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誕生日

短いです。

「お誕生日おめでとう!」

家族からのお祝いの言葉の中、私はお誕生日ケーキのろうそくの火を吹き消した。


 チョコレートのホールケーキの上に、大きいろうそく1本と、小さいろうそく1本、「お誕生日おめでとう かやちゃん」のネームプレート。


 今日2000年6月27日、私はタイムスリップ後の世界で誕生日を迎え、11歳となった。

 タイムスリップしていなかったら、29歳。


 うちは、家族の誕生日の夕食後に必ず家族みんなでケーキを食べる。

 もちろん、誕生日当日に家族が全員揃わない時もあるが、そういう時は誕生日の前後日で、家族が揃う日にお祝いをする。


 ケーキは、誕生日の人が好きな種類のもの。私だったらチョコケーキだし、弟ならいちごのケーキ、妹ならチーズケーキ、という具合。


 父や祖父は、チョコや生クリームがあまり好きではないけれど、食べないというのはなしで、ホールケーキをちゃんと人数分切り分けて、みんなで食べる。


 ケーキの後にプレゼントをもらうのが恒例だったけれど、大人になってみると、もらったプレゼントよりも家族でケーキを食べたことの方がよく覚えている。

 何しろ、当時うちは7人家族。2ヶ月に1回くらいはお祝いをしていたわけだしね。


 本日誕生日の私の好みに合わせて用意された、濃厚なチョコレートケーキをぱくつきながら、私は幸せな誕生日だなあとしみじみ思う。


 誰かに誕生日を祝ってもらえること。大げさな言い方をすると、自分自身の存在を認めてもらっているような感じがして、嬉しくなるのだ。


 学校でも、さっちゃん、(とも)ちゃん、それに吉岡さんからまで、おめでとうと言ってもらった上にプレゼントをもらったし。


 さっちゃんからはヘアゴム、(とも)ちゃんからはハンカチ、吉岡さんからは栞。

 すごく嬉しい。


 交友関係に苦労した思い出しか覚えてなかったけど、この頃は友達にも祝ってもらえていたんだなあ。

 


 ケーキを食べた後、家族から誕生日プレゼントをもらった。


 祖父母からはエプロン。

 やり直し前の頃は考えられなかったことだが、今の私は、家のお手伝いをよくする感心な孫娘と思われているようだ。過去に祖父母からエプロンをもらった記憶はないから、当時とは変わったのかも。


 父母からは、本4冊で、いずれもファンターものの児童小説。

 大人になり、読み返すことがなくなっても長い間大事にしていて、結婚して実家を出る時に収納の都合で泣く泣く手放した、思い入れのある本だ。これは、どうやら過去と同じ。


 弟と妹からも合同でプレゼントをもらった。小学3年生の弟と小学1年生の妹が、お小遣いはたいて買ってくれたのかと思うと、お姉ちゃん泣けちゃう。

 物語を書くのが趣味だった私のための、水色のバインダーと、学校で作文の時間に使うような原稿用紙だ。原稿用紙はさすがに残ってないけど、バインダーはずっと持っていて、結婚後もレシピの切り抜きの保存用として使っていた。間違いなく過去と同じ。



 幸翔(ゆきと)とつきあって初めての、私の誕生日を思い出す。

 ずっと家族に家で祝ってもらってきた誕生日。それが、初めて彼氏に祝ってもらうことになって。


 その日は学校があったし、当時私は門限があったから、近場で一緒にケーキを食べて、プレゼントをもらって。特に遠出もしなかったけど、楽しかったなあ。


 幸翔(ゆきと)もチョコレートは好きだから、2人で違う種類のチョコケーキを頼んで、一口もらったりなんかして。


 初めて幸翔(ゆきと)からもらった誕生日プレゼントは、洋服。ふりふりのブラウスに、花柄のミニスカート、リボンモチーフのベルト。

 私はミニスカートも普段はかなかったし、フリルとか花とかリボンととか、かわゆいテイストの服って、可愛い子しか着ちゃいけないでしょ、みたいな意識を持っていたので、自分の私服と比べてかなり可愛めのお洋服にびっくりしたけど、ひとりでショッピングモールの女物のお店をまわって買ってくれたと聞いて、とても嬉しかったのをよく覚えている。

 あと、こういう服の女の子が好みなのね、とか思ったり。


 幸翔(ゆきと)のうちは、家族でケーキを囲んで誕生日をお祝いなんて、小学校低学年くらいまでで、プレゼントもわりと早いうちから物じゃなくて現金だったりなんかして、私の実家とは大違いらしい。


 ほんと、幸翔(ゆきと)の家と私の家って、違うところばっかりだと、改めて思う。

読んでいただきありがとうございました。

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