17話 奇襲
【火星:訓練施設】
《戦闘訓練:桜庭 梨花》
槐たち4人と一旦別れた梨花は、重装甲の獣型と対峙すべく光速で移動する。
梨花が手にしている武器は、左手に小型ナイフに光源を付与して作り出した光の刀。それと、右手に怜雄の強化のおかげで能力の同時展開が可能になった梨花が編み出した、守りし者の盾をランス状に変形させた武器だ。守りし者をここまで攻撃性に特化させたのは梨花が初めてだろう。
それらを固く握りしめ、重装甲の獣型が見えてくる。向こうはまだ梨花の接近に気づいていないようだ。
梨花は、重装甲の獣型の右横からランスを前に出し接近する。
「新作のお相手お願いしますよぉぉぉおおおお!!」
ランスが突き刺さる瞬間にようやく気付いた重装甲の獣型。だが、気づくのがあまりにも遅く、右脇から左脇へと分厚い装甲ごと一気に貫通する。梨花も手を緩めることなく、そのまま光速に突き進む。重装甲の獣型は、襲い掛かる重力に耐え切れなくなすすべなく振り回される。
そして、重装甲の獣型を串刺しのまま地面へ垂直に突き刺す。轟音と砂煙に当たり一面包まれる。
梨花はランス片手に獣型の前に出て、重装甲の獣型の様子を見る。
「期待外れですね。もう少し足掻いてみて下さいよ」
その言葉虚しく重装甲の獣型は動ける様子ではなかった。熱と重力に襲われた重装甲の獣型は、装甲が溶け変形しそれは駆動部分にまで達していた。それだけではなく、地面への衝突のせいで今にも壊れそうだった。
「もういいわ」
その声色はあまりにも低く、背筋が凍りつくようだった。
梨花はあまり動かなくなった重装甲の獣型に突き刺さっていたランスに、再度守りし者を展開する。重装甲の獣型は両断されるのではなく木っ端みじんに弾け飛ぶ。残ったのは巨大化したランスと虚しく立つ梨花だけだった。
「残り4機。撃破者・桜庭 梨花」
【火星:訓練施設】
《戦闘訓練:鴻崎 美大》
槐たち4人と一旦別れた美大は、自信と好奇心でいっぱいだった。そんな彼女に残された不安は、強化の付与の消滅。今の美大にとっては強化の付与が消えてしまうと失った右腕の痛みが戻り、戦闘能力も大幅に下がってしまうからだ。
美大は今、梨花の光源の付与により光速で移動していると、目標の俊足の獣型を目視で確認する。
一旦その場で止まり、俊足の獣型がこちらに気づいていないことを確認する。
「いたいた~。早速やっちゃうよ~☆」
美大は残った左腕に創造者の光を溜め、地面へ一気に打ち出す。創造者の能力で作られた岩棘の縄が俊足の獣型の脚を掴み、棘を食い込ませる。
「やった!!やった!! 奇襲成功っ!!」
奇襲が成功した美大は、喜びのあまり能力を緩めてしまう。その隙をつかれ俊足の獣型は岩棘の縄を、持ち前の脚力で瞬時に脱する。
「え、あっ、やばっ…」
岩棘の縄から脱した俊足の獣型は、急転換し美大の方へ一気に詰めてくる。
今回は槐の侵略者の能力の援護がないため、美大は能力展開中に狙われると的でしかない。かといって、移動して能力を再展開するにも時間がかかる。
そんなことを考えていると、俊足の獣型が目の前まで迫ってきた。
「に、逃げなきゃ…。 逃げなきゃ!!」
美大は攻撃を食らうよりは良いと判断し、一時撤退を決める。梨花の光源の付与さえあれば、俊足の獣型を振り切るのは容易だからだ。
そして、移動するために能力の展開を止め、立ち上がった時に違和感を覚える。
「光源の付与が消えてる…??!」
体から、光が薄くなり消えていくのが見えた美大は、ショックでどうしていいか分からなくなり、その場に立ち止まってしまった。いくら梨花の光源の能力に強化がかかったとはいえ、どうやら光源の付与はもって3分程度だったらしい。
俊足の獣型は、そんな美大に牙を剥き右腕を噛み千切った時のように襲い掛かる。
ガキンッ…
「あれ? 私無事だ。 なんで?」
俊足の獣型の方を恐る恐る見ると、そこには美大より大きな見慣れた背中があった。
こんにちは、霜月 京と申します。
まだ小説とか文章とか書くのに不慣れなのでこれから頑張っていきますので、どしどし感想・アドバイス送って下さい!
【解 説】
〇能力:光源
形状・刀【光の刀】:小型ナイフに光源を付与し、光の刀身を作りだす。
それは、どんな物をも切り裂く。相手は剣筋すら見えずに切られていく。
〇能力:守りし者
形状・ランス【---】:守りし者の盾を、形状変化させランス状にしたもの。
その強度は、守りし者の盾と同じなので破壊するのは困難かつ、固い装甲であっても貫く。
なお、ランスにした後も再度形状を変えることは可能なので使い道は広い。