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俺は悪役令嬢の出るゲームの続編を作っていました  作者: 鳩野高嗣
第十三章 ファーストマスター入れ間近なのに
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ファーストマスター入れ間近なのに【Bパート】

「おまけディスク‥‥ですか?」


 羽田(はねだ)土谷(とたに)()き返した。


「予算は別途出します。

 PC用で、ゲーム内の音声の二次使用料と合わせて五十万で出来る限りの内容でお願いします。」


「わ、かりました‥‥。

 えーと‥‥これ、いつまでに?」


 この手の仕事に精通している直木が確認する。


「なる(はや)で。」


 ですよね。


 この提示された額面では一人月(いちにんげつ)掛けられない。

 そうなると必然的に――


窓野(まどの)さん、音の編集ツール使えましたよね。」


 残業代が付かない窓野がスタッフに組み込まれる。


「ええ、まあ‥‥。」


 窓野は嘘が苦手な上に断れない性格だ。


「なら、何とかしてみます。」


 直木がそう言い切って、この日の定例会議はお開きになった。



 土谷が帰った後、羽田が直木に問う。


「直木さん、あの額面じゃ何も出来ないでしょ?」


「以前作ったデスクトップ用の電卓やアラーム、壁紙、BGM集のノウハウがあるので、その詰め合わせなら何とか。」


「壁紙用の素材と音素材なら自分の方で掻き集められますが。」


 窓野は最低限の労力で逃げ切る気満々だった。

 当然だ、ファーストマスター入れは翌々週の月曜なのだから。


「窓野さん、攻略対象キャラの専用BGMを二回ループさせた後、ラストにフェードを掛けてください。

 それとデータは百二十八キロのMP3に変換して、冒頭部にはキャラの決め台詞を被せてください。」


 しかし、直木は容赦なく作業を捻じ込んできた。

 そして更に、


「電卓のボタンを押すと出るキャラのヴォイスのデータの切り出しと、一時間ごとに鳴るキャラの声のデータを攻略人数分用意してください。

 それと、壁紙を十枚くらい作ってください。」


 かなり強引に追加で捻じ込む。


「これをいつまでに?」


「ん~~、明日いっぱいまでかなぁ。」


 えっ、本気で言ってる?


「壁紙が重いっスねぇ‥‥。

 今、こっちのラインで抱えているデザイナーは氷室さん一人なんですけど、デバッグに掛かりっきりなので捻じ込めませんし、自分もバグの対処の片手間にやる訳なんで‥‥。

 ――羽田さん、山下さんのラインで抱えているデザイナーを一人、一日貸してもらえないですか?

 コンテはこっちで切るんで、背景と既存のキャラを並べてフォトショで画面処理をかましてくれるだけでいいんです。」


「ええっ!?

 う~ん‥‥一日くらいなら‥‥。」


 羽田は山下のラインの話になると反応が鈍くなる。

 お伺いを立てて論破されるのがどうも嫌らしい。

 これが山下が『イレブンキーの天皇陛下』と揶揄(やゆ)される理由の一つだ。


「という訳で、素材、待ってますんで。」


 直木はそう告げると、イレブンキーから自社へと戻って()った。


 ● ● ●


 バグ報告に対しての修正指示をスクリプターやプログラマーに渡す合間、窓野は直木から指示のあった作業を黙々と(おこな)っていた。

 イレブンキーの台本ツールを通して吐き出されるエクセルのリストから使えそうな台詞(せりふ)をチョイスし、音声データを落とし、使いたい部分だけクールエディットプロで切り出していく。


 そんなこんなで全作業を終えたのは、翌朝、氷室が出社してくるタイミングだった。

感想、評価、ブクマを付けてくださっている方々、本当にありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[良い点] やっと直木が役に立ったけど、また窓野に災難が。でも面白い。
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