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調べます。

一晩の間むーんむーんと唸った結果、とりあえずは夜久乃先輩本人のことよりも夜久乃先輩の依頼の方を優先することにした。ほんとはもうちょっと悩みたかったんだけどルームメイトの子が「うるせぇ」と枕を投げつけてきたので、とりあえず簡単そうな方から手をつけることに決めた。それにしても枕が直撃したおでこが痛いむむんむん。

「ふむふむぅ、対象はこの先輩かー」

走り書きのメモを片手にお目当ての教室を探す。夜久乃先輩から「後輩」て聞いてたから中等部かなーと思ってたけど、よく考えたら夜久乃先輩から見たらだいたいみんな後輩だったね。

「む、この人かな?」

教室の入口のとこからひょこりと覗くとそれらしき人が見えた。机に向かってなにやら小難しい顔をしたかと思えば、窓の外を見てため息をついて……なんか忙しい人だなぁとじぃっと観察してると、振り向いた別の先輩がぎょっとした顔でこっちを睨む。いけないいけない、怪しすぎたかな?とりあえず顔はわかったからまた後で調べにこよっと。

ひとまず撤退撤退っと。抜き足差し足忍び足でこそこそと自分の教室に戻ろうとすると、間に合わずに途中でチャイムが鳴る。まぁいっかと教室の後ろからそろ〜っと忍び込んだけど。

「柚原さん? 遅刻ですよ?」

まりあ先生にはばっちり見つかってて。

「あ、あはは〜、いやぁちょっと〜」

「ダメですよ、新学期早々そんなゆるゆるでは。ほら早く席について」

「はーい」

ほんとはチコクじゃなくて取材なんだけどねー、部活動ですって言えば次は大丈夫かな?やっぱダメかもね。


それから1週間かけて、例の先輩のことをじっくり調査した。休み時間には教室の後ろからじいっと観察、放課後にはこっそり柱の影から偵察、時には大浴場で待ち伏せしてのぼせたり変な顔されてみたり。…………へくちっ、風邪ひいたかな?

とりあえず調べてみて分かったのは、この先輩がとにかく周囲から浮いてるってこと。手がぶつかっただけでひと睨みするし、声をかけられても返答は素っ気ないし、食堂でメニューを選ぶ時だって「余ってるのでいい」と面倒くさそうだし、お風呂だってみんなが来ない夜遅めのタイミングが多いし。お陰で調べるのに手間取ったというか、私の情報網でもなかなか引っかからなかった。むぅ、なんて書こうかな……。

目の前に置いたレポート用紙を何度も睨むけど筆が進まない。進むのは手元に置いたバナナの減り具合だけ。……そういえば夜久乃先輩に貰ったバナナ美味しかったなぁ、1口食べただけでとても美味しくて、「うまいぞー」って叫びそうになってルームメイトに消しゴム投げられた、ちぇっ。でもあれは本当に美味しかったし、なんなら目からビームとか出せたかも。出せたら校内ニュースものだね、あのバナナ。

そんなこんなで、唸りながらなんとかレポート用紙にこの一週間をまとめあげたところでドアがノックされる。

「はーい?」

こんな時間に誰だろ? と返事を返してみるけれど何も起きなくて。変だなぁと思いつつドアを開けるとパサリと何かが落ちる。拾い上げてみると小さなカードで、

「明日の6時、私の部屋に来なさい y.kase」

かせ……?ケース……? はて……?なにこれ怪文書……?でもこの字はどこかで見たような……?試しに透かしてみたりくんくん嗅いでみたり。でも手がかりが見つからなくて。うーんなんだこれ……イタズラかなぁ。と思いつつ持って帰ると、ちょうど机の上のレポート用紙が目に入って…………あっ、これ夜久乃先輩の字だ。調査結果が遅いから催促しに来たのかな?でもなんで直接会いにこないんだろう?

むーん、謎。

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