閑話〜世良誠〜
プシュー…
「…はぁ。100年経ったわけだな。…おわっ!」
儂がそう呟きながら振り返ると、そこには既に目を覚まして俺に頭を下げている1200のガキ共。壮観だが、もう少し気を利かせてほしいものだ。
儂は、東条会の八代目若頭を務めていた日侠連5代目総裁、世良誠。よし、記憶に変化はないようだ。それなら良し。
そう思いながら、睡眠用ポッドから立ち上がると一人の壮年が側に近寄ってきた。他の奴らとは雰囲気から違う。この日侠連の再興をそばで支えてくれた俺の親友であり、日侠連若頭である大村孝雄。汚れ仕事を積極的に引き受けてくれた奴で、総司との出会いも孝雄の紹介からだった。そういや、アイツはどうなっただろう。先に起きて準備しておくとか言ってたが。
「親父。外を見回りしてきたところ、入り口にこれが。」
「なんだこれは?」
「手紙のようですが、どうなさいますか?」
「貸せ、儂が読む。」
孝雄から預かった手紙は、結構な長文で、その筆跡は見慣れたものからだった。出だしには、親愛なる世良の兄貴へ。文末には伊達総司と書かれている。なるほど、総司の奴からの手紙ってわけか。まぁ、読んでみよう。
『世良の兄貴、お久しぶりです。これを読んでいるということは、無事に目覚めることができたようですね?自分は昨年目を覚まして、俺が所有していたアンドロイド達と拠点作りに勤しんでいます。兄貴が到着する頃には、街が出来上がっていることでしょう。ですが、流石に彼らだけでは人手が全く足りません。そこで、兄貴に手紙を出したというわけです。ここには、食料も酒も武器も寝床も風呂もあります。無論、電気も通っています。以前と同じような生活ができるかと思います。兄貴の到着をお待ちしております。因みに、この手紙は渡瀬の兄貴にも出しております。』
なに!?兄弟にも出してるだと…。そりゃ、早く行かねぇと、俺の立場が弱くなっちまうな…。
『そちらの施設まで、道路を通しておきました。それと、全員分のバイクも用意しておきました。そちらに乗って、ここまでいらっしゃってください。その際に細かいご説明はさせていただきます。』
1200台のバイクを生産したってのか?どこにそんな資材が…?いや、そもそも拠点ってどんな規模なんだ?嗚呼!謎が多すぎる。こりゃ、早くその拠点とやらに向かったほうが良いようだ。
「親父。何が書かれていたんですか?」
「総司の奴からだ。拠点を作ってるから手伝ってくれとよ。」
「総司様から、そのようなことが…。」
「外にバイクが人数分準備してあるそうだ。ガキ共を確認させてこい。」
「承知しました。…おい!行け!」
孝雄の指示で、何名かが入り口へと向かった。この手紙が事実なら、あいつが頂点に立つことになる。まぁ、それは別に構わん。俺は、もう一度東条会を再興して今度こそ、会長の座に座ってみせる。そして、でかい街を俺の思うように支配するのだ。そのためなら、弟分であっても、頭くらい下げてやる。
そう思っていたとき、外を見に行かせた奴らが戻ってきた。
「どうだった?」
「仰る通りでした!人数分と思われる量のバイクが止まっています。」
「型は?」
「ホンダのCB400SF/SBでした。」
「流石は、総司様ですな。親父の好みがわかってらっしゃる。」
「全部がそうなのか?」
「いえ、親父と若頭だけです。」
「てめぇらのは?」
「ホンダのCBR250Rでした。」
「ほうか。まぁ、悪くないセンスやな。よし、さっさと乗って向かうぞ。行くぞぉぉぉ!!!テメェぇらァァァァ!!!」
「シャァァァァ!!!」
四人分の目覚めのシーンが続きます。