第十五話
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次に目が覚めた時には、見たことのない天井が翠蘭を覆っていた。
太陽の光りが、キラキラと反射する。
それらは、翠蘭の脳を更に混乱させた。
(そうか、夢… ここは… )
そう思いながら、重い瞼を閉じる。
未だ、頭が冴えることを拒否していたのだ。
しかし、腹の虫は正直だった。
昨夜は、緊張のあまり水分しか口にしていなかった翠蘭。
よって、空っぽのお腹は音を上げていた。
少しすぐ横からくすくすと、聞き覚えのある笑い声が聞こえる。
「すぐに持って来させようか?」
笑いを含むその声は、少しずつ近づいてきていた。
狸寝入りを貫こうとする翠蘭。
しかし、すぐにやって来たその芳醇な香りには、抗えなかった。
むくりと体を起こすと、その声の主に向かって挨拶をした。
「ル… 楼繁様… おはようございます」
「おはよう、翠蘭。よく眠れたか?」
そう言うのはルオ改め、彩楼繁次期皇帝である。
「えっと… これはどういう状況でございましょうか?」
「昨夜、お前は何かを考えながら、眠りについてしまったんだ。だからここまで運ばせた。ここは黒聖殿だ」
「え!? 黒聖殿!? つまり楼繁様の… 住まい… ん? 待って、運ばせたってまさか… あのご老体に… 」
「そんな鞭は打たない。運んだのは、そこにいる者だ」
そう言うと、楼繁は翠蘭の後方を視線で示した。
それに従い、翠蘭も後ろを振り向く。
すると、目に飛び込んできたのは、意外な人物であった。
「え… ? えっ!? 燈鸞!? え!? な、なん、なんでぇ!?」
燈鸞は、飄々としながら立っていた。
言葉は発しなかったものの、にこりと微笑むと、その変わらぬ笑顔で返事をした。
「燈鸞は、私の幼きなじみであり、従者の一人だ」
燈鸞は驚きながらも、落ち着いて言った。
「まさか、お前がまじないの申し子だったとはな」
(それ違いますが?)
「あの時、雨の中黒聖殿の外で、楼繁様と一緒にいるお前を見た時には、本当驚いたよ」
「あの時? 雨? あ… もしかして、あの時の扉を閉めたような音って… 」
「俺だ」
(覗き見なんて… )
「この変態… 」
ぼそりと呟くその声は、燈鸞には届かなかった。
「それにしても、兄弟弟子になれなくて残念だったな」
「え? 何の事?」
翠蘭はその言葉の意図を、汲み取る事ができないでいた。
しかし、すぐさま彩楼からその意味がわかる。
「… そうか! 翠蘭はあの時の… 」
(え? どの時の?)
首を傾げるばかりの翠蘭に、燈鸞がヒントを差し示した。
「ほら、よく見てみろ」
そう言って、楼繁の方へと視線を与える。
「あれ? その格好… はっ! もしかしてあの時の… 燈鸞から武術を教わっていた弟弟子!」
翠蘭の目の前にいる楼繁の格好は、皇太子なる装いではなく、王宮内にいるありふれた武官の格好を纏っていた。
そして、同時にその顔にも見覚えがあった。
「兄弟弟子だと思っていたのは、お前だけだがな」
嬉しそうにしながら、くるりと衣装を披露する楼繁。
それに反して、険しい顔になる翠蘭。
「あれ? でも昨日と… 出会った時には、官吏の格好をしていましたよね?」
(なるほど… そうやって身を扮していたのね)
ニコニコと翠蘭を見る楼繁。
そして次に放った言葉は、意外な物であった。
「なぁ翠蘭。以前のようにルオと… そう呼んではくれぬか?」
「え?」
「ここまで変装しているのに、名で我が身を周囲に知られては困るであろう? それと、かしこまった言葉使いも無しだ」
困惑が困惑を呼び寄せた。
(え? つ、つまり、呼び捨てアーンド、タメ口で話せって事?)
翠蘭は助けを求めるかのように、燈鸞へと視線を飛ばした。
わざとらしく、視線を逸らす燈鸞を睨みつける。
しかし、いくら命令であれど、彼の期待には応えられない。
応えられないが、誠意は示す。
「… わかりました。しかし敬語は、逆に目を付けられる可能性がございます。なので、ここに… この王宮内にいる以上はできかねます。身分上ゆえと、私の身の保障のためです。そして、名はルオ様と… そう呼ばせて頂きますゆえ、ご了承願います」
そう言うと、下げた頭をゆっくりと楼繁へと上げた。
感情は読めない。
「相わかった。ではここから出たら、その願いは叶うという事だな?」
(え? どの願い?)
「あの… ルオ様の願いは、ここから逃げ出る事、それ一つではないのですか?」
「確かに一番の想いは、今はそれが強い。しかし、私にもやりたいことはたくさんある。だから、ここで成し得る事のできない願いはたくさんある。星の数ほどたくさんな」
(そのうちの一つが、どの願いなのか… 聞くのが怖いわね)
「つまり、まとめると ’自由’ という事ですね」
翠蘭は、ざっくりとまとめに入った。
「ん? それより翠蘭。もう一度、やってはくれぬか? あのまじないをもう一度… かけて欲しい」
(まじないねぇ… )
そう思いながら、翠蘭の視線と鼻はある方向を向いていた。
「えっとぉ、とりあえず胃に何か入れてからでもよろし… 」
「おい、言葉を慎め。全く… 」
燈鸞の制する声に、その上から声が被る。
「いい。先に膳だ。腹が減っては、何とやらと言うだろう?」
ルオのその言葉に、明るい顔と困惑した顔が視線をぶつける。
最後まで読んで頂きありがとうございます。
突っ走って書いてしまっているので、文章が乱れていることもあるかと思います。
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