『ちっちゃくても姉上は姉上だった!』
『悪役令嬢? 婚約破棄? 何それ美味しいの? 私には弟の愛さえあればいいのです!』のスピンオフ? みたいなものです。
姉上の婚約破棄しようともがく様が中心です。
ラノベのおまけでついてくるSSみたいな感じで読んでいただければ幸いです。
それは、一三才になったばかりの姉上が王子と供に出席した、あるパーティでの出来事だった。
「あら? あなたが王子の婚約者? ふぅぅぅん……。大したこと無いわね」
パートナーである王子がいない隙を突き、姉上を取り囲む令嬢たち。
皆、我が侯爵家に引けをとらない、名だたる身分のご令嬢様だ。
それに対し姉上は、どこか生気の無い瞳でぼんやりと彼女らを眺めてた。
「王子も、こんな娘のどこが良くて選ばれたのでしょうね?」
にこやかにストレートな嫌味を言ってくる令嬢たち。
それを「はぁ」とか「そうですわね」とか、およそ無気力な返事しか返さない姉上。
それに業を煮やしたのか、姉上と大して差のない年になのに、ばっちり化粧をし、金髪の長い髪を立てロールにしている真っ赤なドレスのご令嬢が一歩前に出た。
確か、エリザベートとか言うカプトルス侯爵家の長女だ。
彼女はミョンミョンと揺れる立てロールを片手で払い、宣言するように口を開いた。
「あなたには無理よ! 王妃には私の方が相応しいわ!」
刹那。
ぐわっ!
姉上の瞳に生命力が満ち溢れ、気が付けばエリザベートの両手を包み込むように握っていた。
「な? いつの間に!? そ、それより何よ! もしかしてあなた、暴力に訴える……」
「か、代わってくださるの?」
彼女の言葉を遮る姉上の声。
その声音は、必死以外の何も出も無くて、
「え? え? 私が、王子の婚約者に?」
エリザベートにとって、その戸惑いの一瞬が命取りになった。
「では! 行きましょう! 王様に言って、王子の婚約者を、私からあなたに変えてもらいましょう!」
「え? きゃ!」
そう言い放つと、姉上は手馴れた動作で彼女をお姫様抱っこし、
「いざ! 王城へ!」
「ひやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
ここから十数キロあるだろう王城へ、姉上は駆け出して行った……。
その数時間後。
「アルゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!」
僕は泣きじゃくる姉上を抱きしめ、なだめるため背中をポンポンと叩いていた。
「(うふふふふふふふふふ! 役得役得!)」
「まあ、何となく分かるんですが、どうしたんです?」
姉上の涙が収まったころ、なんか聞いてはいけない心の声を無視し、僕は事の顛末を聞いた。
「あのね、あのね、私、頑張ったの! アレと婚約破棄出来るように、ちゃんと身代わ……ぐず、私より相応しいと思う令嬢を、王様に紹介しようとしたのよ!」
「ああ、それを王様に拒否されたと?」
ある程度の予測をした僕に、だが、姉上は首を横に振った。
「違うの! あの女の子、『やはり、王子よりも、私のことを一番に思って下さるあなたに……』なんて目をつぶって顔を近付けてきたの! ねえ? 私、どうすればよかったの!」
再び泣きだす姉上に、
「(うはぁぁぁぁ! アルがいつもより優しいぃぃぃぃぃ! この体温! この温もり! これは脳内と体に刷り込んでおかなければ!)」
脳に直接響く謎の声を無視して、僕は泣き止み眠るまで姉上の背中を叩き続けた。
(まあ、あのバカ王子が姉上の婚約者でいられるのも、あと数年だろうな……)」
そんなことをぼんやりと思いつつ、僕は愛しい姉上の背中をポンポンと優しく叩き続けた……。
最後までお読みいただきありがとうございます!
この作品は、作者の気分しだいの不定期です。
作者がハイテンション&これは本編に使えないと思ったネタ集です。
でも、ブクマや評価は欲しいと思う浅ましい作者です。
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