第四話
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ある時、齢十七の女人を集めるという通告が出た。
そのような通告、今の今まで出た事はなかった。
ある年齢を限定とした集まりは、対象である女性達の心を大変躍らせた。
もちろん、身分を証明することのできる者もいれば、できない者もいる。
むしろ、後者の方が多いくらいだ。
それでも、自称でいい。
偽ったところで厳密に見分けるのは、この世界では難しい事なのだ。
明らかに歳が若い者、逆に指定した年齢を明らかに超えていそうな者のみ、外す。
それ以外には、その列に並ぶ事を了承した。
今回の提起者にとって、そこは肝心ではなかった。
その年齢は、あくまで指標。
範囲は少し広いくらいでも良いとさえ思っていた。
その中で、更にある者を見定める為の目的があったのだから。
しかし、集った者達は中へ入るまで、そこで何が行われているのかわからない。
数人程度で呼ばれるのではなく、確実に一人ずつ中へと入らせられるのだ。
通常ならば、ちょっと怖い。
それでも列に並ぶ女性達は、ある期待を胸に抱えていた。
彼女らの期待の理由は、その提起者にあった。
その人物とは、この国の最高権力者である皇帝殿である。
いや、厳密には次期皇帝である。
その名も ’彩楼繁’。
この国の最高権力者には、三つの文字が与えられるのだ。
しかしその姿は、未だ上級の者達にしか現した事がなかった。
それがこの機会にて、拝めるかもしれない。
期待は期待を超えて、段々と膨らんでいった。
しかし、そう言ってもまだ次期皇帝だ。
この国には八年前、前皇帝が突如死去してから、その地位は空白のままであった。
その理由は一つ。
大勢の子供達のうち、男子はたった彩楼繁、たった一名であったのだ。
つまり後を継ぐ者は、彼しかいなかった。
そして、八年前の彼はまだ齢十一であり、少年であった。
よって今日に至った今でも、彼自身この世界における年齢が規定に満たない為、まだその地位には就いていなかったのだ。
しかし、その ’次期’ という肩書きも、もうすぐ終わりの時を迎える。
今年、彼は齢十九になる。
そう皇帝へと即位するのだ。
そして、このタイミングで例の通告だ。
誰しもが、そう頭をよぎるだろう。
通告書には、その具体的理由の記載はなけれども、大体の予想がついたのだ。
『妃候補よ』
誰かがそう口走った。
瞬く間にその言葉には真実味が溢れ、王宮中、都中、国中へと広がっていった。
言葉とは怖いものである。
確かに、その時待たずして、既に入内していた者達はいた。
妃候補者としてだ。
しかし、彼女らは楼繁皇太子の知らないところで、お偉いさん方が勝手にこの地へと足を踏み入れさせていただけの者達。
彼女達からしたら、とてもつまらない時を過ごしていただろう。
何故なら、いくら即位前であったとしても、お手付きの場は幾度となくあったはずだ。
それなのにも関わらず、誰一人として通いがあった者もいなければ、指一本、いや、視線すらあてがわれた者はいなかったのだから。
不能なのか、対象が女性ではないのか。
様々な憶測が飛び交う中、楼繁皇太子の謎は深まるばかりであった。
もちろん、長年この場所で働く翠蘭も、彼の噂くらいは耳にした事はあった。
祭事の際、不在である皇帝の代わりにその務めを果たしていた。
しかし、その姿は深いベールに包まれ、顔などは一切表へと出す事はなかった。
翠蘭にとっては、どれもこれもどうでも良い情報だったが為に、その存在は頭の片隅の更に角の奥へと追いやられていた。
もちろん、今回のこの知らせも、その耳に入ることはなかった。
朝方から、大広場へと続く長い列が出来ていたのは知っていた。
それがこれ程までに長くなるなんて、思ってもみなかった。
その入り口の先が、食堂ではないのは確かだ。
その事にホッとした翠蘭は、腹を満たす為に列を素通りし、食堂へと卒なく歩みを進めていった。
そして、例の如く、燈鸞の手ほどきを軽くしてもらうために、彼の所へと足を運んでいた。
すると、遠くに数名の声が聞こえた。
(あれ?)
そう思いながら、燈鸞へと声をかける。
既に燈鸞の稽古は始まっていたのだ。
「今日は遅かったな」
今日も真っ白な歯が反射する。
「うん… ちょっとね。それよりその達は?」
「あぁ、ここ最近少し稽古をつけて欲しいということでな… まぁお前は気にせずいつも通… 」
「弟弟子ってこと? そうよね? ね?」
「ん? あ、いや… そういうことではなく… 」
しかし、嬉しそうなその顔は、何も聞こえなかった。
気も大きくなっていた。
その足は、ずんずんと容赦なく、彼らへと歩みを進めた。
よって、一介のそれも身分のない宮女が、よりによって師匠が敬語を使う彼らに肩組みをし始めたのだ。
がしりと強い力は、その手を止めるのには容易だった。
「よ、ろ、し、くぅ」
「あ! おいっ! そのおかっ… 」
しかし、燈鸞のその声に、手を差し伸べ制する動作が見えた。
「ほんの数日ばかりですが、師匠にはお世話になっております。以後、お見知り置きを… ’兄’ 様」
彼はそう言うと、嫌味を込めて翠蘭にそう言った。
しかし、その意図は彼女には届かなかった。
嬉しさのあまり、稽古をすぐに始める翠蘭。
(それにしても数日って、どういうことかしら?)
その言葉通り、彼らとはその日以来会う事はなかった。
翠蘭は心の底から残念がっていたが、燈鸞の内心は、心底安心していた。
そして、新たな弟子を入れろと、せがまれる事となるのである。
最後まで読んで頂きありがとうございます。
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