表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/26

第一話

たくさんの作品から見て下さり、ありがとうございます!

最後まで読んで頂けると、嬉しいです。

人生一と言っていい程ではないだろうか。

いや、人生は一度終わっているからそれは違う。


ならば、記憶一か?


自身の身長ほど、高く積み重なっている汚れ物達。

これを今から、洗濯場に運ばなければならなかった。


それなのにも関わらず、またあの女共が飽きもせずに、幼き少女の前にやってきた。


その重い洗濯物の籠を持ち上げ、前の見えない通路をよろりよろりと歩く。

それを見計らったかのように、宮女達はその足をかけた。


思惑通り、その洗濯物達は宙を舞い、少女ごと転げ落ちる。

その体は痛々しくも、壁へとぶつかり、鈍い声が漏れた。


「ゔ… 」


(いったぁ… この前ぶつけた所にピンポイントなんて… )


しかし、少女は泣いたり、喚いたりはしなかった。

その反応を見るのが、彼女達の娯楽に繋がるとわかっていたからだ。


「ちっ… つまらないわね」


そう言って、早々に次のターゲットを探しに行った。


「根性なしめ」


そう言いながら、その後ろ姿に中指を立てる。

(良い子は、真似しちゃダメですよ)


そして、何事もなかったかのように、洗濯物を拾い始める少女。


ぶち撒かれたそれらが、洗濯前だった事を、幸いであるとそう思う事にした。


少女の名は、翠蘭。

経験上、推定年齢七歳。

前世の職業、大都会中心部のオフィスレディ。

車のヘッドライトの記憶を最後に、今に至る。


現在この世界、この時間にて、黒聖国の王宮内で働く宮女であった。


(多分、車に轢かれて死んだんだな)


この名は誰が付けたのか?

どうやってここに来たのか。

その辺の記憶はなかった。


気が付いたら、ここにいた。


しかし、その事にあっさりと受け入れていた翠蘭。

何故なら、前世でも特にいい思い出はなかったのだから。

ならば、また一から人生やり直してもいいだろう。


そう思っていたのだ。


(不本意な再出発だけど… それにしても、前世にもあぁいう陰湿な奴いたな… 何処にでもいるんだな。まぁあの時はまだ、社会的に法律とかあったから、ここまで酷くはなかったけど… )


そう思いながら、やっとの思いで洗濯場に辿り着いた翠蘭は、せっせと職務を果たした。


(果たしてこれを ’仕事’ と呼んでいいのだろうか?)


翠蘭は多くの疑問を頭にふっかけながらも、今の状況しか選択肢がないことを重く受け止めていた。


衣食住は確かに、確立されている。

ならば、時が来るまで待てばいい。

そう思いながら、この暗黒な日々を乗り越えていた。


しかし、その脳だけは活発に動いていた。


体は子供だが、思考は大人のままだ。

子供らしからぬ言動と行動、そして思考を糧にしようと決めていた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


汚れ物を洗い終わった時には、既に正午を過ぎていた。


(まずい! 食堂が閉まーる!)


そう思いながら、一心不乱に走った。


今では、目の前の光景にありがたみを感じることが出来る。

その器に乗った食事達を。


「今日は随分と遅かったね? いや、逆に良かったのかも… ふふ、たくさん食べな」


その言葉に首を傾げた翠蘭であったが、その答えは最後の盛られた器にあった。


いつも以上に盛られた穀物。

前世でいう、ご飯だ。

しかし、この世界では白米は超貴重であり、高貴なお方しか口にできない。

その盛られたお椀の中身は、粟や稗、芋などを混ぜ込んだ物であった。

それでも、今の翠蘭にとっては十分であり、健康食品には変わりない。


「今日は、意外と残ってしまったからね。おまけだよ」


そう言うと、配給係の宮女が片目を軽く瞑った。


(女神のウィンク… )


翠蘭は勝手に、そう名付けていた。


そのありがたいウィンク付きの昼食を頬張りながら、黙々と考える。

言葉にしないだけ、ましである。


(この歳の子供って普通、こんな重労働しないよね?)


