13話 迫りくる2機
【火星:訓練施設】
《戦闘訓練:第3期生》
「私が遭遇した獣型についてはこんな感じですね」
梨花が、遭遇した特殊な獣型を含む4機の話をし終えると、黙々と聞いていた4人は依然沈黙している。すると、梨花がそういえばっと指を立て、美大の強化の付与を終えたばかりの怜雄に話しかける。
「女形の獣型について私はあまり詳しく知らないのですけど、戦ってみた感じどのようなことを感じましたか?」
怜雄は頬杖を突きながら淡々と答える。
「どうもなにも一切こっちの攻撃が通じなかったからな。一言言えるのは観察している感じだったかな」
「観察……ねぇ」
梨花と怜雄がそれぞれ考え始めた時、観測者の能力を展開していた玲一が慌てて全員に映像を共有する。そこにはさっきやり損ねた獣型と思われる俊足の獣型と、その後ろにまだ誰も見たことのない獣型がいた。その獣型は、分厚い装甲が胸を中心とし、そこから腰や背中といった部分をカバーするかのように生えている。
その2機はゆっくりとだが槐たちが隠れている洞窟に近づいていた。
「どうしましょう!! このままじゃ袋の鼠ですよ!!」
玲一が慌てふためく中、梨花と怜雄はアイコンタクトだけでお互いの作戦を理解し実行する。
「私が光源の能力を一時付与します。その後に怜雄君が防御系の強化を付与してくれるので各自準備をお願いします」
「痛いのは一瞬だけだ。止まる時に工夫がいるから注意しろよ」
槐と玲一はさっきの梨花との会話で怜雄が体験したことだとすぐ理解した。それは一瞬で洞窟を抜けるために、光速であの2機の近くまで移動し、不意を打つ為だ。
未だ何をするか分かっていない美大は各々準備している様子を見て、先ほどまでの玲一のように慌てている。
「えっ? えっ? 何? 何をどうするのぉ?!」
「馬鹿。こっちから先に攻撃すんだよ」
「えええぇぇええ!! 逃げるんじゃないの~」
怜雄がさぞ当たり前のように美大を指を差しながら説教まがいに今から起こることを説明している。傍から見ているとまるで兄弟のようだ。
すると槐が、光源を付与してきた梨花に今回のことに関して質問する。
「後ろにいた獣型は成長した方か、同期している方かどっちだろうね?」
梨花は答えがもう分かっていたのか即答する。
「成長した獣型よ。恐らく美大ちゃんや私の攻撃を見て防御面を上げてきたのでしょう。ならばまだ倒しようがある」
その凛々しい姿は目に映すもの全員を魅了するかのような立ち姿だった。梨花は光源の付与が槐で最後だったので自分の戦闘準備に入る。怜雄の方も順に終わり、全員が支度を終える。
時間は少しかかったが、玲一が共有してくれた映像では、2機の獣型が洞窟の入り口に来るにはまだ時間があった。
すると槐が今から動き出すことについて確認を取る。
「2機の獣型。どうやって倒そうか?作戦は何かある?」
「そうね。私は1度前方の獣型。ほらあの脚が強化されている方いるじゃない。
そっちと戦ったことがあるからそっちを先に片付けちゃおうかしら」
梨花が守りし物を展開するような動作を見せる。1度撃破したことがある彼女なら安心できるだろうと、4人は頷く。
消去法でもう1機の未だ戦闘能力の不明の獣型の対処は槐たち4人が相手をすることとなる。
すると怜雄が拳を固く握りしめ、より自己強化を強める。
「ならもう1機は俺らで何とかしよう」
「私もケリをつけ次第そっちに加勢するわ。それじゃあ各々能力の展開準備を!!」
第3期の全員での戦闘は初めてとなるが、各自自分のやるべきことは分かっているようで、能力を展開し始める。
すると梨花がハッと何かに気が付いたのか頬に手を添える。
「私、戦闘になると人が変わりやすいので注意してくださいね」
4人は呆れた感じで答える。
「もう知ってますよ」
「だな」
「ですね」
「始めてみた時は怖かったけどね~。でも根は優しいって知ってるからもう大丈夫ですよっ☆」
梨花が軽く頬笑むのが聞こえると、一気に緊張が取れた。そして、5人は光速で移動する為に走る態勢になる。
「皆さん、行きますよっ!!」
梨花が先導し、一気に見えなくなる。それに続くように怜雄、槐、美大、玲一の順で迫りくる2機のもとへ走り出す。
こんにちは、霜月 京と申します。
まだ小説とか文章とか書くのに不慣れなのでこれから頑張っていきますので、どしどし感想・アドバイス送って下さい!