第十二話
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扉の中へ入ると、そこには様々な資料で溢れ返っていた。
本や何かを記した書類が、はみ出すように乱雑に机に置かれていた。
更には、大きな地図が壁にかけられ、そこに何かが書き足されているようだった。
資料達に囲まれるように、四、五人用の机と椅子が、四脚程置かれている。
翠蘭は座るようにと促され、腰を落とす。
「さて、聖華会についてだが、これが好機と考えている」
(あ、もしかして脱走のことかしら? やっぱりあれは本気だったのね。それにしても… )
翠蘭は、一気に現実へと引き戻された気がした。
(てか、この人厩番じゃないな)
少しだけ思考を逸らして、変な事に巻き込まれまいと抗ってみた。
「聖華会… そういえば、八年前に先帝がお亡くなりになられましたよね? それから、どなたがその後の役目を担っているのですか?」
「何故… そのような事を聞く?」
「あ… いえ、確か楼繁皇太子様は、まだ成人しておりませんよね? それに人前にはほとんど出ず、実際に誰が行っているのかと… 疑問に思いまして… 」
(全く興味ないけど)
「確かにその時のお… 楼繁皇太子様は成人されておらず、前皇帝の側付きの宰相が執り行っていた。建前上、彩楼様がしているようにしていただけだ。
しかし遂に今年、成人の儀を迎える。それと共に皇帝へと即位し……… 」
(ん?)
「… 今年の聖華会での祭事は、楼繁… 様が執り行う事になるだろう」
「ほうほう、なるほど」
(でも何だか、キレの悪い言い方に感じたけど… )
「では、この国も遂に安寧へと… 」
「そう簡単にいくと思うか?」
翠蘭の言葉を遮るように、ルオは質問を飛ばした。
「どういう事です?」
「いくら直属の皇帝の血が流れているとはいえ、まだ即位のその字もわからない若造に?」
「ちょちょちょちょっ… 」
少し焦るように、翠蘭はルオに近づき口元を隠すようにして忠告した。
「若造なんて言葉、安易にお口にしない方が良いですよ?」
驚く表情を一瞬したかと思えば、すぐに笑いが込み上がるルオ。
「ふふ… 面白い事を言うな?」
(感情が読めん… )
そう思う翠蘭とは裏腹に、じっと見つめ始めたルオ。
「そういえば… お前、見ない顔だな?」
「え… 」
(今更、唐突に、いきなり何を言い出すのでしょうか! このお方は!)
「あ、いや以前、齢十七を集めさせた選定があったであろう? 俺はあれを取り仕切っていた一人でな… いなかったように思えたが?」
「はい、もちろん」
(興味ないし怖いし聞いてなかったし)
「もちろん?」
「あの選定では、謎に紐を渡されたと、そうお聞きしました」
「聞いた?」
「はい。後日、そう話している宮女達によると、その紐を渡され、まじないをかけろと言われたそうですが… えっ!? あれって、もしかして龍絡みだったんですか!? それとも、やっぱり何かの宗教かなんかですか?」
「待て待て待て。参加しなかったのか?」
「はい」
(話が行き届いていなかった? おかしい… )
「いや… あれはだな… 」
「はぁ、あの時は本当に危なかったです。私も整列に関わっていた官吏に、歳を聞かれて危うく参加させられそうになりました。あ、でも咄嗟に二十三と答えたので、免れたんですけどね」
「待て… 今なんて?」
「いや、だから齢二十三と言いま… 」
「違う。危うく、咄嗟に、免れたと… そう言わなかったか?」
「… はい… ? そうですが… 」
「この言葉が意味するのは、本来の年齢ではないからじゃないのか? そう受け取っていいという事だよな?」
(しまった!!)
