スカイドンとマスターアップ【Bパート】
「これで直ったはず。
チェックも一応しといたから。」
ソニーチェックが来て二日後の夜、画面停止バグを直し終えた不二が突き出た自らの腹を掌で叩きながら窓野の席まで報告に来た。
腹鼓は彼の癖で、機嫌のいい時にだけ叩きながら歩いてくる。
「ありがとうございます。」
天然プレイで誤字脱字チェックをし終えたばかりの窓野が不二に頭を下げた。
「じゃあ、最終ロム焼くから。」
「こちらはツナミさんに連絡打っておきますよ。
明日の朝イチで六本木まで運ぶんで。」
「うん、わかった。
書類も用意しておくから。」
不二はそう言うと踵を返して自席へ戻っていく。腹鼓を叩きながら。
すると、二人のやり取りを隣りで聞いていた伊佐丸が窓野に尋ねる。
「朝イチ? また泊まるの?」
「はい。そうしないと持って行けないですからね。」
「じゃあ、今夜こそ銭湯に行って。
隣りに味噌樽が置いてあるみたいだからさ。」
相当臭うようだ。
銀入りのスプレーを頭からたっぷり振り掛けても、この臭いはそうそう取れるものではなかった。
「いや、入浴すると朝の目覚ましに気付けないくらい熟睡しそうなんで。」
「‥‥何時の電車で行くの?」
「千歳烏山を八時十一分に出る電車で乗れば丁度いいかなって。」
「アンタは満員電車に味噌樽を突っ込む気か?」
それは確かに迷惑行為かもしれない。
「そうっスね‥‥。わかりました。」
窓野は渋々銭湯行きを承諾した。
● ● ●
バスタオルとタオル、それに財布だけを持って窓野は会社の近所の銭湯へ向かった。
「大人一人で。
――ああ、あと小さいシャンプーも。」
「合わせて五百八十円ね。」
「領収書、お願いします。」
● ● ●
銭湯から出た窓野はサークルKで晩ごはんの味噌カツ弁当を買ってイレブンキーに戻った。
「戻りましたー。」
誰にという事もなく、窓野が帰社の挨拶を玄関でする。
すると、奥から速足で近付く音がする。
「窓野さん、大変! 新たなバグが出た!」
不二が血相を変えて現れた。
「ええっ!? もしかして縁バグですか?」
「たぶん‥‥ていうか、そうなんだけど。」
「朝の五時くらいまで直せそうですか?」
ロムを当倍速で何枚か焼く時間を考えると朝の五時がタイムリミットだった。
「やってみないとわからない。」
一番困る解答だ。
この時間ではツナミの土谷は退勤していて連絡がつかない。
「取り敢えず、至急取り掛かってください。」
窓野は最悪の状況下で最善の選択をした。
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