第6話 目覚めてから366日目の朝…
俺はいつものように、目覚めると襖を開け放ち、日光を体全体に存分に浴びた。この本丸ができてからは、ここで朝を迎えることが多くなった。地下で暮らしているとどうにも息が詰まる。仕方がないことではあった。それに、俺は元々、田舎で生まれ育った。自然の中で過ごすことに幸せを感じるタイプの人間だ。
最近マーカスは、新たな街づくりに精を出している。大きく、そして欲望に満ちた街づくりを主目標にしているようだ。俺は、大きく、良い街づくりを頼んだのだが、人とは欲望の塊です!などと言って今の状況を生んだ。
俺は、この半年間で、空母、戦艦、駆逐艦、潜水艦、戦闘機、水上機、偵察機、戦車、装甲車などありとあらゆる車輌の操縦方法を学んできた。教えるのは、元々空軍で機空兵団の師団長を務めていたバードマンと海軍で機航兵団の師団長を務めていたバードック、そして陸軍で突機兵団の師団長を務めていたカーネルである。彼らの名前は彼らが所属していた米軍の中将から名付けられた者で、3人とも最終階級は大佐。その知識を教えてもらっているわけだ。
俺はその代わりとして、彼らが率いる15000のアンドロイド部隊に剣術を教え込んでいる。俺の流派は、伊達家の本流である影山流だ。剣道にハマった俺は、影山流を極めた。その結果、学生時代に出場した剣道の大会では、対戦相手をバッタバッタと打倒し、剣道会の神童と持て囃され、国際大会にも出場し、何度も優勝を収めた。まぁ、戦争が激化したこと、俺が貿易業に専念したことで、その記録も途絶えてしまったのだが。
その影響で、最近では剣道の練習試合も行われている。流石にアンドロイド、一度見た動きは完璧にコピーしてくるので、良い練習相手になる。今のところは負けていないが、マーカスが俺を守るはずの部隊が俺に負けているようでは話にならないと元師団長の三人を叱責したことで、彼らも本腰を入れて教練を始めてしまった。
済まない、諸君。
半年前につなげた部下達のシェルターへの道路には、全員分の自転車の設置が完了したようだ。10キロ歩くのはしんどいが、バイクならばまだ行けるだろうというマーカスなりの判断であった。そんなに何千台もどこにあったのかと聞けば、さも当たり前かのように、「作りました」と答えおった。なんだ?聞いた俺が馬鹿なのか?
まぁいい。彼らが住む住まいも一応仮住まいだが完成した。環境的には、暑すぎず寒すぎず、地球温暖化は何処へやらという環境である。俺たちが眠っている100年間で地球が自分の体を自己防衛したというのだろうか?
「総司様、4名の幹部方がいらっしゃるシェルターを含め、民間シェルターが各地で始動したようであります。偵察部隊を出しますか?」
「その前に、朱雀と青龍、白虎と玄武、黒龍と白龍を呼びだせ。既に起動しているはずだな?」
「ええ。私が目覚めたときに彼らも目覚めさせました。」
「やってもらいたいことがある。」
「畏まりました。では、司令室に参りましょう。」
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「朱雀と青龍、白虎と玄武、黒龍と白龍。聞こえているか?」
「「聞こえてまーす♡」」
「「勿論、聞こえております。マスター。」」
「黒龍と白龍はどうした?マーカス聞いてるカ?」
「本日は、定期連絡の日ではありませんので。」
「なるほどな。」
朱雀は、中国に作っておいた軍事基地の司令官であり、階級は中将である。性格は、敵に対しては冷酷残忍、味方からすれば頼りになる姉さんといったところだ。そう、朱雀は女性型アンドロイドである。軍事基地と言っても、勿論、地上にあれば100年経ったら廃墟になっちまうので、地下にある。ここ同様、陸・海・空軍の車輌と武器が揃っている。因みに、中国では、事前に殲滅許可を下しているので、ここで何も訂正しなかったら、完全に虐殺が始まる。彼らアンドロイドは、倒すのに核ミサイルが必要だが、この地上に核ミサイルはもうないので、まぁ、殺虫剤を持った人間vs蟻の戦いになるだろう。勝てるわけがない。総員5万人(勿論、整備兵は、これには含まれていない)で、その全員がNavy SEALsやサイェレット・マトカル、SASの戦闘データを組み込んであるため、もはや無敵と言うことができる。
青龍は、インドに配備しておいた司令官で階級は同じく中将。性格は、冷静沈着で、良識あるやつ。本当なら、司令官より副官として司令を支える立場のほうが向いている子だ。そう、青龍も女性型アンドロイド。
ここの基地は、総員3万人。車輌や武器も同様。
白虎は、インドネシア諸島に配備しておいた司令官で階級は大佐。性格は、厳格でなんていうのかな、虎みたいなやつ?それでいて、白人をモデルにしてあるやつだから白虎。単独の戦闘力なら、おそらく俺の所有しているアンドロイドの中では、最強。ただし、統率という面では、適正が悪いため、他の奴らと違い、数万の兵を纏められない。そこで、彼のもとには、特殊部隊上がりの精鋭5000を預けたある。彼に関しては、虐殺は禁止している。理由としてはとても簡単。インドネシア周辺は、優しい人が多く、貿易業を営んでいたときも困った経験がなかったからだ。
武器もある程度は、配備している。それ以上に向こうの軍隊や政府とも話がついており、こちらの指示に従うのならば、新たな生活の手助けをすると確約しているので、それを信じたい。
玄武は、オーストラリアに配備しておいた司令官で階級は、中将。性格は、真面目で冷静沈着。ただし、敵に対しては冷酷。軍人としてはパーフェクトなやつだ。オーストラリアとも対話が済んでおり、反抗しない限り、生活の援助を行うことを確約している。総員5万人だが、生産者や技師、整備士に建築士もいるため、純粋な戦闘員は2万人だけ。
ここまでの奴らは、まだまとも。朱雀がまともじゃないと思うかもしれないが、まぁ、あの国はお国柄がね。それにあいつは北朝鮮も請け負ってるから正直諦めてる。ここからが本番。黒龍と白龍は、それぞれアメリカとロシアを受け持ってるのだが、10万の軍を率いているのと同時に元大将だったやつをおいてしまったためか、あんまり指示に従ってくれない。だから、放任した。条件付きで。その条件とは、虐殺の禁止と半年に一回の定期連絡、俺への絶対服従。この3つが守れるならば、好きに統治してくれといったら、それぞれ承諾して10万の軍と車輌を率いて行った。今回は、その定期連絡の時期ではないので、彼らはいない。
コイツラに軍と車輌と武器を与えた影響で、俺は殆どの資金を使い果たし、最重要な日本を掌握する計画が頓挫した。そのせいで、少しずつ拠点を拡充しているのだが。
「皆、任せた仕事に取り掛かってくれ。朱雀、やりすぎるなよ。青龍、できるなら向こうの代表者に接触してみてくれ。敵対行動を取るようなら殲滅してくれて構わん。白虎と玄武は、向こうの代表者と接触し、こちらへの服従を誓わせたら、再度連絡してくれ。こっちもまだ2,3年は自由に動くことはできないだろう。動けるようになったら、また連絡する。許可等、気になることは随時連絡してくれ。」
「かしこまりー♡」
「わかりました。」
「「それではのちほど。」」
彼らとの連絡を終えると、マークスの方へ向き言った。
「彼らがそろそろ目覚めるだろう。それぞれに偵察部隊を派遣しろ。」