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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

大草原の誇り

作者: ドラキュラ

馬賊を見て書いてみました。

アジアにある国、モンゴル。


周りを大草原に囲まれた国で多くの人が遊牧をしながら暮らしている。


その草原を焦げ茶色の毛並みをした馬に乗り走り抜ける数十人の男たち。


先頭を走る男の右手には鈍い鉄色を放つコルト・ガヴァメントが握られていた。


・・・いや、形はガヴァメントだが、違っていた。


セミ・フルを変える事が出来るレバーが付けられていた。


スペインの銃器メーカー、スター社が作り上げたガヴァメントのカスタムモデル、スターMDだ。


フルオート射撃が可能でモーゼルM712、ベレッタM93R、グロック18、Cz75ABなどと並ぶマシン・ピストルとして名高い。


先頭を走る男の後ろを走る男たちの手にはモーゼルC96やM712、旧日本軍の四四騎兵銃、モーゼルKar98kなどのボルト・アクション式ライフルを持っていた。


彼らは馬賊。


その名の通り馬に跨り大草原を駆け巡る強盗団だ。


元は自警団として構成されていた組織で歴史は古く清王朝の末期から第二次世界大戦に掛けて旧満州、旧ソ連、蒙古を荒らし回り軍閥にまで成長した者も存在した。


大戦が終結した後は軍に吸収される形で姿を消して行ったが、一部では健在だった。


彼、渡部菊英が率いる馬賊がそうだった。


日本人である彼は馬賊の頭にして優れた武道家としても知られていて温厚な性格からも民衆から慕われていた。


その彼も御歳81歳。


かつては楽に乗れた馬にも他人の力を借りないと乗れなくなるまで体力が衰えてきたのを肌で実感した。


そして自分の命が短い事も実感した。


『・・・・わしも衰えたな』


彼は自身の死期が近いのを悟った。


彼には亡くなった妻との間に一人息子がいたが、馬賊などという時代遅れの盗賊団に嫌気が差して都会に行き強盗として働いている。


息子の他にも何人かの部下も都会へと行ってしまい残ったのは自分と同い年の部下だけだった。


かつては数千人の部下を従えていた男も歳には勝てなかったと痛感させられる。


「時代とは儚く悲しいものだ」


“親父は時代に乗り遅れた老いぼれだ”


出て行く際に息子が言った言葉を思い出す。


『確かに馬での強盗など時代遅れかもしれない』


今は馬よりバイク、車がある。


当ての無い旅をして少ない命がけの強盗より都会で確実に儲かる強盗をした方が合理的なのも頷ける。


しかし、菊英は馬賊というものが好きだった。


馬に乗り大草原を当てもなく旅する。


都会では味わう事が出来ないロマンがあると思う。


息子から言わせれば、それが時代遅れなのだが。


自分でもそうなのかと思う時があった。


だが、日本から旅に来た男は自分の考えを否定した。


『貴方の考えは間違ってない。貴方は馬に乗り草原を駆け巡る時は瞳が少年のように輝いている。それは馬賊に誇りを持っているからだ。決して時代遅れではない』


初めて言われた言葉だ。


息子と同い年くらいの中年の男なのに正反対の言葉を吐く男。


名前は何だったか。


『ああ、思いだした。確か・・・・・・・』


草の神に彰と久。


『・・・・草神、彰久だったな』


草の神が苗字とは珍しいと思い、そしてまさに草原の神だと思った。


草原のように大らかな心を持ち優しく威厳ある態度を表していた。


まさに大草原を具現化した男だった。


『彼が、息子だったら』


きっと立派な後継ぎになると思った。


その時、突然、急激な痛みが胸を走った。


「・・・ぐっ」


菊英は手綱を握っていた左手で胸を抑えた。


「お頭。大丈夫ですか?」


副頭が馬を近寄らせて聞いてきた。


「・・・大丈夫だ。大丈夫だ」


必死に痛みに耐えながら菊英は言った。


『・・・・もう直ぐ着く。それまでは、持ってくれ』


もう少しだ。


もう少しで彰久の元に行ける。


会ったら、自分の愛銃スターMDを渡す。


本来なら跡取りである息子に渡す積もりだったが、彰久にこそ相応しいと思った。


『彼ならわし等の誇りを受け継いでくれる』


馬賊を継いでもらう気などない。


ただ、自分たち馬賊の誇りを後世に受け継いで貰いたかった。


菊英は痛む胸を抑えながら馬を走らせた。


彰久にスターMDを渡す為に。


長年の主人の気持ちを知っているのか愛馬は主人を落とさないように、しかしスピードを上げた。


残り少ない命の灯火を燃やす主人の願いを叶える為に・・・・・・・・・












延々と広がる大草原に一人の馬賊の墓がある。


大草原を愛し馬に跨り荒野を駆け巡った偉大なる馬賊という碑と共に建てられている。


名前は渡部菊英。


享年82歳。


日本人にしてモンゴルに渡り馬賊となった彼。


その生涯は誇りある人生だったと彼を慕う民衆は言った。


彼の葬儀は質素で大草原に埋められただけだった。


しかし、参拝者は優に万を超えていた。


その中に一人の日本人がいた。


名前を草神彰久。


彼は菊英の遺体に行くと天に向けてスターMDをフル・オートで撃った。


彼なりの弔いだった。


日本人の馬賊、渡部菊英。


そして彼から誇りと銃を受け継いだ草神彰久。


スターMDを受け継いだ彼の行く末を知る者は誰も居ない。


後に彼と彰久の名は後世で誇りある馬賊と誇りを受け継いだ男として歴史の教科書に載る事になった。


あんまり良い出来ではない気がしました。

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― 新着の感想 ―
[一言] この短さでこんなけ内容有れば良いと思う スターの音が聞こえるような気がした
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