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それぞれの自宅にて

「今日は色々と迷惑かけたね…家の事とかばれちゃったけどさ、あれ?なんで二人はここに来たの?自分何か家の事とか言ったっけ?」

自分は駆けつけた藤木と咲希に疑問をぶつけた。


「え…?そ、それは…」

咲希は辺りを見回すように目を動かし、助けを求めるように隣にいた藤木を見た。


「…お、お前が放課後、海藤と何かの話し合いみたいな事しようとしてたからさ、話の内容が気になって…」

藤木はそこまで言うと自分の顔を見た。


「じゃ、じゃあ後つけて来てたの?」

自分は目を見開いて二人が何をしてたのか悟った。顔が熱いので赤面してるに違いない。


「あぁ、探すのに苦労したけど…全部聞いて、見てた」

藤木は、ばれては仕方ないと思ったのか笑みを浮かべながらそう言った。


「ぜ、全部!?」


「そ、お前の家庭状況とか海藤の家庭状況とかね…あと、お前が泣き出した時海藤が抱き締めて涙止めてたシーンとかね」

藤木が調子に乗って来た。シーンってドラマじゃねぇよ。


恥ずかしくなって俯いた自分を見て咲希が「ご、ごめん!真那!!あたしも色々聞いたり見りしたけど、心配で追いかけただけなんだよ!全然聞くつもりじゃなかったの…ホントにごめん!!」と咲希は言い訳をしているように自分でも聞こえたのか、最後は謝ってくれた。


「え?抱き合ったの?あの兄ちゃんと?そういえばさっきさ、姉ちゃんが突き飛ばされた時にあの兄ちゃんが受け止めてたよな!」

藤木の話を聞いて喰いついて来たのは、やはり慶だった。こういう話題になると乗って来るからウザいんだよね。


だが慶だけじゃなく、いつもなら芽衣もこういう話に喰いつくのだが今は寝息を立てて眠ってしまっている。

なので、圭吾がおんぶをしているという状態なのだが芽衣が重くなったのか、苦痛の表情を浮かべている。


最後にこんな話題になると、海藤居なくてよかったかも…と思ってしまう。

海藤は先に自分の父さんと一緒に家に帰って行った。

父さんの退職の話は無しにすると、海藤の父さんは明日塾に連絡してくれるそうだ。

その一言を聞いて父さんは「今日はお前たちのお陰で助かったからウマいものでも喰わせてやる」と言って先に家に帰ってしまった。


だが、さっきの事を振り返れば自分たちのお陰でなく海藤のお陰だと改めて思い、兄妹が集結しても意味なかったか?でも、家族の絆というものが深まったじゃないか。

海藤の父さんだって、海藤に言われた事に心を動かされたに違いない。

明日、もう一回お礼を言おう。


皆はまだ自分と海藤の話で盛り上がっている。いい加減飽きろとも思うが、笑い声が耳に響くのも悪くないとも思いながら家に向かった。




「ただいま〜!おかえり〜!」

慶が何故か迎える側の言葉を言ったが、それは毎回の事なので皆それには触れなかった。


台所が近くなると魚を焼く匂いと味噌汁の匂いがした。


「魚だ!魚だ!」

慶がはしゃぐように言った。はしゃぐ慶を見て低学年に見えないと思うのは仕方がない。

背も低め(芽衣も同じくらい)なのだ。これも一応、小学6年だと思って頂きたい。


「おかえり。今日は焼き魚に豆腐の味噌汁にご飯だ」

父さんは笑いながらメニューを言った。


テーブルには炊きあがったご飯が人数分並べられていた。

あんな短時間でよくここまで出来たなぁと感心してしまう程に。


「父さん、手伝おうか?」と自分は焼きあがった魚を人数分の皿に置く作業をしている父さんに言った。


「いや、もう終わるし座ってろ」

「待ってらんないよ、それに味噌汁だけだし」

自分は父さんの横に立って手伝い始めた。


準備が終わると皆がテーブルに着いた。


「芽衣は?」

「まだ寝てる」

圭吾が答え布団で寝ている芽衣を指さした。


「疲れたんだろう、芽衣は寝かせておこう」

着かれた事してないじゃんと慶は呟いたが、それを無視し父さんは言った。


「今日は皆のお陰で助かった、ありがとう。あのままだったら、本当に辞めさせられるところだったよ、父さんは明日から仕事に復活する、だからまたいつも通りの生活になるから遅刻するな。とくに、真那はな!」

自分は何も言わずに頷いた。


話が終わると食べようと父さんが言い食べようとした。

その瞬間に慶が「父さん、姉ちゃんボーイフレンドが出来たんだよ」と言い出した。

父さんは興味を思ったのか身を乗り出してくる。


「違う!ボーイフレンドじゃない!その話から離れろ!!」と自分は言いながら慶の後頭部を叩いた。


「痛っ!!」と慶が後頭部を撫でながら言うと、父さんがワッハハハと豪快に笑い出しその笑い声に吊られ自分たちも笑い、部屋中に響いた。




海藤家では。

「お帰りなさい…遅かったわね。夕飯出来てるわよ、それともお風呂にしましょうか?」

大人しそうな声が静かな部屋で響いた。


「いや…今日は話したい事があってな」

海藤は父親と母親が部屋の中に入るのを確認すると自分も家中に入った。

自分がいては話が出来ないだろうと思い、父親を先に行かせたのだ。


「祥がまだ帰って来てないの」とリビングに腰を掛けて座ろうとすると、先に母親が口を開いた。


「祥ならもう帰って来てるさ、友達と遊んでて遅くなったらしくてな。さっき偶然会ったんだ。先に帰って来てしまったんだけどな」


その話に母親は友達もう出来たのと安堵をついて言った。


「あぁ、これから一生あいつと付き合ってくれるかもしれない」


海藤は二人の会話をドア越しから聞いていた。

さっき一緒に帰っている時に今日の事は何も話さないでと海藤は言った。

今日の事は親子二人だけの秘密だと。

何故そんな事言ったのか分からない。

だが、父さんが他人を殴ろうとしたなんて知ったら、母さんはどうするだろうと。

離婚なんて言われたら最悪で夫婦の絆を深めるどころか壊れてしまう。


「…話てるうちに、この人は暴力なんてしない人だと思った。お前が言ってた事も嘘じゃないのかもしれないって」

そう言い終わると父さんは母さんの顔を見た。


母さんは涙を流していて海藤の方からも啜り泣きが聞こえて泣いているのが分かった。


父さんは不器用なので母さんにハンカチを渡す事しか出来なかった。

母さんはそのハンカチを素直に受け取ったのだ。 


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