主婦・冬美の「あと30秒」
「たぶん本気だから。これで邪魔者はいなくなるわ」
『オレの方もうまいことやるよ。もう少し待っててな』
シャンパンが泡立つグラスを片手に、スマートフォンのスピーカー通話で男性と通話をしている冬美。
「もうすぐ一緒になれるのね……」
『娘はどうすんだ。あんなのいらねぇぞ』
冬美は、くすりと笑みを浮かべた。
「私もいらないわ、あんな子。施設にでも預けちゃいましょ」
『あぁ、それがいいな』
憎々しげな表情を浮かべる冬美。
「さっきも母親である私に向かって生意気な口を……ひっぱたいてやったわよ!」
『おいおい、児童虐待とかで訴えられちまうぞ』
「大丈夫よ。さっき家飛び出していったけどね」
『じゃあ、今から会いに行こうかな?』
冬美は頬を赤く染めた。
「今日は我慢して……ね?……また例の日に可愛がってくれる?」
『あぁ、我慢した分、たっぷりと……な』
壁掛け時計に目をやる冬美。
「もうすぐ……もうすぐだわ……もうすぐあなたと……」
『愛してるよ、冬美』
「私も愛してる。愛してるわ、俊也さん……」
冬美はとろけるような表情で、通話中のスマートフォンを見つめた。