兄妹集結
「お前、父親想いだな」
「…決まってんじゃん、じゃなかったらこんな所来てないし兄妹なんて呼ばない」
海藤の質問に自分は答えたが、本当は家族想いなんかじゃないかもしれないとも同時に思った。
「…なんで、兄妹なんか呼んだんだよ?」
「家族で行けば、父さんの退職を撤回出来るかもって思ったの。だけどその考えは…自分たちのためだけの考えなのかもしれない」
自分は何を言っているのか?と疑問を持ったがそれ以上に海藤が疑問を持った事だろう。
「自分たちの生活とか考えただけで父さんのためなんかじゃない、ただ自分たちのために父さんの退職を撤回をしようとしてるのかもしれない」
「そんなのお前だけの思いじゃねぇか、他の奴は違う事思ってるかもしれない。勝手に決め付けんなよ、父さん助けんだろ?俺も協力するからそんな事言うなよ」
海藤はそう言うと自分の顔を見つめた。その顔は真剣そのものだった。
自分はそれに応えるように強く頷いた。
「あ!いたいた!姉ちゃん連れて来てやったよ、感謝しろ!」
良いタイミングで来たと思い、振り向くと慶が怒鳴るような声で言った。
後には圭吾・芽衣と並んで歩いて来ている。
塾に3人が近づいて来ると会話が耳に響く。
「父さん助けるぞ!たとえ俺だけになっても必ず辞表撤回して見せる!」とヒーロー的な慶。
「辞表出してねぇのに、どうやって撤回すんだよ…」と呆れ気味な圭吾。
「あたしだって父さん助けるもん!!」と可愛らしい事を言う芽衣。
自分は思わず微笑んでしまったが、海藤は黙って兄妹たちの方を見つめていた。
「どうかした?」
「…いや、ただ俺の家族もこうなら良いのになって」
そう言われると、海藤の家族は意見が噛み合っていなくて。それなのに、自分の家族じゃないのに海藤は協力すると言ってくれた。
「海藤…ごめん、それとありがとう」
自分は海藤にお礼を言ったが海藤は何故謝るのかお礼を言われるのか分からない表情だ。
そんな海藤を気にも止めず「行こう!父さんを助けよう!」と言った。
返事は「うん!」と最初に返事をしてくれたのはまたも芽衣だった。