第二十三話
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こうして、急ぎ帰国する事になった翠蘭達。
一気にあたりは騒騒しくなる。
ルオは燈鸞含めた数名の側近を従えて、翠蘭と共に早馬に跨った。
(ん? にしては、既に二人乗り用の馬が用意されてた? 他にも… まるですぐに行けるかのような… 用心には用心をってことかしら?)
そう思いながら、翠蘭は馬と後ろを支えるルオに身を任せた。
(少し揺れる? これが?)
不満はあったものの、もちろん文句など口が裂けても言えない。
早馬とは言え、馬車で数日かかる場所だ。
それでも、一晩は駆け抜けた。
ルオはというと、黒龍の発見でアドレナリン放出状態だった。
夜がすっかり開けた時には、既に目の前の門を潜っていたのだ。
何事かと動揺する者、騒ぎ立てる者、怯える者。
目の前を猛スピードで駆け抜ける姿に、驚きを露わにしていた。
このような行為は、本来ならばあまりしてはいけない。
秩序や危険が、脅かされる事態に発展するからだ。
しかし、都を駆け抜ける理由がそこにはあった。
民達の不安は後に取り除かれる事になるのだが、それまでは申し訳ず一気に都を駆け抜けた。
王宮内へと入ると、北奥に位置する螺聖殿へと急ぎ向かう。
伝達用の早馬と、ほぼ同じくらいに国へと入った為、仕える者達でさえ、状況が読み込めずに驚く者達が大勢いた。
それでもルオは、とにかく急いだのだ。
やっと辿り着いた螺聖殿は、以前と変わらない様子だった。
(風が強く吹いているのは、黒龍が通ったのと関係があるのだろうか?)
ルオはそう思いながら、休む事なくその足を進める。
螺聖殿から出て来た従者が、慌てた様子でルオへと向かって来る。
強風の為、フードが後ろへと降り、姿が露わになっていた。
翠蘭にも今はその顔が、はっきりとわかる。
(この間のご老… え?)
「睦雀! 中に… いるのか!?」
ルオの言葉に、更に確信へと変わる。
「え!? 睦雀様!?」
そう、目の前にいるその老人。
睦雀もルオの近き従者の一人だったのだ。
彼は医務室を主な職務として、更には螺聖殿の管理も担っていた。
その思いがけない登場に、翠蘭は混乱した。
「え? え? 一体どう… 」
「その話は後だ! 睦雀! いるんだな? 中に… 黒龍が」
真剣な眼差しのルオに対し、睦雀は大きく頷いた。
「… っ翠蘭! 急ぐぞ!」
「え!? あ、はいぃぃー」
体ごと腕が螺聖殿へと引っ張られていたが、視線だけは、睦雀を向いていた。
(どゆことーーーー!)
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こうして、その足で黒殿へと入り、階段を駆け降りた翠蘭達。
息を切らしながら、それでも深く続く階段を降りる。
「はぁはぁはぁ… んっ… はぁあ… 」
(待って… 確かに… 確かによ。大丈夫とは言ったけども… 水泳、馬走、脚走、そして階段走! これじゃあまるで、トライアスロン!)
そう思いながら、クタクタの体を駆使させていた。
(でも… こんな顔されちゃ)
そう思いながら、高揚感溢れるルオの横顔を見る翠蘭。
(それにしても長過ぎるわ。真っ暗だし、終わりの見えない地獄に降りてるみたい)
そして、やっとの思いで、最下層らしき場所が目に入った。
そこには、見たことのない光が灯っていた。
水色の淡く澄んだ光。
(綺麗… )
ここに翠蘭の恐怖心は、一切なかった。
最後の段を降りると、何故か身体共々疲れがなくなっていたのだ。
あれほど、辛いと思ったトライアスロン。
そして、目の前にはルオが求めていた姿があった。
「これは… 」
黒々とした龍が何かを護るようにして、とぐろを巻いていた。
じっとこちらを見ている。
その瞳は、水色に煌々と光っていた。
よく見ると、その中心にあるのは、台座に置かれた玉だった。
連れ去られた玉だ。
ゆっくりと歩みを進めるルオ。
「え!? ルオ様っ… 」
刺激しない程度の小さな声で、そう叫ぶ翠蘭。
『大丈夫だ』
ルオはそう示す様に、口元に人差し指を当てた。
翠蘭もその言葉を信じ、後に続く様にして黒龍の方へと近づく。
近くで見ると、台座に置かれた玉は、更に大きく見えた。
(あれって… 私の首紐の玉?… にしては、随分と大きい様に感じるけど… ん? いやいやいや! やっぱりかなりでかいわ!)
翠蘭は、生唾をごくりと飲み込んだ。
これから何が起こるのであろうか。
それ以上、その足を動かす事ができなかった。
ただただ状況を見守った。
翠蘭だけではない。
その場にいたほとんどの者がそうだった。
ルオ一人除いては。
微動だにしない黒龍の目の前に、ルオはゆっくりとその膝を折り、祈りを捧げた。
最後まで読んで頂きありがとうございます。
突っ走って書いてしまっているので、文章が乱れていることもあるかと思います。
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