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「先生はずっとママと付き合っていたいんでしょ。都合のいい相手よね、ママって。結婚は求めないし、先生とのこと内緒にしておいてくれるし、どっかに連れてけとかも言わないし、甘えさせてもくれるんでしょ。付き合っているのが先生だけじゃないからよ。先生だけだったら、ママも深入りしちゃったかもしれないけどね。あの人はパパと別れる気なんてないのよ。他のボーイフレンドたちとも別れる気がないの。だから先生と付き合えてるのよ。先生だけじゃないの。他のボーイフレンドと付き合うために先生と付き合ってるの。だから先生にとって理想の相手なの。それを聞いてショックだった?ちょっとショックだったんでしょう、意味分からないわ。それって、自分の顔を鏡で見てショックを受けるのと同じことよ。でも、先生は美術部の顧問の先生と付き合って、ママとは別れるつもりでいるのよね。それって、間違ったことだわ。先生はそれが人生を先に進めることだと思ってるみたいだけど、そうじゃないのよ、人生って。私はまだ人生をそんなに経験してないからよく分かるの。逆なのよ。経験しすぎると分からないこともあるの。人生ってそういうものなのよ。私、先生とママが何をしてきたのか、全部知ってる。先生がどうしてもらえば嬉しいと思うか、みんな知ってるわ。ママに出来ることはみんな出来るの。それでいて、身体は女子高生なのよ。先生の欲しいもの、何でもしてあげるわ。セーラー服が好きよね、先生は。ウチの高校はブレザーだけど。先生が好きならそういうカッコしてあげる。本当はこういうのがしたかったんでしょ?本当は若い子が好きなんでしょう?先生は自分を押さえ付けてるのよね。生徒に欲情したらマズいことになるからね。だからママと会って、適度に性欲を発散しているのよね。本当は若い子が好きなのに、年上が好みだと自分に言い聞かせているの。先生がママを必要としているのはそのためよ。ママと別れたくないのはそのためよ。先生は自分を強く律することが出来る人だから、生徒に手を出す心配はないわ。でも、気になっちゃうのよね。どうしてもエッチな目で生徒を見てしまうのよ。だからママと刺激的な経験をいっぱいしてるの。生徒に欲情しないためにね。でも、そういうのって不健康だわ。自分の本当の欲望を押さえ付けてはダメなのよ。だから、私が呼ばれたのよね。私、急にあの絵が描きたくなって、一気に描いちゃったの。絵の具だってまだ乾いていないわよ。でも、先生が求めてるのが見えたから。やっぱりあのママの子供だからかしら。これは私の役目だっておもったの。先生を解放してあげないとってね。ねえ、抱いて、先生。私を好きにして」
娘は私を抱き寄せて、獅子の大きな背中にもたれかかった。
「期待してたんでしょ。若い男の先生が女子高に赴任してくるんだもん。誰だって期待するわよね。心のどこかでこうなることを望んでたのよ。あなたがずっとしたかったことを私にして」
私は欲情に溺れた。ずっと自分を押さえ付けていたのだ。
自分の周りにはいつも若く魅力に溢れた女の子たちがいたのに、私には楽しみを願うことさえ許されなかった。
教師は聖職なのだと、自分に言い聞かせていた。
本当は若い女の子が好きなのだ。無理に自分を作っていた。
教師になど、なるべきではなかったのかもしれない。
でも、彼女が望んでいるのだとしたら、私が今している行為も、何ら咎められるべきものではないのではなかろうか。
娘の身体は母親によく似ていた。細い指、白い二の腕、なめらかな肩、よく発達した乳房。
つるんとした膝小僧、伸びやかな脛、可愛らしい踵。くすぐったそうな腋の下、色素の薄い乳首、ぷっくりとした下唇。
自分がよく知っている女の身体がそこにあった。
私はそれが母親であることに気付いた。いつの間にか、私は自分の部屋のベッドの上で、年上のガールフレンドの身体を抱いていた。
彼女は目を閉じて、恍惚の表情を浮かべ、愛撫を心行くまで味わっていたが、私が手を止めると、目を開けてこちらを見た。
「どうしちゃったの、今日は。何だか、ずっと年上の人に抱かれているみたい。処女に戻って、十歳くらい年上の、理想の人に優しくされているような、そんな気になったわ。あなたの方が若いのだから、もっと激しくしていいのよ」
「君はここにいたのか。だから電話が繋がらなかったんだね」
「電話?私に電話したの?駄目よ。電話は私からするわ」
「君の娘がいなくなったって、君から電話してきたんだ。僕の携帯にかけてきた」
「私はあなたにかけるときは、いつも自宅にかけるわ。だって、あなたと外で会うことなんかないもの。私はここであなたに会えればそれでいいんだから。外で会うことなんかない」
「知ってるよ。外では他のボーイフレンドと会っている」




