸って、息を吐く、カバラ呼吸だ。

 何回か繰り返し、自分の内側と外側が一体となるのを感じる。


 主体が客体になり、客体が主体となる。目を閉じて、身体の内側に光があるのを感じる。


 光を見つめると、その光がだんだんと大きくなる。やがて光に全身が包まれたところで、目を開ける。


 私はマッチを擦ってキャンドルに火を灯す。

 香炉に火を入れ、中のパウダー状のインセンスを燃やす。

 バニラシードの甘い香りが部屋を満たす。


 コルドロンの中には長い一本の黒い髪の毛がある。先程まで側にいた女性とは違う女性の髪の毛だ。


 私は自分の髪の毛を一本抜き、コルドロンの中に重ねて入れる。

 そこにオイルを注ぎ、二本の髪の毛をオイルで浸す。


「万物の源である神の力よ

月の支配者である女神の力よ

太陽の支配者である男神の力よ

エレメントを支配する四神たちよ

我等を祝福し給へ

慈悲深き精霊たちよ

二つの星を結び合わせ

秩序と色彩で満たし給へ

満ちていく 満ちていく 満ちていく

今ここに 汝の意志が 法とならんことを

レ・オラーム・アーメン

レ・オラーム・アーメン」


 私は祈りの言葉を唱え、小さな白いキャンドルを手に取った。

 赤いキャンドルから火をもらい、コルドロンの中に投じた。中のオイルに火がつき、炎が燃え上がる。


「繁栄と豊穣が私のもとにやってくる

創造と輝きが増加する

宇宙はそれを求めている

願うままに 思うままに

そうありますように そうありますように

そうありますように」


 私はコルドロンの中のキャンドルが燃え尽きてしまうまで、炎を見つめ続けた。

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