翠蘭はそう思いながらも、開き直る事を選択した。
脱走時の状況を見逃してくれた、寛大な心を利用しようとしたのだ。
しかし、意外な方向へと鋭い尋問が始まる。
「何故そのような偽りを? 何故あの列に並ばなかった?」
「そ、そんないかにも怪しげな集まりの列なんかに、並ぶわけないじゃないですか! 十七歳限定の女子達を集めて一体何をさせようとしてたのか! まじないなんて、絶対に嘘ですよ! 絶対絶対、皆口止めされてるんだわ!」
興奮した翠蘭の言葉は乱れていた。
しかし、その様子に怯む事なく、冷静に疑問だけを投げるルオ。
「口止め? 何の為に?」
「そ、そりゃあ、何だか破廉恥な事を… お、おそらくですね、紐ではなくもっと太い綱… そしてヤバいプレイをお望みの上級貴族がっ… 」
「何を… 言っている?」
(ヤバい… 落ち着け私!)
「そ、それにですね、そもそもそのような集いが執り行われているなんて、知らなかったんです」
「なるほど。では実際はいくつなんだ?」
そう言いながら、ルオの真っ直ぐに見つめた瞳が近づいてくる。
「に、二十… 一… です… 」
少し逸らした顔に、更に迫りゆく瞳。
「でも本当は?」
「じゅ…… 十七… です、多分」
その言葉に、大きなため息を一つ吐くと、ルオは更に落ち着いた声で言う。
「ほう… ではその嘘は、罪にならないと?」
「んなっ… 何故急にそんな話になっ… 」
(はっ… 確かにそうだ。しかも一介の… それも下級の宮女風情が官吏に嘘をついたんだ… それに指定された集いに参加しなかった… となるとやはりこれは… )
「う、嘘ついてもバレなければ、良いんじゃないんですか?」
翠蘭は、更に開き直った。
その尖らせた唇は、更に鋭くなる。
「いや、バレた時がまずいだろう?」
「確かにそうですけど… ほら、でも誰かに言うことなどしなければ、そんな簡単にバレや…… バレ… や… 」
「今、この俺の目の前で、二度目の偽りを放ってもか?」
圧のかかる笑みに、鳥肌が立つ。
「あ… い、言わないで下さいね。はっ! ま、まさか、回し者ですか!? あれでも尚、十七の娘が事足りないと!?」
「いや… 回し者では… 」
(それに、事足りないとはどう言う事だ?)
「何でもしますゆえ! どうか誰にもぉ!」
翠蘭は今更になって、拝むようにルオの足元へとしがみついた。
「ゔ… まぁいい。して、名をまだ聞いていなかったな?」
「あ、申し遅れました。わたくし、名を翠蘭と申します」
「翠蘭… だと!?」
「え? あ、はい… あれ? 何処かで… お会いしましたっけ?」
(燈鸞の知り合い… とか?)
驚きの表情を露わにしたまま、少しばかり言葉を出せずにいられない様子のルオ。
「俺の名はルオだ。翠蘭… 」
「え? あ、はい… 存じておりますが?」
(覚えていない?)
その訝しげな表情に、翠蘭は少し困惑した。
「あの… いかがされました?」
「あ… いや… 先程の話といい其方、本当に何も覚えてないのか?」
「へ? 何がです?」
「紐に… まじない… 」
「ん?」 「ん?」
お互いに、首を傾げ始めた二人。
(あれ? もしかして人違いか? 似たような名か?)
「あ、そういえば、その怪しい集いで、正妃が見つかったとお聞きしましたが?」
その言葉に、考えてた脳が、翠蘭へと意識を戻す。
「あぁあれか? あれは嘘だ。嘘に決まっている」
「え… ?」
「まだ決まっていないなんて言ったら、それこそ更に誰かが偽りのモノをだな… 」
(そっちも嘘じゃん!)
「でも、そんなんじゃ一生妃様なんて、見つからないのではないのでしょうか?」
翠蘭の言葉に、鼻で返事をするルオ。
「ふっ… 」
(えっ!? 何今の!? めっちゃ感じ悪かったけど!?)
「翠蘭… 何処かで頭でも打ったのか?」
「… え?」
(やだ! この人めっちゃ失礼!)
翠蘭には、その意図がわからなかった。
(こちらはこんなにも探していたっていうのに… )
そう思いながらも、更なる笑いが込み上げてくるルオ。
「ククク… クッ… そうか…そうかそうか… クク」
「ルオ… 様?」
最後まで読んで頂きありがとうございます。
突っ走って書いてしまっているので、文章が乱れていることもあるかと思います。
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