第二十五話
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数々と並べられるルオの言葉。
翠蘭は考えを巡らせ、一点集中していた。
(そもそも守護神である龍神王を使って、脱走計画など図るっておかしくない? いくら自身の保身のためとはいえ… この国の守護神よ? 国が傾く可能性だって… )
翠蘭は悶々と考えた。
広く数本にも分かれていた糸が集まり始める。
(この場から遠ざけたのは不可抗力だったとして、対になる玉を渡した意味… そして、私を巻き込んで探させた… その目的は… )
「翠蘭?」
ルオの呼ぶ声すらも、届いていなかった。
「もしかして… 私が居ないと探せなかったから? 守護神と知りながら、幼き私に玉を渡したのは… 私が… 」
声から漏れるその思考。
翠蘭は、再び壁一面の絵を見回した。
そして、一つの絵が目に飛び込む。
遂に思考の糸は、ある一つの太い紐へとなった。
(うなじについたアザ。それはまさに竜のような… 形?)
「私がその龍姫… ?」
その言葉に、今度は微動だにしなくなったルオ。
その顔は、いつも以上に真剣で美しかった。
「え… いや… はは、ま、まさかですよ… ね? ねぇ? ルオ様? 私が… 龍… 姫だなんてそんな… 」
その真剣な姿は、ゆっくりと翠蘭の方へと近づく。
そして、片方の手を掬い上げると、真実を話し始めた。
「そのまさかだ翠蘭。お前は龍姫。そして俺はお前の力を使って、黒龍を取り戻した。この国を守るためにな」
「え…… じゃ、じゃあ… 脱走したいって言うのは… 」
「嘘だ」
その言葉に今までの言葉達が、走馬灯のように蘇る。
「そんな… 全部… 全部全部嘘だったのですか!? あれもこれもっ… は! まさか、黒龍が少年から首紐を奪った目的も、ここに向かっているという事も全て知ってて… 」
「そういう事だ」
真剣な表情から一変し、ルオはにこりと満面な笑みを飛ばした。
「んな、な、なっ…」
真実を受け入れられない感情とその表情に、混乱する翠蘭。
後退りながらも、片手はしっかりと掴まれたままだ。
(なんてこったい!! こんなのありなの!? じゃあ、わ、私の脱走計画はもろバレ… あの時、本当に終わりを遂げてたって事!?)
翠蘭は膝から崩れ落ちる事を選択した。
そのまま、両手で顔を覆いながら地面に伏せる。
離れない片手を、そのまま行きずりにする。
その手の先にある影が、覆い被さっていく。
しかし、絶望に落とされた翠蘭は、ぶつぶつと思いの丈を吐き出した。
「一生… 一生この檻の中… 」
気付けばその影は、翠蘭の耳元まで来ていた。
「そういう事だ」
その陰湿的な言葉が、耳の奥へと絡みつく。
ゆっくりと顔を上げる翠蘭の目には、涙が浮かんでいた。
そして、その視線の先には、にんまりと笑うルオが歪んで見える。
その言葉に再び、がっくりと首を折る翠蘭。
「しかし、自由は与えよう」
思いがけないその言葉に、翠蘭の耳はぴくりと動いた。
「… ん? 自由? それは何処までの自由ですか?」
「翠蘭が思うがままの自由だ」
「… 本当に?」
「本当に」
「本当の本当に?」
「うーん… 少しばかり俺の手中に?」
「え!? どっちですか!?」
はっきりとしないその言葉に、見かねた燈鸞が口を挟んだ。
「翠蘭… あの黒聖殿に、女人を住まわせる意味が分かるか? それも未婚の若き女人を」
「え? あ、だってあれは脱走計画の為に協力を… を?」
自ら発した言葉に、途中から気が付く翠蘭。
その脱走計画自体が、元からなかったと今知ったばかりだった。
「私を黒龍探しの手段…… ん?」
整理ができていないまま言葉を出す翠蘭に、燈鸞は説明を繰り出していく。
「黒聖殿は皇帝の住まいでもあるが、後宮の最上級の宮でもある。つまりその意図は… 」
「その意図は?」
首を傾げ続ける翠蘭に、燈鸞は言葉を重ねる。
「はぁ… つまりルオ様にとって、彩楼繁様にとって、大切なお方だからだ。翠蘭、お前がな」
「へぇ……… え? わっ私がぁ!?」
今度は驚きのあまり、尻もちを付く。
(忙しいな)
それでも、その手を離さない。
「てことは、あの怪しい齢十七の集いも、本当に正妃探しだったって事に繋がる!?」
(あぁ頭が混乱してきた)
「そういう事だ」
(この人、さっきからそれしか言っていないわよね)
立ち上がらせるように、ゆっくりと翠蘭の手を持ち上げるルオ。
「これで安寧は保たれた。下り龍も見れた事だしな」
宣言を放つように、ルオは言葉を発した。
(え? なになに? 何、この一件落着ムードは… 良くない! 良くないわ! ここは一発… )
「ふ、ふふ… ふふふふふふふふ」
翠蘭はその俯いた顔をゆっくりと上げながら、不気味に笑うように努めた。
「そう… 其方らが言うように、この私が龍姫だぁ!」
勢いよく解き放ったその言葉は、すぐに瞬殺された。
「翠蘭、言ったであろう? 皇帝が在籍している間は、龍姫の効力は意味ないと」
広げ伸ばした手が、虚しく下がる。
(チッ、そうだった)
「えぇわかっております。でもそれまでに何とか… 」
その悪あがきの言葉に、更に折れ曲がる事になる首。
「明日、あーいや… あと数刻で、新皇帝が誕生するのにか?」
(ん? 待って…… どゆこと? 話が見えな… )
「今から、ここでその儀を執り行う」
(はい?)
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