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称号

―――次の日の朝。


「キキ~起きてるかな~?」

「は、は、はい!お、お、起きてます!どうぞ」


そう言うと、クロンが部屋に入ってきた。


「そういえば昨日の件なんだけど、考えてくれたかな?」

「…?」


キキは、キョトンとした顔で考え込むんでいる。昨日の『家族』の件は忘れているようだった。


「いや、いいんだ。ボクの押し付けでしかないからね。キキが側にいてくれるなら形はどうでもいいんだ」

「く、クロン君それって!」

「ん?手の届くところにいてくれないと守れないからね」

「…だ、だよね。」


ぬか喜びに、キキは肩を落とす。


「レディに聞くのもアレなんだけど、キキは何歳?」

「えっと、もうすぐ12」

「そっかそっか、ボクは10歳だからお姉ちゃんだね、キキは」

「え?クロン君年下なの?それなのにこんな立派な…」

「ああ、この屋敷とかかな?ちょっと前にね、大陸のグランドバトルがあってね。それに出場したら運よく勝ち進んじゃって、優勝したんだ。その時に、『武帝』の称号をもらってね―」

「え・・・え?ゆ、優勝?」


ビックリしているキキを放置して、クロンは説明を続けている。



「―それで、称号って言うのは個人の地位、名誉とか身体強化なんかもついてることがあってね、珍しい称号だと特殊能力が使える称号もあるんだ。」

「へぇ…、そ、そうなんだ…」

「屋敷は優勝の賞金で、武帝の称号を賜った者は王様から爵位をもらえるから爵位はその時だね。…あとは、そうだなぁ…ボク他にも称号持ってるから試してみよっか?」


キョトンと聞くキキにクロンは、にやりと笑いポケットから棒を二本取り出した。その長さの棒がどうやって入っていたのだろう。



「ここに、一本だけ先が赤い二本の棒があります。キキが一回でもこの先の赤い棒を引けたら、なんでも言うこと聞いてあげる」

「!!…ほんとに!?えっと…何回勝負ですか?」

「そうだね、キキが降参するまででいいよ。」

「え!?どういうこと?」


普通に考えれば、出るまで引けるのだからキキの勝ちになるに決まっている。


「じゃあ、はい。どうぞ」

「うん」



こうして、キキとクロンとの勝負が始まった。

―――始まって、二〇分。キキはすでに五〇回以上引いているが未だに赤い棒を引き当てられない。


「キキ…えっと…まだ続ける?」

「ま、まだ!…何で!?なんでよ~!」


『なんでも言うこと聞いてくれる』というので、キキはかなり真剣だが、引いても引いても赤い棒は当てられない。


―――もうすぐ一時間になろうというときにクロンが口を開いた。


「ごめんね。実はこの勝負、今のキキは勝てないんだ。」

「はぁはぁ…ふぇ~?どういうこと~?はぁ~…」


意地になって引き続けたキキはへとへとになっている。


「ははは、実はボクの称号に『絶対強者』って言うのがあってね。弱者に対して勝負事であれば勝利への道を作ってくれるんだ。簡単に言うと、弱者である以上、ボクには勝てないんだ。」


それを聞いたキキは、やられた~と言わんばかりに仰向けに倒れ込んだ。



「クロン君ずるいよ~!!一時間近くも無駄なことさせられた~!」

「ごめんごめん。ほら、この赤い棒を握って」

「…こう?」


キキは先が赤く塗られた棒を赤い部分を隠すように握った。クロンは普通の棒を同じように握りしめている。


「キキじゃあ、『せーの』で手を開いてね。……せーの」



『せーの』の言葉で握りしめた手を開いて、キキは驚いた。

自分が持っていたはずの赤い棒が普通に棒になっており、クロンの棒には赤い部分が塗られている。


「…どうして?」

「まぁ、こういうことだね。理を曲げてでもボクが勝つようになってるんだ。これが『絶対強者』の能力だよ。」

「…ん?…じゃあ、戦闘技術競技大会でもこの力で勝ったの?それって不正なんじゃ…」

「ああ、大会では称号の効果は使ってないよ。…ほんとだよ?」

「…。」


信じきれないが、キキはクロンのどこか底知れないなにか特別なものを感じていたのもあり、この場は信じることにした。


「クロン君持ってる称号はその二つだけなの?」

「………ぁうん。そうだよ。」



少し返事を濁すように答えるクロンだが、まだあると言っている態度だ。キリがなさそうなのでキキは、ため息をつき立ち上がった。



「はぁ…、おなかすいたよ。」

「そうだね、ご飯にしようか。」



―――食事も終わった頃、クロンのもとにカイジャンが現れた。


「クロン様、例の件ですが。」

「仕事が速いね。みつかった?」

「…キキ様、一つ確認させて頂きたいのですが、孤児院にいた子供達は六人で間違い御座いませんでしょうか。」

「は、はい…アタシを含めて六人です。」

「左様で御座いますか。…クロン様。」

「…キキ、席を外してもらえるか。」

「いや!アタシにも教えて!」

「…」


キキの覚悟を決めた顔を見てクロンは、少し考えてキキに頷いた。


「カイジャン…頼む。」


「では、…まず、ルル様と、サーシャ様は生きていることが確認できました。お二人とも身寄りになった家庭が良かったようで特に不自由はしていないご様子でした。」

「…よかったぁ。」


キキは涙をにじませる。


「次に、ベルタ様は現在は身寄りの家庭で寝込んでおりました。聞くところによれば流行り病にかかったようで…ご家族の方は手を尽くしては見たものの、もうあまり長くはないということです。」

「そんな…。」

「ロン様につきましては、どうやら炭鉱で働かされていたようですが、落盤により帰ってきていないということです。捜索は続いておりますが安否は確認できませんでした。」

「…。」


キキは歯を食いしばる様に話を聞いた。


「最後にギール様ですが、すでに死亡しておりました。」

「…わかった、さがっていいよ。」


何も言わずカイジャンは消えていった。


静かになった部屋に、キキのすすり泣く声が聞こえる。クロンはその場で…ただただ見守っていた。

忙しくてUPが遅くなってますが、頑張って続けたいと思います。(๑•̀ㅂ•́)و✧

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