あの日 3
「うぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
痛い、右足に走る激痛がモヤモヤしている頭と眠気を
一瞬で吹き飛ばした
目を開けると人が立っていた
とりあえず...逃げないと...逃げないと......
逃げないと...殺される...殺される...!
恐怖からか考える事なく"逃げたい"という気持ちで
ベットの近くにあった窓を開け飛び出した
約5m程の高さ、右足を刺された痛みが強く
コンクリートに叩きつけられた体の痛みは
ほとんど無く気にもしなかった
近くの廃工場、直感で浮かんだ場所だった
しかし隠れられる場所も多くそこまで行けば助かる
そんな気がした
アドレナリンなのか"殺される"という恐怖なのか
痛みなど忘れてがむしゃらに走った
...次は右...走れ...怖い...死にたくない...
「くそったれ...」
必死に走って廃工場に着いた
近くにあった廃品の山に隠れながら考えた
見つかったらどうする
次に行く場所は
どうやって逃げ切る
どうやって生きる
誰かの足音が近づいてくる
頼む...気づかないでくれ......
「見つけた」
唐突に耳元から聞こえた声に恐怖で叫び声を上げた
「あぁぁぁぁぁぁぁ!」
地面に倒れ込んだ
冷たいコンクリートの床に赤い液体が飛び散る
俺の右腕は転がって行った
切られたのも見えなかった、謎の人物はどこかに
刃物を持ってるようにも見えない
アイツは動いてないのに俺の腕を切った
俺の右肩から下が無い...血が止まらない...あぁぁぁ...
痛い!痺れるように痛い、腕を動かそうとすると
転がっている右腕が少し動く
気持ち悪い...痛い...どうしてこんな目に!
どうにかして助かりたい...
「頼む!なんだってするからもうやめてくえ!」
恐怖でおかしくなっているのか上手く呂律が回らない
奴は俺の目の前にしゃがみ込んで話し始めた
「避けないのはわざとか?ふざけてるのか?」
本当に意味がわからない
黒いコート
深く被ったフード
マスク越しに話されているような籠った声
男か女かも分からない
見えない刃物とか殺そうとしたとか何がなんだか...
「なんの事か分からない!何を言ってるんだ!」
「もういい...君は私を殺そうとしただろ?」
死にたくないんだ!なんでこんな事になったんだ!
記憶のない1ヶ月間俺がなにかしたのか?
痛い...痛いという感覚も無くなってきてるのが怖い...
何としても生きたい!
「本当に分からない!頼む!殺さないでくれ!」
「しらを切るんだな...はぁ...終わらせてやる」
俺の命乞いに聞く耳を持たない...もう...助からない...
「うおぉぉぉぉぉぉぉ!!」
その叫び声と共に
殺しに来たアイツの背中には大きな悪魔が居た
大きく振りかぶった手には刀が握られていた
.......なんだ........あれ......見える......なら....やれる.....