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恋愛理想は焼き菓子のように  作者: 日下部素
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そそくさと、バックヤードにいき、置かれている藍色のエプロンを確認したと同時に、パソコンに座って作業している大江が視界に入った。

「おはようございます」

「お!おっはよう!今日からよろしくね」

元気よく笑顔で大江が返礼した。

「勤務中はエプロンを着用する決まりになってるからそれを着用して」

「貴重品はそこのロッカーにしまってくれるかな。はいこれがカギ。なくさないように」

大江からロッカーのカギを預かる。

昨日、カーテンがかかっていたところには奥がありそこにはロッカーが両側に並べられていた。ロッカーの一つ一つの一画が縦に細長く、さほど容量の大きくないものだった。

泉の名前のシールが貼ってあるロッカーを見つけそこに財布と携帯電を入れる。ロッカーを閉めカギをかけ、奥側を向くと在庫だろうか様々な種類の商品が両側の壁棚に整理されてある。棚のそばにも商品が詰めてあるだろう段ボールがいくつかあった。その奥側を見るとトイレがあった。



支度を整えた理央は大江のいる方へともどり声をかける。

「着替え終わりました」

「よし。じゃあ平さんのところにいってもらえるかな。彼女から職務についてレクチャーを受けてくれるかい?」

「はい」

周のところへと駆け寄る。

「よろしくお願いします。平さん」

「はい。よろしくお願いします」

平は相変わらず嬉しそうに笑顔で答えた。

「挨拶するときは軽く口角を上げて、無表情にならないように顔を作るの。やってみて」

「こんな感じ」

理央は口角を上げながら周にしゃべりかけた。

「そう。誰でも最初は固くなるものだから自然と身についていくわ」

周が加えて補足する

「お客様に対する挨拶は『いらっしゃいませ・恐れ入ります・失礼いたします・少々お待ちくださいませ、お待たせいたしました、ありがとうございました』これらが基本ね。」

「まあ、簡単に店内に何がどこにあるか見て回りましょうか」

「はい」

そういって二人は店内を回り、何がどこにあるのかを確認した。

「まあ、だいたいジャンル分けされててどれにも属さない特殊な器具とかに関してはこっち」

理央は周の簡単な説明を受け、覚えていった。

店の中央には六つの島になっている商品棚があり調理器具がそろえられている。包丁などの長物はレジ側の壁に配置され、出入り口を背にして右側と最奥側の商品棚には小物など雑貨、食器類が陳列されていた。



「品物も慣れていけば置いてある場所とか使い方もわかるから大丈夫だと思うわ」

「特殊な器具とか便利グッズの使い方はわからないな」

「聞かれたり尋ねられたりしたら私に言って。その時は私が対応するわ」

終始、笑顔で説明する周。

「ありがとう」

「本番はここからよ」

誰でも最初は戸惑うレジ打ち。二人は店の出入り口のすぐそばにあるレジカウンターへと向かう。

「レジはすべての店舗が自動でお釣りがでる仕組みになっているから、頂戴した金額とか商品のうち間違えとかがない限り、釣銭の渡し間違えとかは発生しないはずよ」

「なるほど」

「もう回転だから私が一旦レジに立つからお客さんがレジに来たらそれを見ていて」

開店時間の午前十時。

早々に一番客が来た。70代くらいだろうかおばあさんが入店してきた。

然したる探し物もないのか店内をウロチョロしている。

商品棚の陰に隠れて見えなかったがどうやら和風の小皿を二枚こちらに持ってきて、

「お願いします」

と小皿をレジカウンターに置き会計を促した。

「かしこまりました」

周がお辞儀し、手早くバーコードをバーコードリーダーでスキャン。

「2点で1200円でございます。」

周が表示された金額を伝える。

財布の中からお金を取り出しているおばあさん。

その間に素早く手元で小皿と小皿の重なりに緩衝材を挟み、その上から包装紙で包み綺麗に商品を整えた。

言わずもがな、お客さんが持ち運ぶときに小皿が割れないように包装にひと手間入れた。

「2000円でお願いします」

「2000円、お預かりいたしました」

周は差し出された2000円を両手で預かり、お札を数え、自動レジスターのお金の投入口に入れた。

モニターに差額が表示され、釣銭がレジの取り出し口から出される。

「800円のお返しです」

「どうもね」

「ありがとうございました」



おばあさんはマイバックに小皿をしまい退店していった。

それを見届けた周は理央の方を振り向き

「こんな感じ」

得意そうに語り掛けた。

「さすがに手早い。あんなに早く商品を包めないよ」

「大丈夫!これからみっちり教えてあげるわ」

腕を組み意気揚々である。



開店して暫らく時間が経つとちらほら客が入店してくる。1時間程度は周の横に立ちつぶさに彼女の仕事っぷりを観察していた。

商品により包装したり、バックなどを持っていないレジ袋が必要そうな人にはその旨を声掛けし、重たい商品は紙袋を二重にして渡したりしていた。高校を入学してから数週間でバイトを始めてからどのくらい経つのかわからなかったが相当手際がいい。日曜日というのもあって人入りがよくなってきた。最初に来たときは閑古鳥が鳴いていた時とはうってかわって、いろいろな年代の人が入店する。大体が女性。ちらほら男性も入店してくる。

「じゃあ、そろそろレジ交代しますか」

「できるかわからないけど、やってみるよ」

戸惑いと緊張、レジ打ちなんて見てる側は簡単そうに見えるがいざ打つ側に立ってみると、やや手に汗ばみを感じる理央。周の動きを思い出しつつレジでの動きをイメージしてみる。


よろしければブックマーク、☆の評価、感想をいただけますと幸いです。


作者の励みになります。


ここまでお読みいただきありがとうございます。


これからもよろしくお願い申し上げます!

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