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突撃隣の風瀬先輩ーその1

はじまりました。

世の中には情報が溢れている。やれ、どこの誰が誰とケッコンしたの、どこそこのナントカ先輩が食べ放題10軒更地にしたの、どこぞのお嬢様が後輩の100人斬りしたの……ところで100人斬りってなんだろう?

それでも探れない情報、流れない情報というのもあるにはあって、だからこそ知りたくなると言えばそれまでなのだけど。

(な〜ぜか出てこないんだよねぇ、夜久乃先輩の情報)

私ー柚原 七世もエンピツを咥えて天を仰ぐ。今回の取材対象であるこのナゾ乙女もそのひとつだ。学園の誰もが振り向くその美貌、学生離れしたその色気、誰も彼もが知りたくなるその素顔。だけども誰も突き止められないそのお顔。……元から無いコトでも誰かが発せばいくらでも流せるこのご時世にナニも出てこないというのはある意味不気味でもあって。

「よっし、見つけられないなら見つけに行くだけ!! 」

私はマイバナナケースとメモ帳を片手に3年生の教室へと乗り込んだ。


「と、いうわけで来ちゃいました」

「帰れ」

 教室からあっさりつまんでぽいっされた。

「ちょ、ちょっとー!?」

無慈悲にも扉を目の前で閉ざされる。ふふん、そうは行くかと必殺のスキマ片足入れ。結構強めに閉めたっぽくてあんよ痛い。

「ひとまずお話だけでも」

「……断る。それに今は欲しい情報は無い」

「欲しい情報……ってわたしのこと知って」

「無論だ。誰かになる為にはそれを知らねば務まらない、故に誰かを全て知らねばならない。常識だ」

か、かっこい〜……

「……だがここに来たのは丁度いい」

そう言うと優雅な手つきで徐にカバンを開けると、中からバナナを突き出してこちらに向けてきて、

「って、なんですかこの光るバナナは!?」

「最高級品だ。美への効果が高いと聞いて取り寄せたが、まぁせいぜい2000円程度のものだ。契約の前払いとしては良いだろう」

「さいこうきゅう……」

「貴様への任務はとある下級生の監視と近況報告だ。情報は今書く……ん、これでいいだろう。期限は1週間後、追加報酬は無し……どうした? 早く行け。追加バナナなら無いぞ」

「…………へっ? あ、はい?? 謹んでお受け致しますっ」

バナナを恭しく受け取って教室を後にする。さーてと、依頼と夜久乃先輩と、どっちの情報集めからやろうかな?

「おや?おやおや? まーた風瀬のシモべが増えたか? 」

「棗、そういうこと言わないの」

「ほえ? 」

その声に振り向くと、

「あ、美人ツインズ」

「ぶつよ?」

「その呼び方流行ってんの?」

演劇部の美人双子こと泉見姉妹のおふたりが居た。

「……夜久乃先輩のシモべってなんですか?」

「風瀬さんはね、ああいう態度だから慕われることが多いんだけど誰にも靡かないんだ。むしろ態度は各人で変わるけど顔は変わらないし」

「だから風瀬にホイホイついてくと全員下僕にされるって塩梅よ」

「言い方」

ケタケタと笑う方に同じ顔からツッコミが入る。見ててシュールなのでおふたりもそのうち取材対象にしたいな……

「だってよォ、俺が『どうしたら全員に同じ顔で違うこと言って破綻しないんだ?』て聞いた時、あいつなんて答えたと思う?」

「…………『昼を夜に変え、偽りの愛を本物の愛にすり替える。それが劇だと言うこと位貴女の骨にも書いてあろうに、何故今更?』だよね。…………それ聞いた時、同じ身長のはずなのにまともに顔見れなかった……」

ぶるりと身震いひとつ。

「…………ま、悪いこと言わないから風瀬夜久乃からは身を引いとけ。あいつは全てが歌劇だから本質なんて見ようがないぞ」

肩をポンと叩いて止められる。けど、

「いえ、それを聞いてもっと調べたくなりました」

「うへぇ」

「うわぁ」

…………あれ、おふたりともどうしたのですか?

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