表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/26

最終話

たくさんの作品から見て下さり、ありがとうございます!

本日2回目の投稿、そして最終話になります。

最後まで読んで頂けると、嬉しいです。


「今から、ここでその儀を執り行う」


(はい?)


唐突かつ、計画的に始まったその合図に、翠蘭は目を細める。


すると、いつの間にか増えていた従者達が、次々と何かを運び始めた。


黒龍はそれでも微動だにしない。

それより、どこか安堵したようにも感じられた。

しかし、翠蘭の心は更に乱れる。


「え!? だって誕辰の日までは、あと数日はあるはずですよね!?」


翠蘭の飛び抜けたその言葉に、全員の視線が一点集中した。

視線という名の集中攻撃だ。

そのうちの一つ、燈鸞の視線が言葉と共に突き刺さる。


「… お前、本気か? いや、正気か?」


「え? な、何が… 」


「まさか… 本当にここまでだったとは… 」


「んん? 一体何をそこまで怒って… 」


「次期皇帝陛下の誕辰を覚えてない奴が、この世にいたとは… 」


「……… え?」


ここにいる。


(だ、だってこの国には、誕生日を祝う風習が無いじゃない!)


「ま、まさかあれも嘘だったの!?」


再び、両手で頭を抱える翠蘭。


しかしそんな中、ルオは何故か嬉しそうに微笑んでいた。


「そういう事だ。これからはずっと一緒だな。正妃として、俺の伴侶として」


(んなっ… なんか違ーーう!)


翠蘭は一世一代の勇気を振り絞って、立ち上がった。


「まっ、待って下さい! 何故、国として大切な人が、あなた様にとって大切みたいな存在に… まるで本当に正妃みたいな…… ん? え? 嘘でしょ… これは本当?」


「本当」


その手と心臓は、再び強く握られた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


こうして数刻後。


螺聖殿・龍神の間にて、守護神である龍神王に見守られながら、皇帝即位の儀が執り行われた。


新皇帝、彩楼繁の誕生である。


そして、この王宮から、そしてその愛情から一生逃げられないという運命を背負う事になった翠蘭。

彼女の脱走計画は、永遠に幕を閉じたのである。


しかし自由というあの言葉は、真実であった。




あれから。

川に落ちた少年を助けるべく、翠蘭達が川を超えた事はお咎めなしとなった。


更には、医務室にも足を運ぶ事もなくなっていた。

いや、たまにこっそり行っていた。

居心地が良い場所からは、中々抜けられない。

周りが一目置くような視線を浴びながら、悶々と考える翠蘭。


(はっ! そうか… 睦雀様は、他言無用させない為には、都合が良い… ま、まさか… その為だけに、舌を切られたとか… ない? ないわよね! さすがに… )


そのわかりやすい表情に、燈鸞が応えを出す。


「一応言っておくが、睦雀殿は病気の為、舌を切り落とさなければならなかった。だから決しておま… 翠蘭様の思うような事はございません」


翠蘭付きとなった燈鸞。

これもおそらく、気兼ねない生活を送る為のルオの配慮であろう。


「あ… 病気か。それにしてもその話し方、本当慣れないわね。元に戻せないの?」


「無理です」


「あーやだなぁー息詰まるなー」


「そういう風には、お見受けできませんが?」


意思とは反し、正妃となってしまった翠蘭は、慣れない日々を過ごしていた。

もちろんの事、夜な夜な脱走しようと、何度も考えた事もあった。

現在では、厳重たる護衛が翠蘭の動向を見張っ… いや、見守っていた。

となればその機会も減り、益々気力も失われていくのが普通である。


しかし翠蘭は諦めなかった。

たまに螺聖殿へと赴き、龍神王である黒龍へと愚痴を溢しに行く。

あわよくば、願いを叶えてくれるのではないかという期待を込めて。


(また来た)


黒龍は、内心そう思っているに違いない。

燈鸞はそう思いながら、隠そうともしない言葉を全て耳に入れていた。

それをそのまま彩皇帝へと報告する。


翠蘭はそれでもルオによる、自由の補償という希望の言葉を物にすべく、日々奮闘するのであった。


そして何より、彩楼繁新皇帝の愛情が鉛のように重くのしかかる。


龍姫である彼女の存在は、瞬く間に国中へと広がった。

そんな翠蘭はそれでも自由を求め生きる。

そして乗り越える力を手に入れたのだ。

これが何に繋がるのか、未だにわかってはいない。


その紛い物のまじないは、信じる者には真実になるのかもしれない。


それは嘘から始まり、本当のように見せる力なのか。

しかし、それは翠蘭だけではなかった。


「そういえば、何故私が龍姫だとわかったのですか?」


「あの時のまじないだ」


その愛おしい体を寄せながら、楼繁は応える。


「え? あの玉紐のまじないが?」


「あぁそうだ」


「いや、でもあれは… 」


(単なるあやとりマジックなので… )


「あの瞬間、俺のもう一つの玉が疼いた」


「玉が… ねぇ」


偶然か必然か。

それは誰にもわからない。


それから、みるみるうちに国は栄えた。

栄えに栄え、周りとの交友も並々と溢れていった。


新皇帝が誕生してから四年の月日が流れ、翠蘭はここにいた。

小さな小さな隠れ家。

片隅に置かれた池のほとりは、あの頃と変わらない。

二人の愛から産まれた小さき姫が、蝶々と小さき黒龍を追いかける光景以外は。



                    終


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


最後まで読んで頂きありがとうございます。

如何だったでしょうか?

突っ走って書いてしまっているので、文章が乱れていることもあるかと思います。

何かお気づきの点があれば、いつでもメッセージお待ちしております。


また、心ばかりの評価などして頂けると、励みになります。何卒よろしくお願いします。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