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幻想タロット〜魂の旅路〜  作者: いもたると


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運命の輪

 電話が繋がると、私はとにかく緊急なんだ、だから少し後に詳しい話はまた携帯から電話するから繋がるようにしていて欲しいと捲し立てた。


 幸いなことに、彼女は学校に来ていて、彼女のメインオフィスである美術室で電話を取った。


 それなら直接話をした方がいいと、私は美術室に行くことにした。

 彼女は、来週の授業の準備のために来ていた。


 明日のギャラリーはどうするのだろう?と思ったが、そちらはカフェのスタッフの人たちがやってくれるからいいのだという。


「ごめん、急にびっくりさせたかもしれないけど、明日の展覧会のこととも関係があるんだ。君のカルチャースクールのスクール生徒で、ここの学校の生徒の親御さんがいるんだけど」


 私は、年上のガールフレンドとの関係がバレないように注意して彼女に話をした。

 元々の知り合いだったということにして話を進めた。


 幸いにして、彼女と私は今まで会話らしい会話はなかったものだから、過去のことはいくらでも作ることが出来る。


 彼女が私と年上のガールフレンドとの関係性を詮索したかどうかは分からないけど、どうやら話の大筋は理解してくれたらしい。


「そうね、美術部の子よね。あの人の子供だったのね。そう言われれば何となく似た雰囲気があるわ。あの子、見た目は派手だけど、部活では真面目だわ。本格的に絵を勉強してみたいなんてことも言っていたから、もし、ものになりそうだったら私が教えてもらった美大の教授に相談してみようかとも思っていたの。お母さんも結構いい絵を描くし。そうね、あの子が居そうなところに心当たりはないけど、一回カフェに寄ってみない?」


「それは、君のギャラリーの?」


「うん、そう。あそこのママはこの近辺のことに詳しいし、あの子のお母さんは時々、カフェの方にも来てたみたいだから。普通にお客さんとしてね。ただ、それが、平日の午後に若い男性と来てたみたいで。なんかスポーツマンタイプの」


「テニスクラブに通ってるとかいう話を聞いたことがある」


「じゃあ、そこのインストラクターか誰かかしら。旦那さんは海外だって言ってたし」


 年上のガールフレンドに私以外にも男がいたということはショックだった。


 もちろん、彼女に貞淑性などは一欠片も期待していないし、私にしてみても間男であるし、彼女が奔放であればこそ、私にとってもありがたいというところは真実なのだが、恋人を取られたような、何とも言えない衝撃だった。


「あの子が家に帰ってこないのも、そういうことを知っているからなのかもしれない」


 自分で言っておいて、何を言っているのだろうと思った。


 もしかしたら、娘は私と母親との関係を知っていて、そのことが家出に影響したのかもしれない。


 原因はこの私かもしれないのだ。


 だとしたら、今度、私と会ったときにどんな反応を示すだろう。


 しかも、更に滑稽なのは、私は不倫相手の浮気にショックを受けながら、それを詰る素ぶりを、この世で最も虜になってしまっている人を相手にしているのだ。


 私には下心というものがいくつもあるのだろうか?

 そして、目の前の好きな人を手に入れるのに、魔法の力に頼っているのだ。


「とにかく、行ってみましょう。僕がタクシーを呼びます」


 あくまで、生徒が心配だという振りをした。

 その実、私の心は、やはりこの美しくて若い美術の先生を手に入れたがっている。


 しかも、年上のガールフレンドの娘がきっかけでこの人と接点が出来たことに喜んでもいた。


 私はタクシーが来るのを待ちながら、先生と二人で後部座席に座ることを想像して気持ちが落ち着かなくなっていた。


 程なくしてタクシーがやって来て、私たち二人を目的地へと連れていった。


 十分ほどのドライブだった。私は彼女の爽やかな香水の匂いを間近に感じながら、この時間が長く続けばいいのに、ということばかりを考えていた。


 大した会話もしないまま、私たちは車を降りた。

 タクシー代をカードで払い、カフェへと急ぐ。


 アーチ状の門にバラが絡み合い、秋咲きの花を見事に咲かせている。

 門を潜って庭の中に入ると、中からは外の景色が見えないくらいに無数の植物に包まれる感じがある。


 もっと暖かい時期だったら、それぞれに花が咲き誇ってさぞかし綺麗だろう。


 店の外に釜があるのか、ピザを焼いた香ばしい香りが漂ってくる。


 先生と本当のデートでここに来たら楽しいだろうなと、何度目かの不謹慎な考えを催す。


 庭がそのまま店の中に続いていて、私たちはオープンテラスを通って奥へと入っていった。


 中は意外と広い。今、他のお客さんはいないようだ。


「あら、先生。今日はお見えになられないかと思いましたわ」


 奥から店の人が出て来て先生に挨拶をする。


 五十代前半と思しき中年の、ぽっちゃりとした小柄な女性が出て来た。


 エプロンを付け、半袖のシャツから覗く腕は、顔と同じ色に逞しく日焼けしている。きっと庭仕事をするせいだろう。


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