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俺は悪役令嬢の出るゲームの続編を作っていました  作者: 鳩野高嗣
第七章 俺もマシンも傷だらけだが
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俺もマシンも傷だらけだが【Cパート】

 窓野(まどの)は夢を見た。


「そこがイレブンキーさんのダメなところなんですよ。」


 『テブプリ』でお世話になったツナミのディレクター、丘町(おかまち)の京都弁のイントネーションの声が聞こえる。


「はあ‥‥。」


 羽田(はねだ)の弱々しい声が聞こえる。

 どうやら社内の会議室で叱られているようだ。


 何かしくじりをやらかしたのだろうか‥‥?

 それにしても、イレブンキーまで来てお説教とは尋常ではない。

 どんなシチュエーションなのだろう。


「窓野さんはプランナーとしては優秀ですが、ディレクターとしては甘いところがあります。

 そこを管理するのが上司である羽田さんの役割じゃないですか。」


 俺か?

 俺が原因で叱られているのか。


 ――と、そこで窓野は重い(まぶた)をおもむろに開けた。

 腕時計は十三時半、あと三十分は寝られる時間だ。


(もうひと眠りするか‥‥。)


 窓野は寝返りを打つ。


「ああ、すいません、つい出過ぎた事を。」


 丘町の声だ。


(夢ん中の出来事ちゃうんかい!)


 窓野は心の中でツッコミを入れた。


 イレブンキーの仮眠室は会議室の奥にある。

 仮眠室と言っても(うなぎ)の寝床のような通路に薄っぺらい布団が敷いてあるだけのもので、『仮眠スペース』と言った方が正しいかもしれない。

 そこから自分の席に戻るには会議室を突っ切る必要がある。

 どんな内容の話なのかわからない以上、丘町が帰るまで寝たふりしているのが懸命そうだ。


 しかし、落ち着かない窓野は逆に目が冴え、息を殺すように横になっていた。


 ● ● ●


 丘町が帰ったのを見計らい、窓野は起きた。


「ああ、起きた?

 さっきまでツナミの丘町さんいらしてたよ。」


 うん、知ってる。

 だが、そうとは言えない窓野は羽田に、


「何のご用でいらしたんですか?」


 と(たず)ねた。


「新企画の件でね。

 でも、ウチ、今、プランナーが空いてないからねぇ。」


「新企画ですか。

 この前の神山さんといい、動きが活発ですね。」


「新体制になって、振り分け競争が熾烈(しれつ)になってるんじゃない?

 ――それはそうと、窓野さん、丘町さんに相当気に入られているみたいよ。」


「えっ、そうなんですか?」


 イレブンキーに来る前にいたゲーム会社、アルパカ電子では『敗戦処理』と陰で呼ばれていた社長立案の得体の知れない企画をカタチにする事ばかりを押し付けられていた窓際プランナーだった窓野には、にわかには信じられない話だった。


 そんなところに、デザイナーの一人、笹本(ささもと)が現れる。


「窓野さん、ヤクト・インゼクツのラフデザインが上がったんで見てもらえますか?」


「忙しい合間にすいません、捻じ込んじゃって。」


「いえいえ。」


 ヤクト・インゼクツとは科学者でラスボスのジークフリートが設計したという設定の架空の戦闘機だ。

 イレブンキーには男性四名、女性三名のデザイナーがいたが、メカを得意としている笹本は貴重な存在だった。

 さすがに1カットしか出ないメカのデザインを外注に出す訳にはいかないので、羽田の許可を取って笹本に発注したというのが事の経緯だ。



「かなりSFチックですね‥‥。」


 窓野は笹本のデザインを見て何と表現していいか困った。

 それは第二次大戦中が舞台なのに、『機動戦士ガンダム』に登場しそうな戦闘機が描かれていたからだ。

 おまけにモビルアーマーのエルメスのビットみたいな兵器まで用意されている。

 直感的にはリテイクなのだが‥‥。


「‥‥ありがとうございました。

 とりあえず、これでツナミさんには出してみるんで。」


「よろしくです。」


 窓野は改めて思う。

 自分のディレクター能力が甘いのか、社内のディレクター権限が弱いのか、と。


 ● ● ●


 翌日、窓野の予想通り、ボツ再考の伝達を笹本にする事になった。

感想、評価、ブクマを付けてくださっている方々、本当にありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 窓野は苦労し続ける運命の星の下に生まれたんだと思う。そこが面白い。
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