第二十二話
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翠蘭は頭頂部に受けた、その痛みを感じながらも尋ねる。
「あのぅ、溺れた少年は無事なのですか?」
「あぁ少年なら無事だ。あの後少し休ませたら、大衆の民達に連れて行かれた。事情を聞いた民が哀れに思ったのであろう。面倒見の良い民だ」
「はぁ良かったぁ… その事情って何なのですか?」
「あの少年は、廃村の出身だという。身寄りもなく、その日その日を生きていたという。そこにお人好しが通りかかり… 思惑通りに、金になりそうなものを盗んだという事だ」
(お人好し… )
「それと黒龍だが、あの後そのまま首紐を持って、何処かに行ってしまった。あの竜を追いかけるのは、かなりの困難だ。従者に追わせているが、少年を振り落とした後、猛スピードで北東の方角へと消えたらしい」
「なるほど… あの、少し整理してもよろしいでしょうか?」
「あぁそうだな」
「今日… あ、いやもう昨日ですね。昼間に私達は文献へと載っている、黒龍の巣窟へと行こうとしました。その途中、小さな黒龍が私達の馬車と並走しているのを見つけ、小黒龍を追ったところ廃村へと辿り着いた。
そこで、ある少年が木の上で、助けを求めているのを発見し… 」
「首紐を盗まれた」
ルオが言いにくい部分を補填した。
「はい… そして、少年を追った先に、村を廃村へと追いやった大きな穴を見つけ、そこから巨大な黒龍が出てきました。そしてその黒龍は… 」
その言葉を皮切りに、翠蘭は考え込むように言葉が小さくなっていった。
「… あの少年を連れ去るようにして前脚に… 引っ掛けた? それから少年を… 振り払うようにして… 地上へと落とした?」
その首は、段々と左へ折れ曲がっていく。
そして、遂に言葉を出さなくなる翠蘭。
「…… 」
「ん? どうした?」
「あ、いえ、少しばかり引っ掛かっているのですが、ひょっとしたら黒龍は、少年の持っていた… いや、元はと言えば私の首紐を狙っていたのではないでしょうか?」
「いや、元の元はと言えば、俺のだが… その可能性はあるな」
(何故なら、あれは元の元々は… )
「だってあの時、絶対振り落としましたよね?」
(無視か… )
「そう見えたな… 」
「やっぱり! そして、黒龍はそのまま北西の方角へと、飛んで行ったという事ですね!」
「もし… 翠蘭の言うように、本当にその首紐が狙いだったとしたら、その目的は一体何だと思う?」
「それはわかりませんが」
「そうか… それにしても、黒龍は一体何処に向かったのだろうか? あのような大きな体だ、民達が混乱に陥るだろう」
「ふっ… それに関しては、心配に及びませんよ? 確かに大混乱にはなりそうですが」
(そのどこが大丈夫なんだ?)
「行き先はおそらく… 黒聖国の中心部」
「我が宮か… ?」
「えぇ、だってあの竜のお家は、そこにあるじゃないですか?」
「… まさか、螺聖殿か?」
「そうです」
「地下にあるのですよね? 彼の住処の痕跡が」
「……… 」
翠蘭のその言葉に、一瞬言葉を抑えるルオ。
(ふふ、あら? 図星かしら?)
「私、思ったんです。あんな場所に、何故あのように長い螺旋階段があるのか。そして、先程の黒龍が天へと突き昇ったのを見て思いました。まるであの、螺旋階段のようだと」
「あの階段が、黒龍の通路だと言うのか?」
「えぇ、まさにそうかと。黒龍の為の通り道。 そしてお家がそこにあるのではと」
淡々と応える翠蘭だったが、いつから黒龍が不在となったのかだけは、わからないでいた。
「確かに、あの遥か下に位置する場所に大きな空間がある。まるで神殿のように、何かが祀られているのかと… 」
「その場所は、かなり深そうですよね。そうですか… ルオ様はやはり最下方まで、行った事があったんですね」
ニヤリと笑う翠蘭。
(もうそこから先は、私の踏み入る領域ではないでしょうに。ここで解放して頂きたい)
当然の事ながら、翠蘭の思うようにはいかないのが現実であった。
「しかし、玉の台座はあろうとも、肝心な玉がない…… そうか! 先程の攫われた首紐に付いている玉か!」
近く待機していた燈鸞は、静かにその経緯を見守っていた。
「でもその玉は、結構小さいですよね? 私が気が付かない程に… 実際のところ、その玉座との大きさは、伴っているのでしょうか?」
「さぁ… どうだろうか」
(ん?)
「そして狙うのならば、ルオ様の方を普通狙うのでは? そちらの方が、はっきりと大きいですし」
「…… あぁ、うん、そうだな」
「?」
(何だろう… さっきからこの違和感は… まぁルオもわからない事だらけって事か。それにしても ’玉’ の他に、何か良い言い方ないのかしら?)
何故か、一瞬気まずい雰囲気になってしまった二人だった。
「とりあえず、急ぎ戻る必要があるな」
そう言うと、ルオは勢いよく立った。
そして、さぁと言わんばかりに手を差し伸べてくる。
(え?)
「体調が戻っていないのは重々承知だ! しかし時間がない!」
(えっと… いや、それじゃあまるで… )
「大丈夫だ! 早馬で少し揺れるが、翠蘭は乗っているだけでいい」
(んんん?)
「ちょっちょっと待って下さい!」
「ん? どうした?」
「私は… その場所に必要ですか?」
「当たり前だ!」
(何故?)
「いや、既に黒龍の居場所はわかり、後は願いを乞うだけという… そ、それに足りないものがあるとしたら、ルオ様の持っているその首紐くらいでは? だから私は… 」
両肩に強い衝撃が走る。
(病み上がりなんですけどぉ… )
「この事実を知ってしまった以上だ! それに何より、俺が必要だからに決まっているだろう!」
翠蘭はその真っ直ぐ瞳と言葉に、何も言い返す事が出来なかった。
しかし、彼の必死で真剣な眼差しに、翠蘭も不思議と笑いが込み上げる。
「ふ… ふふっ… ふふふふふはっ。そういう事ですか。わかりました。私も僭越ながら、お供させて頂きます。しかし、振り落とされないように、しっかり支えて下さいね」
「あぁもちろんだ」
翠蘭はその手を乗せた。
最後まで読んで頂きありがとうございます。
突っ走って書いてしまっているので、文章が乱れていることもあるかと思います。
何かお気づきの点があれば、いつでもメッセージお待ちしております。