前世の世界ならば、翠蘭ほどの年齢の子供のならば、学校へ行ったり、遊んだりとしている。


それに比べ、現在、この世界では奴隷並みに働かせれていると感じるほどであった。


(この国は… いや、世界はどうなってるの? モラルってもんがないのかしら? これ以上、か弱い体に鞭なんて打ったら、それこそ死んじゃうわ。… いや、死ぬ前に、お偉いさんに絶対、ひと言言ってからじゃないとっ)


そう思いながら、大きな怒りと悔しさから出る。

ちいとばかしの涙を拭った。

誰にもわからないように、拭った。


弱音を吐かないのは、彼女達いじめっ子の前だけだ。

翠蘭だって、前世の記憶は十分にいい大人だったが、その前に一人の人間だ。

それに今は、小さな女の子。

夜な夜な泣きじゃくったりもするし、悪態だってつく。


もちろん一人で。


そして、小さな野望を大きく掲げている事に、誰も気が付いてはいなかった。


そうやって、毎日苦痛な下働きを黙々淡々とこなしていった。

他に当てがないのはもちろんのこと、友達もいない。

たまに癒しになるのは、食堂のおばちゃんくらいだ。

しかし、こんな自分と仲良くなったら、迷惑がかかるかもしれない。

それこそ奴らでなくとも、誰かしらがいつ何時見ているかもわからない。

翠蘭の経験上、いじめとはそういうものだった。

だからこそ、人と距離を置くようになっていた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


そんなある日、洗濯を早朝に終えた翠蘭は、深く北の宮の方へと足を進めていた。

翠蘭は無意識に歩いていた。

その瞳いっぱいに溜めた涙を、誰にも見られたくはなかったからだ。


今朝は特に酷かった。

朝起きると、翠蘭の靴がなくなっていたのだ。

なくなるだけならまだしも、そのボロボロになった靴を目にした時には体から力が抜けた。

わざと見つかる所に置いてあったのだ。


(昨晩… 足の手当てをして… それから、靴を脱いだまま、寝てしまったのがいけなかったわ… )


いつもなら、警戒し靴を履いたまま寝ていた。


しかし昨晩は、油断したのだ。

裸足で歩く翠蘭は靴を配給してもらうがための、言い訳を考えていた。


そう思いながら、少しの現実逃避を図った。


まだ陽が昇る前だ。

薄暗い宮内を静かに歩く。


(傷口が開きそう… )


すると、ある垣根を見つけた。


(こんな所に… 隙間があるわ)


翠蘭は、その小さな体が、ぎりぎりに通る事を利用した。


「綺麗… 」


いつもは感情を口にしないように気を付けていた翠蘭であったが、さすがの美しさに心が洗われてしまっていた。


まるでそこは、小さな箱庭のようであった。


端っこに、さほど大きくはない水の溜まりがある。

池といえば池なのか。

それを示すには、いささか小さい気もするが、ここは溜池と呼んでおく。

まだ陽が上がってないのにも関わらず、キラキラと水面が揺れていた。


身も心もボロボロな翠蘭には、その光景が身体中に染み渡って仕方がなかった。


そのおかげかそのせいか。

涙が溢れて止まらない。

泣きじゃくる翠蘭は、身体中の悪なき水分を搾り出した。


とにかく抑えたい声。

それでも漏れる泣き声。


翠蘭以外、誰もいない。

今だけは自由な気がした。

思うがままに、感情を露わにする事ができたのだ。



最後まで読んで頂きありがとうございます。

突っ走って書いてしまっているので、文章が乱れていることもあるかと思います。

何かお気づきの点があれば、いつでもメッセージお待ちしております。


また、心ばかりの評価などして頂けると、励みになります。何卒よろしくお願いします。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