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サラリーマン・晴彦の「あと3分」
晴彦には三分以内にやらなければならないことがあった。
カタカタカタカタカタ タンッ カタカタ タタンッ……
深夜、戸神市駅の高架ホーム。
ホームにたったひとりでいる晴彦は、ベンチに座ってノートパソコンのキーボードを叩いていた。四十代のオジサンが駅のホームで仕事している姿には、何とも言えない哀愁が漂っている。
「メールを送るのに気を取られて、例の案件の引き継ぎファイルを作るのを忘れるとは……」
ふとホームの時計に目を向けると、時間は午前〇時半を回っていた。
「終電が来るまで、あと三分……何とか終電が来るまでに間に合わせないと……」
晴彦は焦った様子で改めてノートパソコンに向かい、キーボードを叩き続けた。