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俺は悪役令嬢の出るゲームの続編を作っていました  作者: 鳩野高嗣
第六章 帰宅難民状態
17/40

帰宅難民状態【Bパート】

 苦闘しながらも『ダインリーベ』の続編は荒波を掻き分け制作は進んでいた。

 そうした中、


「いつになったら()るん、ミニゲームのマップ。」


 メインプログラマーの不二(ふじ)窓野(まどの)の席まで来て問い掛けた。

 ミニゲームは直木が担当していたパートだ。

 だが、かなり遅れている。不二が苛立つのも無理はなかった。


「そうだね‥‥あとで突っついてみるよ。

 素材は笹本(ささもと)さんが作ってあるし、仕様は自分が作ったし、直木さんは面の構成とリズムゲーのパターンだけなんだけど‥‥。

 ――不二さん的にはどれくらいまで待てる?」


「今晩中にほしい。」


 感情的になっているとは言え、無茶を言う。


「えーと‥‥まあ、聞いてみるよ。」


 ● ● ●


 頃合いを見て窓野は直木の携帯に電話を入れた。


「はい、直木ですけどー。」


 いつもの調子で直木が出た。

 直木の声は声優の杉田智和と野球解説者の江川卓を足して2で割ったような声だ。


「もしもし、窓野ですけど。」


 そこまで言えば頭の回転のいい直木は電話の意図を読み取ってくれる。


「すいません、ミニゲームのマップパターンなんか遅れてしまいましてー。」


「どれくらいに頂けそうでしょうか?」


「そう‥‥ですねぇ。

 明後日(あさって)か、その次の日くらいには渡せるんじゃないかと思う訳でして。」


 手を着けてないなと窓野は察した。

 極論を言えば、かなり美しく描こうと思わなければ一日もあれば終わる作業だ。

 よほど急ぎの仕事を溜め込んでいるのだろう。


「――わかりました。

 宜しくお願いします。」


 不二にどう伝えたものかと思いつつも、話しても好転しそうもないと悟った窓野は早々に電話を切った。

 そして席を立つと、不二の机へ向かった。


「直木さんの仕事の件だけど、明後日か明々後日(しあさって)になりそうだって。」


 窓野は包み隠さず真実を告げた。

 これで不二が納得してくれるのを願いつつ。


「はあっ?」


 その一言が全てを物語っていた。


「話にならない。すぐにやらせて。

 どうせ、他の仕事を優先してるんでしょ?」


 直木の抱え込み病はプログラマーにもお見通しだった。


「じゃあ、今晩中に、自分がダミーを全部用意しておくよ。

 だから、直木さんのデータが来たら、それに差し替えてくれないかなぁ。」


「今晩中だからね。絶対、今晩中だよ?」


 そんなに念を押さなくても。


 ● ● ●


 デザイナーが上がる二十時。

 不二もまたその時間にタイムカードを押した。

 この時間から窓野個人の闘いが始まる。


 ミニゲームの鉄橋爆破のライトの動きのパターンに始まり、次はその逆パターンの爆弾解除ゲームのライトのパターン。

 エニグマ解読用の暗号パターンに、ダンスゲームのキー操作の流れのパターンを数種類。

 そして最後は映画撮影用のキー操作の流れのパターンを数種類。


 基本パターンを作り終えたのは午前一時半を回ったところだった。

 しかし今回、主人公のキャラクターメイクで運動神経や芸術センス、頭脳明晰さの良し悪し、など四パターン存在するので、その分を増やさなくてはいけなかった。


 ● ● ●


 そして朝を迎える。

 朝一番に出社してくるのは、スキンヘッドのデザイナーの氷室(ひむろ)だ。

 いつもほぼ同じ時間に出社してくる上、十九時きっかりに退社するので、窓野は時計代わりとして重宝していた。


 その氷室が出社する九時十五分、窓野はやっとダミーの仕様を完成させた。

 そしてコピーを取って不二の机に置くと、窓野は仮眠室へ向かった。

 プログラマーの出社時間は十一時だが、不二の出社は十三時から十四時になると踏んでの睡眠時間確保だった。



 だが、現実というものは非情だ、そうは問屋が卸さない。

 十時を回るとクライアントが動き出す。

 そうなると電話が頻繁に掛かってきて起こされてしまう。


 結局、この朝、睡眠時間は一時間も取れないまま窓野は仕事に入った。

感想、評価、ブクマを付けてくださっている方々、本当にありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[良い点] こまかいやり取りが本当にリアルでいい。
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