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魔法省新年祝賀パーティー ②

更新遅れました。

ごめんなさい!

魔法省の新年祝賀パーティーに出席している私を見ながら、ラミレスさんがレグランに言った。



「室長、奥様は会話が理解出来なくてお気の毒ではないでしょうか?休憩コーナーで休んで頂いては?」


夫の側で笑顔を貼り付けて立っている私を見て、ラミレスさんがさも気の毒に思ってそうな表情をしている。


私がそこに立っているだけなのは誰が見ても一目瞭然なのに、気を使うふりをしてわざわざそれを言う彼女に苛立ちを覚えた。

だってそんなのどこの高官夫人も同じはずなのに。


だけど私はもちろん、それをおくびにも出さず平然として答えた。


「いいえ?確かに私には存じ上げない内容ばかりですが普段の夫の仕事ぶりを窺う事が出来て大変有意義な時間を過ごしておりますわ」


そんな私の返答はお構い無しにラミレスさんはレグランに言う。


「でも室長、《《部外者》》の奥様は居心地が悪く感じておられるのではないでしょうか。それに顔色がお悪いように見受けられます」


「なに?」


ラミレスさんの言葉を聞き、レグランが反応する。


彼は私の顔をじっと見て、

「確かに顔色がよくない」と言った。

そしてそこに居る皆に「失礼、少し席を外します」告げて私を連れてその場を離れた。


そんなレグランに肩を抱かれて歩きながら考える。


別に体調が悪いわけでもないけど確かに平常心を装うだけで精一杯なところはある。

それが顔に出ているのかもしれない……。


レグランは私を会場の隅にある休憩コーナーの座り心地の良いソファーに座らせてから自身は側に跪いて言う。


「すまない。仕事の話ばかりでキミには退屈だろうとはわかっているのだが……」


申し訳なさそうに言うレグランに私は返した。


「いいえ。妻としてこういう席に夫に伴って出席するのも大切な務めだとわかっているもの。だから私は本当に大丈夫なのに。でも私が側でいる事であなたのお邪魔になってしまうなら、ここで大人しく待っているわ」


「リオナが邪魔になるわけないだろう」


「そうかしら?(少なくともラミレスさんにとって私は邪魔みたいよ?)」


「とにかくすまない、すぐに終わらせてくるから、その後は一緒にパーティーを楽しもう」


え、だけどその時でもラミレスさんが側に居るならパーティーなんて楽しめないと思う……。


そんな事を思う私の頬をレグランは指の背で優しく撫でた。


「いい子で待っていてほしい。でも具合が悪くなったらすぐに言うんだよ?何を差し置いても帰るから」


そう言ってレグランは先程歓談していた高官たちの輪の中へと戻って行った。


その背を見送りながら私はひとり、嘆息して小さくつぶやく。


「戸籍上の妻は、情けないわね……」


仕事の会話に入れないなんて当たり前なのに。

それを材料にラミレスさんに当て擦られた事に凹み、夫には余計な心配を掛けて少々過保護なくらいに気を遣わせてしまうなんて……。


そう。レグランは私を気遣ってくれた。

結婚してまだ日が浅い、上官の娘である妻を必要以上に気遣うのも仕方ないのかもしれない。


私たちは単に見合いで引き合わされて結婚しただけの夫婦だ。

でもだからこそこれから時を積み重ね、いずれは父と母のような夫婦になるんだとそう思っていた。


だけど……


私は会場の片隅の休憩コーナーから夫の姿を見つめた。

“仕事上の妻”と揶揄される副官を伴い、息のあった様子で要人たちと会話をしている姿を客観的に見ると、なるほどあの二人の方が確かに夫婦に見える。


ラミレスさんはレグランと要人の会話にさりげなく説明を入れたり時には率直な意見を述べたり。彼女は本当によく彼を支えている。


レグランもまた、長く側でサポートしてくれるラミレスさんをとても信頼しているのだろう。

アイコンタクトだけで理解し合っている様も見られた。


それに比べ、戸籍上の妻である私は何も出来ずにただこんな片隅でそれを見ているしか出来ないなんて、なんとも役立たずな存在だこと。


仕方ない。わたしはレグランにとって上官に紹介されて押し付けられるようにして娶っただけの妻だから。

長く時間を共有し、

互いに信頼し合う|レグランとラミレスさん《あの二人》のようにはなれない。


なら、それなら、


私が妻でなくてもいいのでは?


ふと、そんな考えが頭を(よぎ)った。


レグラン…彼にとっては、仕事上でも戸籍上でもラミレスさんを妻にした方が良かったのではないだろうか。


もしかして本当は……彼もそうしたかったのでは……?

でも私の父に押し切られて仕方なく……。


そんな惨めな考えが次から次へと湧き出てきて、情けないことに実際に視界も涙で滲んできた。


だけど、こんな所で泣き出すような愚かな真似だけは絶対に出来ない、したくない。


例え事実はどうであれ、私はレグラン・グライユルの妻で、ジェームス・トレア法務部長の娘なのだから。


「今はここに居てはダメだわ……」


私は少し頭を冷やそうと、人知れず会場を出てホテルの庭園へと向かった。







───────────────────────




タイトル回収っ……( ´•̥̥̥ω•̥̥̥`)デモピエン


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